「胸椎○番が歪むと○○に問題が生じやすい」なんて話し、聞いたことがあると思います。そして、実際に、胸椎○番の矯正で○○の症状が改善するなんてこともあるのでしょう。

でも、だからと言って、胸椎○番が歪めば、かならず○○に問題が生じるわけでもありません。


エドガー・ケイシーが言ったように、内分泌腺や神経系統に何かしらの問題が生じると、魂と肉体との関係にも問題が生じることは、個人的にはあるように思います。

でも、何かしらの問題が生じているからといって全員が強迫性障害になるわけではありません。

 

実際、私の場合、自分の身体がすごい状態だと気づいたのは32歳の時。

でも、強迫性障害のピークは大学受験の頃ですから、身体の状態を改善する前に、強迫性障害はよくなり始めているのです。

おそらく、強迫性障害を発症し、そして、良くなっていったのには、他にも複数の要因があったのでしょう。

 

ただ言えることは、身体の緊張は心の緊張とも密接に繋がっているということです。

 

ボディーワークを受け始め、次から次へと、それまで気づいていなかった身体の問題が浮上してきたのですが、ある時、私は、自分が満足いくほど深くは息を吸えないことに気づきました。

吸っても途中でつっかえてしまう、そんな感じでした。

 

でも、ずっとその状態で生きてきたわけですし、仕事を辞め美術の学校に通っていた私は、油絵三昧の日々を送っていました。

70代になったばかりの母に認知症の症状が出てきていたことは、ともかく怖かったですが、楽しい毎日でした。

 

けれど、今はもういない姉が髄膜炎で入院したという義兄からの電話を受け、ひょこひょこと病院に出かけて行き大きなショックを受けることとなってしまったのです。

 

ドアには面会謝絶の張り紙、妹だからと病室には入れてもらえたものの、姉は、私の方を見ようともしません。

私は、過去を振り返り、彼女は私のことを

怒っているのだと思いました。

重い沈黙…。

けれど、突然、姉は私に「はるちゃん、ジュース買ってきてくれる?」

と、言ってくれたのです。

嬉しかったです。売店まで、一気に階段を駆け下りました。

りんごとオレンジの紙パック、姉の顔の前に二つ並べて

「どっちがいい?」と聞きました。

「りんごがいいや」と姉。

私は、ストローを刺しジュースを飲む姿を見ていました。

しかし、一口飲んだ姉は水をかけられた雛のように、音がするほど激しく震え上がったのです。

また、重い沈黙が続きましたが、

やがて、ジュースの紙パックを台の上に置くと、彼女は両足を床に下ろし立ち上がり、私の前を通り過ぎドアを開け廊下に出ていってしまったのです。

 

どこに行くのだろうと、恐る恐る後を追いました。

 

でも、病室を出た彼女はどこに行くつもりもないようで、ただ前の廊下をふらふらと往復しはじめたのです。上半身と頭を斜めに傾げて歩くその姿は、テレビだったか、映画だったか、現実だったか、精神病院に入院中の患者さんの姿とダブり、不安が込み上げてきました。

それでも、声をかけるタイミングを見つけようとしていたのですが、姉が私の方に顔を向けた瞬間、その場に凍りついてしまいました。

視点の定まらないその目は、彼女がもうそこにいないことを物語っていたのです。

 

まだ35歳なのに、もう病院という場所から出れないかもしれない…ともかく悲しかったです。

夜、私は泣き続けました。

どれぐらい、時間が経ったことでしょう。

ベッドの上に正座して、むせび泣きを続ける自分を、もう一人の私が静かに眺めていました。

私はこんなにも姉のことを愛していた…。

 

 

そして、その時、自分の胸のあたりからこんこんと湧き上がり、すすり泣く声とともに、かすかなきらめきを放ちながら溢れ出し、自分の手の上に落ちていく何かが見えたような気がしたのです。

 

もしかしたら、曇りガラスを通して入ってくる隣のビルの灯で、部屋の埃が光って見えただけかもしれませんが…。

 

何はともあれ、暫くして姉は退院し義兄との生活に戻ることが出来ました。

 

そして、私は、ある日、以前よりも楽に深く息が吸えるようになっていることに気づいたのです。

 

 

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