◆4月

「通し狂言 天一坊大岡政談」

大岡越前守(尾上松緑) 山内伊賀亮(片岡愛之助) 池田大助(坂東亀蔵) 平石治右衛門(中村歌昇) 下男久助(坂東巳之助) 下女お霜(坂東新悟) 近習金吾(市川男寅) 同新蔵(中村鷹之資) 嫡子忠右衛門(尾上左近) 藤井左京(市川青虎) 名主甚右衛門(市川寿猿) お三(市川笑三郎) 伊賀亮女房おさみ(市川笑也) 赤川大膳(市川猿弥) 僧天忠(市川男女蔵) 吉田三五郎(中村松江) 大岡妻小沢(市川門之助) 天一坊(市川猿之助)他

 

配役がよくテンポよく、面白く見られた。見どころとされるのは「網代問答」だけれど、私は発端のお三婆殺害~伊賀亮との結託までのストーリーにいつも考えさせられる。寂しさから、早世した娘と孫の秘密を天一坊に打ち明けてしまったお三婆を愚かと誰が責められるか。雇い主からの理不尽な仕打ちにただ辛抱するしかない境遇の人々の閉塞感。他にも、天一坊を表に出す為に殺される犬や若い僧侶等、無茶苦茶な悪事を成立させようとするあまり、闇に葬られていった人々に思いを馳せている。

 

◆5月

「新古演劇十種の内 土蜘」

叡山の僧智籌実は土蜘の精(尾上菊之助) 侍女胡蝶(中村時蔵) 巫子榊(中村梅枝) 渡辺綱(中村歌昇) 坂田公時(中村種之助) 碓井貞光(市川男寅) 太刀持音若(尾上丑之助) 石神実は小姓四郎吾(小川大晴) 番卒藤内(中村萬太郎) 同次郎(中村錦之助) 同太郎(河原崎権十郎) 平井保昌(中村又五郎) 源頼光(尾上菊五郎)他

 

音羽屋三代の緊迫感に満ちた舞台に釘付けとなった。菊之助さんの僧は凄味の中に匂やかさがあるのが、女形も勤める彼らしいところである。時蔵さんの侍女胡蝶も流石の存在感だった。