「白鷺城異聞」 

宮本武蔵(中村歌六) 本多平八郎忠刻(中村又五郎) 豊臣秀頼の霊(中村勘九郎) 刑部姫(中村七之助) 腰元白鷺(中村梅枝) 同名月(中村米吉) 局明石(中村歌女之丞) 宮本三木之助(中村萬太郎) 家老都築惣左衛門(中村錦之助) 千姫(中村時蔵)他

 

松貫四、つまり亡き吉右衛門さんが構成・演出し、平成11年に姫路城の特設舞台で上演した御芝居とのこと。特に話が面白いわけではないけれど、姫路城を背景に見たらいっそう興深いものだったろう。配役は全てよいが、中でも時蔵さんの千姫が品よく立派で、それでいて二番目の夫・本多平八郎に何もかも委ねている愛らしさがあってよかった。この後の平八郎との死別を思うと哀れでならない。

中村屋の兄弟がそれぞれ秀頼の亡霊と刑部姫という異形の存在に扮するが、これまたねっとりとした幕末の浮世絵のような雰囲気があり、軽く鳥肌が立った。七之助さんの富姫もいずれ見てみたい。

吉右衛門さんの追善興行に中村屋の二人が出てきたことも本当に喜ばしく、有難いことだ。

 

「菅原伝授手習鑑 寺子屋」 

松王丸(尾上松緑) 武部源蔵(松本幸四郎) 戸浪(中村児太郎) 菅秀才(中村種太郎) 小太郎(中村秀之介) 春藤玄蕃(中村種之助) 百姓吾作(坂東彌十郎) 涎くり与太郎(中村又五郎) 園生の前(中村東蔵) 千代(中村魁春)他

 

松王丸と源蔵がWキャストであれば、迷わず松緑さんの松王丸に幸四郎さんの源蔵である。菅秀才と小太郎もそれぞれ歌昇さんの息子さんとのこと。彌十郎さんと又五郎さんのやりとりが面白い。久しぶりに見る児太郎さんは相変わらず落ち着いて、安心してみていられる。

松緑さんの松王丸。吉右衛門さんの口跡のよさをつい求めてしまうが、痛々しいほどに気持ちの伝わってくる松王丸で、人物造形の巧みな彼らしいものだった。

 

「仮名手本忠臣蔵 祇園一力茶屋の場」

大星由良之助(片岡仁左衛門) 寺岡平右衛門(市川海老蔵) 赤垣源蔵(中村橋之助) 富森助右衛門(中村鷹之資) 大星力弥(片岡千之助) 矢間重太郎(中村吉之丞) 鷺坂伴内(片岡松之助) 斧九太夫(嵐橘三郎) 遊女おかる(中村雀右衛門)他

 

宴会の様子など今回もカットされているが、仁左様の由良之助で七段目を見るとやはり豊かな気持ちになる。久しぶりに京都に行きたくなった。雀右衛門さんのおかるは、前半濃厚な色気を放ち、後半は健気で愛らしい妹になりきっていた。

問題は海老蔵さん(上演当時)の平右衛門である。最初の登場は神妙だったが、後半おかるとのやり取りの内、疲れたのか?台詞がどんどん崩れていって聞き苦しいといったらない。由良之助もおかるも可哀想である。

この平右衛門がよかったら襲名興行のチケット争奪戦に参戦しようかなーと思っていたのだが、やめた。。・゚・(ノД`)・゚・。

 

彼の海老蔵襲名当時は同年代の團十郎の登場を心待ちにしていたので、こういう風にしか思えなくなったのが我ながら哀しい。