【放映は終了しました】この後BS1にて 0時10分から『終わりよければ全てよし』 | すずwinterのブログ

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この記事、書いたら、舞台や放送の存在を知らなかった誰かに間に合うかしら?



この後、0時10分から昨年新国立劇場で上演されたシェイクスピア原作の舞台『終わりよければすべてよし』の放映があります。


シェイクスピアといえば、学生時代の印象でいうと、英語圏でよくそのフレーズが『引用』される戯曲。


きっと、本物のインテリゲンチャが教養として持っていなくてはいけない知識。


古典。


→小難しいお話。


…そんなイメージでした。



でも、昨年の2作交互上演を見て、「あ、そっかー!!」と思ったこと。


シェイクスピア作品って、楽しく観てもらうための娯楽作品なんだ!って。


一応、シェイクスピアが座付き作家だったのは、身分の高い貴族がスポンサーだかオーナーで、エリザベス1世やその後継者に見せる機会も多い劇団だった訳ですけど。


いつの時代だって、エンターテイメントは、沢山の人が観たいと思って繰り返し見に来てくれないと成り立たないんですよね。



面白い話があって、素敵な主役やバラエティに富んだ役者さんが演じて、飽きないように、ワクワクするように…それがよく出来てたからシェイクスピア作品て今も上演されてるんだ!ということがよくわかった作品が『おわよし』でした。



今夜放映される舞台は、日本のある年齢以上の人々には「ほたるちゃん」として強く記憶に残る中嶋朋子さん演じる女性ヘレナが中心となって活躍します。中嶋さん、シェイクスピア劇に主要人物として数多く出演されてるんです。王妃でありながら愛人を作り、息子のための王位を守るべく戦場でばりばり戦った恐〜い王妃として、とかとか。


で、この舞台では、幼馴染だけど、身分違いの青年伯爵バートラムを一途に想って…えーと、策をめぐらして手に入れる?女性で…。


これが、あらすじを結末まで読むと「こえー(怖い)ガーン」となります。


ヘレナ、舞台を見ていても、キャラが一定しないような、なんかよくわかんない時があったりしますが、なんとも言えないいじらしさがあるんです。

そして、中嶋朋子さんのヘレナは、たぶん、凄く賢くて堅実な乙女なんだと思います。


劇中彼女は、自分がバートラムと間違いなく結ばれるならそれは、「『終わりよければすべてよし』なんです」と断言します。



実のところ、観客が「そこまでする?!」と思うほどの権謀術数で手に入れる青年バートラムは、見た目は良いけど、高位の領主としてやって行くには微妙に頼りない人物で…。まだね、多分。

(言ったら、こんな賢い女の子が、なんで長いことよく見てて欠点をよく知ってるこの男にここまで惚れてるのか、て話でですね。この舞台では、役者さんと演出家と衣装さんと総力を上げて納得してもらえるよう頑張ってます照れ皆さ〜ん!!縦ロールのハーフアップが絵になって!しかも!ぱっと見、男らし〜く見える!日本人が!ここに居ま〜すラブラブ




シェイクスピアの戯曲ではヘレナはバートラムに拒絶されてからすぐにフランス宮廷から去りますが、原案とされるボッカチオの『デカメロン』では、ひとり領地に帰り伯爵夫人として暫くの間立派に領地経営を行い(デカメロンでは、バートラムのお母さんは登場しません。)、領民に慕われます。



これを頭においてこの舞台を見ると、能力のあるヘレナがバートラムと結ばれるのは、領地にとって良いことだし、若いバートラム伯爵にとっても結果、地位が安定するとても良いことだと言えるんです。


中嶋さんがヘレナだと、歳はバートラムより下という設定でも、全体のことを彼より深くよく考えているのかもなぁという感じになってたと思います。




メインストーリーのヘレナとバートラムはそんな感じなんですが、シェイクスピアが言いたいことを込めているのは恐らく、サブストーリーの(ボッカチオの原作にはない)、バートラムと軍隊の鼓手ペーローレスとの一連の物語です。


亀田佳明さん(朝ドラ『らんまん』では、何処かいじらしさのある植物画家さんでした。)演じるペーローレスは、お芝居の始めの方で、自分はバートラムの部下ではなく「友人」であることを強調します。

そして、バートラムの旅立ちに際して母が心を込めてバートラムに贈る言葉の中の「友」についてのくだり…。



ネタバレになりますが、バートラムは「友人」に誠実さを欠いたことで強烈なしっぺ返しを喰らいます。


この舞台では始まりの母との対話を眺めると、バートラムとて、最初からクズでわかりやすくエゴイスティックな根性で世渡りしようとしていたわけではないと思うんです。


ただ、若さのあまり、調子に乗ってるうちに、あんなことしちゃったりこんなことしちゃったりしたんじゃないかと。



きっと、シェイクスピアは「ねぇ、若いの、自分は立派にやって行けるつもりでいるかもしれないけど、気をつけなよ!」って言いたかったんじゃないかと思うんです。


特に、人の落ち度を責める時は、自分も同じ過失で責められる日が来るかもしれないってことを頭に置いておきなさいよ、て。




この戯曲が書かれた1600年代初め(日本では江戸幕府が開かれて社会が安定し始めた頃)、イギリスでは、ヨーロッパの中でそこまででもなかったこの国が強大国スペインの艦隊を駆逐し、王位も、子どもの居ない女王→安定した政権を作れそうなジェームズ1世が継いで、やっぱり国として安定したなって感じだったんだと思います。



そんな中で、安定した社会の中での世渡りとか、「あるある」とか、現代でもどこかしら通じるようなお芝居が成立したのがシェイクスピアだったのかも〜と思います。


という訳で


面白いので、見て!!!!