良は青森県下北半島の寂れた漁村の出身で、いまは
東京でビルの窓清掃の仕事をしており毎日ゴンドラに
乗っている。
かがりは小学校の5年生。両親は別れ、母・れい子と一緒に
マンションで暮らしている。
ある日かがりは学校で水泳の時間中に初潮を迎えた。
教師に付き添われて保健室に行き家に帰ったが、母には
何も言わなかった。
それ以後同級生にからかわれるようになり、ある時かがりは
水泳が終わって更衣室へ行くと下着がなく、仕方なく濡れた水着の
上にブラウスやスカートをつけた。
マンションに帰ると飼っていた2羽の白文鳥が篭の中で喧嘩しており、
1羽が傷ついていた。
その頃良はちょうどかがりのマンンョンの窓拭きをしており、一緒に
動物病院へ付き添い、治療代を立て替えてやった。
しかし、翌日かがりが病院へ行くと文鳥のチーコは死んでいた。
良がかがりの後を追うと彼女は児童公園へ行きチーコを土に
埋めようとするが、それをやめて家に持ち帰り古いブリキの弁当箱に
死骸を入れ冷蔵庫へしまい込んだ。
翌朝れい子はその死骸を発見して驚き、ゴミと一緒に捨ててしまった。
悲しんだかがりはチーコの死骸を探し出し、家を出た。
良が仕事の帰り駅の改札口を出るとびしょ濡れのかがりが
立っていたので
そして「もう帰るところがない」というかがりを数日、
自分の故郷へ連れて行くことにした。