昭和15年、佐賀商業野球部には“いひゅう(異風)者”と
呼ばれたエース・石丸進一がいた。
厳しい練習に明け暮れる毎日の中で、彼は東京生まれの女子高生・
桜井圭子に出会い、恋におちる。
翌年、卒業式を待たずして上京した進一は、兄・藤吉の所属していた
プロ野球・名古屋軍に入団し、デビュー戦でいきなり完封勝利を
あげる大活躍を見せた。
選手生活のかたわらで日本大学の夜間部に通っていた進一は、
その後もエースとして活躍を続け、昭和18年10月12日の対大和戦では
戦中最後のノーヒットノーランを達成する。
ところが、選局の悪化にともない、文科系学生の進一にも召集命令が
下った。
進一は同じ年の12月に佐世保の相之浦海兵団に入団し、翌年
2月には第14期海軍飛行専修予備学生となって、土浦の
海軍航空隊に入隊することとなった。
ある日、進一は女子挺身隊として勤労奉仕に勤しんでいた
圭子と再会する。
ふたりは戦火の中、ひそやかな愛を育んでいったが、昭和20年、
大空襲に見舞われた東京で・・・・・・