Case03
「人と比べてしまう。」



ご主人がスマホを見ている。

そして、ため息。

「いいなぁ……」

また始まった。

どうやら、誰かのSNSを見ているらしい。

「同じくらいの年なのに、こんなに成功してる」

「こっちは家も買ってる」

「この人なんて、毎日楽しそうだな……」

ボクは、ご主人の顔を見る。

その人たちのことを、ボクは知らない。

ご主人も、たぶん知らない。

なのに、比べている。

不思議だ。

ボクなら、隣の猫が立派な家に住んでいても、

「へぇ」

で終わる。

その家が暖かそうなら、

「ちょっと入れて」

とは思うけど。

ご主人はスマホを置いた。

「なんで私は、こんななんだろう」

そう言って、少しうつむいた。

ボクには分からない。

人間はどうして、

誰かの人生を見て、
自分の人生を減点するんだろう。








ボクは今日、

窓辺で昼寝をした。

ごはんを食べた。

ちょっと遊んだ。

そして今、ご主人の膝に乗っている。

今日のボクは、かなり満足している。

昨日のボクより偉いか?

昨日のボクよりダメか?

そんなことは、どうでもいい。

眠かったから寝た。

お腹が空いたから食べた。

甘えたかったから、ここに来た。

それだけだ。

ご主人がスマホを伏せた。

そして、ボクの背中を撫でる。

「……まあ、私には私のペースがあるか」

そう言った。

うん。

たぶん、それでいい。

人間の悩みは、よく分からない。

でも、

他の誰かにならなくても、
今日の自分で生きていけばいい。

……まあ、ボクは明日も猫だけど。

それが、けっこう気に入っている。