現在、40代で妊活されている方で、「年齢が上がるにつれて、子どもの染色体異常率が高くなる」という事実を知らない方は、あまりおられないかと思います。それくらい、今の世間の「常識」として浸透しているわけですが…

このテーマについて、高い/低いの抽象的な話ではなく、具体的な数値に基づいて、整理してみたいと思います。


まず、ネットで検索すると、子どもがダウン症になる確率(以下、ダウン症率)や、何らかの染色体異常になる確率(以下、全染色体異常率)については、ほぼこの図と数値が載っています。

 

 

図の引用元である、2013年の厚生労働省の報告書も然りです。

*引用元:https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000016911.htmlの最下部にある「関係資料3」

 

これは、Hook EBという研究者を中心に、1981年と1983年に出された調査データだそうです。

 

*Hook EB. (1981). Rates of chromosome abnormalities at different maternal ages. Obstet Gynecol , 58, 282-5. PMID: 6455611

*Hook EB, Cross PK & Schreinemachers DM. (1983). Chromosomal abnormality rates at amniocentesis and in live-born infants. JAMA , 249, 2034-8. PMID: 6220164


ここで、少し横道に逸れますが、私の率直な感想を二つ言わせてください。

 

一つは、「40年前の海外のデータが、未だに使われているんだ」ということ。

 

もう一つは、「この数値が、地球が自転してるのと同じノリで絶対的真実のように出されるけど、海外のとある研究者が、その年代に調査した一つの統計データに過ぎないんだ」ということ。

 

…話を本筋に戻して、上記の研究データに基づいて考えてみます。

 

例えば、出産時の年齢が43歳の欄を見てみると、

(図の「女性の年齢」は、出産時の年齢だそうです。

 

「ダウン症率:2%」

「全染色体異常率:3%」

 

…とあります。この数値について正確に表現するなら、ダウン症率は、

「1981〜1983年頃に、ヨーロッパで、43歳で出産した女性100人を調べたところ、2人がダウン症の子どもを出産し、98人がダウン症ではない子を出産していました。」

全染色体異常率は、

「1981〜1983年頃に、ヨーロッパで、43歳で出産した女性100人を調べたところ、3人が何らかの染色体異常の子どもを出産し、97人が染色体異常のない子を出産していました。」

 

*調べてみると、Hook EBらが1996年に出した同内容の論文は、ヨーロッパで調査されているようなので、それならこちらもヨーロッパなのかな、と推測しました。

 

値の高い全染色体異常率の方に焦点を当てると、3%という数値について、高いと捉えるか、低いと捉えるかは人それぞれだと思います。

感情から一旦距離を置くために、また、思考を柔軟にするために、全く関係のない例えも出してみます。


「この箱には100個のボールが入っていて、97個は青色のボール、3個は緑色のボールです。」

 

「このサファリパークには100頭の動物がいて、97頭はシマウマ、3頭はキリンです。」

 

「このパックンチョは100個入りで、97個は丸いパックンチョ、3個はハートのパックンチョです。」

…もっと適切な例えがあるかもしれませんが、何となく浮かんだものを書きました(笑)

 

*確率を分かりやすくイメージするために例えを出しましたが、良し悪しの価値づけをするものではありません。

 

 

(つづく)