穏やかな晴れの日が続いたと思ったら関西の週末日曜日は本格的な雨。
登山用のマムート・ゴアテックスレインスーツに身を包み、花園ラグビー場へ行ってきた。
今期全敗中で、この日を入れて残り3試合という花園近鉄ライナーズ。
雨にもかかわらず駆けつけた2,000人の観衆が檄を飛ばす中、最後まで気持ちを切らさずにくらいついて下馬評を覆す勝利をもぎ取った。
神戸製鋼やサントリーのように有名な大学生や高額な現役代表外国人選手が来てくれる訳ではない。
あらたな世界を知る外国人監督やヘッドコーチが招聘されることもない。
それでもひたむきにタックルをし続けた。
今回はそんな、“折れず曲がらず”な話をしたいと思う。
Aちゃんは長女と仲良しだった小中学校時の同級生。
一緒にダンススクールに通い、お母さん同士も仲がいい。
Aちゃんのママさんは元々バレーボールをされていたそうで、170㎝を超える高身長、スラッとしたスタイルのスポーティな印象の人だ。
彼女の実家はご近所のお寺のため、大晦日の夜中に一家でお詣りに行き、お焚き上げにあたりながら蜜柑を食べたりしたもの。
あれは長女とAちゃんが小学校4年生の3学期のこと。
シノの携帯にAちゃんママさんからメールが来た。
「Aを乗せて車を運転中、対向車に衝突されて救急搬送された。私は骨折したけど入院はせずに済みそう。」という内容。
だけどAちゃんは治療中、とのこと。
ん・・・?
どゆこと?
不安がるシノ。
病院にいるであろう相手に電話もできない。
続報を待つしかない。
数時間して事故の全容が分かった。
ママさんはAちゃんを車に乗せて坂道の上りのカーブに差し掛かった。
そのとき高齢者が運転する乗用車が曲がりきれずに車線を超えて突っ込んできて、こちらの車に側面から衝突。
ママさんは胸を強打して肋骨を骨折。
Aちゃんはもろに衝撃を受けてしまい重症。
予断を許さない状況らしい。
シノはこちらから色々確認するわけにもいかず、ママさんが不安を口にするときの話し相手に徹して数日が経過した。
結果、“命は”助かった。
だけど・・・
だけど脊髄を損傷したAちゃんは歩けなくなった。
たった10歳の少女の身に突然降りかかった現実。
これをどう受け入れろというのか。
表面上の傷が癒えて退院し、家に帰ったAちゃん。
心の傷は簡単に癒えない。
もう自分は歩けない。
そんな自分の現実を突きつけられるからだろう、健常者に会うことが怖いという。
そこから数ヶ月に渉り、Aちゃんは家から出られなくなってしまった。
そして家族以外の人とは会えなくなってしまった。
その間ママさんはかなりきつかったと思う。
シノがたまには気分転換を、とケーキを手土産にママさんに会いに行く。
するとママさんは泣きながら心情を吐露する。
パパさんもお兄ちゃんもつらい。
それぞれ違うかもしれない、だけど皆つらい日々だったろう。
現実は残酷だ。
でも、でも、Aちゃんは、彼女は本当は折れていなかった。
その間にも懸命にリハビリに励み、車椅子で自身の意思で行動できる準備を続けた。
ご両親も学校(市立なので市、が相手)と対話して車椅子の子供を受け入れることができる体制を整えてもらった。
そしてAちゃんは心を決めた。
もう一度学校へ行くことを。
初めはお母さんが見守りながら、徐々に行政のサポートもあって自分だけで授業を受ける時間も増えた。
保護者参観の日、車椅子で器用に机の間を移動して板書に向かうAちゃんを見て、僕は(失礼かもしれないが)不覚にも目頭が熱くなった。
君はすごい。
大した子、いや尊敬できる人だよ。
でも彼女の挑戦はまだ始まったばかりだった。
ぼくはAちゃんの不撓不屈のココロをさらに知ることになる。