フルタイムの仕事を辞めて、専業主婦になって2年5ヵ月になります。

 

恥ずかしい話ですが、仕事をしていた頃は、自分でお金を稼いでいないという理由で専業主婦を見下していました。それは、自分の狭量さを露呈しているだけだったと今なら分かります。自分が専業主婦になって初めて、これは相当に専門性を要求される大変な仕事だと知りました。

 

今の私は、専業主婦(主夫を含む)=家族の「当たり前」をつくる専門職だと認識しています。

 

毎日、当たり前にごはんが出てくる。食器が洗われている。部屋に掃除機がかけられ、片付いている。いつも洗濯された清潔な服がある。ゴミが定期的に出されている。クリスマスや正月といった行事の時は少しアレンジがある。家にはいつもその人がいる安心感がある。…

 

専業主婦は、家族一人ひとりの「生活の当たり前」をつくっていると思います。それは衣食住の当たり前だったり、健康の当たり前だったり。それらの「当たり前」がベースにあるから、会社や学校、習い事や飲み会といった外の世界に、安心して出て行くことができる。

 

ですが、如何せんつくっているものが「当たり前」なだけに、家族からも世間からも、「大したことをしていない」「やって当然」「誰にでもできる」などと誤解されやすい。

 

加えて、この仕事の専門性って、手の込んだ料理を何品もつくるとか、片付けや収納がものすごく上手とか、そういった家事の精度のことではないと思うんです。家族が健康でいられて、何気ない毎日を意識した時に「何だか整っている」「快適だ」と感じられるか。主婦本人が家出した時に、「普段の当たり前がいかに大事か…」と家族が実感できるか。そこに専門性が現れると思います。翻せば、専業主婦の仕事ぶりは家族メンバーしか評価できないし、メンバーですら「当たり前」を無くした時しか自覚しにくい。そういった評価のされにくさが、この仕事特有の大変さのように思います。

 

もう一つ、切れ目がないことも特有の大変さではないでしょうか。「当たり前」をつくり維持し続ける性質上、オンとオフが分けられない。結果として、24時間仕事から離れられない。「定時まであと一時間だ」といった区切りがない。まるで白夜のような、いつまで経っても終わりが来ない事というのは、それだけで相当疲れるし、モチベーションを維持するのが難しいと思います。

 

自分がどんな「当たり前」を提供するかで、家族一人ひとりの健康はもちろん、行動や価値観にまで影響を与えるわけですから、責任も重大だと思います。

 

そして、他の仕事と同様に、研鑽を積めば積むほど磨かれるし、究めようと思えばどこまででも努力できる。

 

専業主婦って、奥が深いなあと感じています。