ウンスの誕生祝いにと
大妃様からいただいた
針房ホン尚宮仕立ての
若草色のチマチョゴリは
春らしい色合いで
式典会場の雰囲気を
一層華やかに飾っていた

その立派な衣に負けないくらい

養成所に対する志や
学生達に最初に伝えたいことや
伝えるべきことを
ウンスはちゃんと言えたようで
安堵した様子だった
 
そうして
大役を終えた彼女は
ひと息つく間もなく
夫のチェヨンとともに
急ぎ屋敷に戻ろうとしていた
 
五人の子供達は
母親の誕生日ぱーちいのために

飾り付けや料理の準備を終えて

両親の帰りを今か今かと

待っていることだろう・・・

 

大妃様や王妃様に

誕生祝いのお礼や

式典参列のお礼もそこそこに

典医寺を出ようとした

その時だった

 

 

ユ先生

ちょっといい?

 

 

呼び止めたのは

式典に参列していた

イサだった

 

 

ユ先生

今日 お誕生日でしょう?

昨日 サンが嬉しそうに

言っていたからさ

これ父上と相談して

今年のお祝い・・・どうぞ

 

 

布に包まれた一本の棒から

いい香りが漂って来る

 

 

え?

ありがとう

毎年気を使わせちゃって

悪いわね〜

 

 

ウンスは微笑んで

包みを受け取った

ここ数年誕生日には

ノリゲ(棟飾り)や巾着や

ちょっとした小物を

品良く選んでくれて

イサがチェ侍医の代理で

誕生日に届けてくれるのだが

今年のソンムル(贈り物)は

透かし彫りが美しい白檀の

扇子だった

 

 

これからの時期に

いいんじゃないかって

父上が・・・

 

 

うん 素敵 ありがとう

扇子を見るとなんだか

チャン・ビンを思い出すわ

手に扇子を持って

涼しげな顔で歩いてた

この国に来て最初にできた

心の友であり師匠だった人よ

チェ先生も彼を偲んで

扇子を選んだのかしら?

 

 

そうかもしれないね

 

 

イサは義父に似た顔で

涼しげに微笑んで答える

 

 

それはそうと 

イサも今夜のパーティに

出てくれたらいいのに〜

イサは身内も同然なんだから

子供達も喜ぶのに〜

 

 

いつもは朝 

屋敷に顔を出し

ソンムルを届けてくれるのだが

今日は典医寺の庭で手渡し

ユニョンの婚約ことで

遠慮しているのだろうかと

ウンスは勘ぐった

 

 

お誘いありがとう

でも今日はこれから

典医寺で勉強会だし

夜は父上と家で

久しぶりにゆっくり

酒でも飲もうかと思って

ユ先生を祝いながらさ

 

 

まあ そおなの?

親子水入らずかぁ

それもいいわね

チェ先生によろしく伝えてね

 

 

あたりをキョロキョロ

見回してみたが

チェ侍医の姿はなかった

チェヨンに遠慮しているのか

ソンムルはイサ経由でしか

受け取ったことがない

 

三歩離れたところで

チェヨンは二人の会話を

聞いていた

 

一年に一度だけ

チェ侍医の

ウンスへの想いの発露は

誕生日に免じて

毎年 見逃している

 

 

新学期が始まったら

今以上に忙しくなるだろうけど

これからも診療所をよろしくね 

イサ

 

 

うん 任せて!

 

 

それから・・・

ユニョンのことだけど・・・

 

 

あぁ?

王子様との婚約?

決まったの?

 

 

そういうわけじゃないわ

ただそれも選択肢の一つ

として残っている

私はユニョンに

王子様との婚姻を

ダメというつもりはないの

 

 

そうだね

良縁だもんね

姫にとっても王家にとっても

 

 

良縁かどうかは

わからないけど・・・

王子様はあの歳ですでに

威厳があるし

人柄も信用できそうだし

何より

ユニョンのことを

大事に思ってくれているのが

わかるのよ

でも?ユニョンのこと

イサはそれでいいの?

 

 

え?オレ?

なんで?

オレには関係・・・

 

 

「ない」とは言わせないわよ

ユニョンはまだ小さな女の子

だけどイサのこと

本当に好きなんだと思う

「イサのお嫁さんになりたい」

って健気な思いも

口から出任せ言ってるわけじゃ

ないのよ

 

 

いやいやいや

年が違いすぎるだろ・・・

それにどう考えても

オレなんかより

王子様の方がお似合いだ

 

 

俺なんか?だと?

お前からそんな言葉が

漏れるとは 残念だな

 

 

チェヨンはぼそりと言って

それきりまた横を向いた

 

 

そおね

確かに今のイサじゃあ

ユニョンを幸せにできるとは

思えないわねぇ〜

イサ ちっとも自分の心と

向き合っていないものね?

 

 

なじるような言い方に

イサはムゥとした顔で

言い返す

 

 

ちゃんと向き合っているし

姫の幸せを願っている

 

 

そお?

イサはユニョンの気持ちを

真摯に受け止めて

くれているのかしら?

 

 

受け止めるも何も

あんなの子供の戯言だよ

姫の冗談だって・・・

それを間に受ける方が

おかしいだろ?

 

 

また

そんなこと言って逃げる

そんな風だと

気がついたら大事な人を

失っていることもあるかもよ?

いなくなってから

わかっても遅いんだから〜

 

 

イサは黙った

 

 

イムジャ

もう行くぞ

子供らが待っておる

 

 

ああ そうだったわ

じゃあ 

また明日ね イサ

 

 

二人はそっと手を繋ぎ

歩き出す

屋敷では子供達が

今日の主役の帰りを

首を長くして

待っていることだろう・・・

 

 

ーーーーーーー

 

 

養成所の寮母ホン・ソアは

式典を終えた新入生七名を

寮の玄関でにこやかに

出迎えた

すでに数日前からちらほらと

入寮はしていたのだが

全員顔を揃えたのは

この日が初めてだった

 

二期生が巣立って

寮長は三期生のカエが引き継ぎ

部屋は先輩後輩二人で

同室なのも今まで通り

 

ただ子供のいるリョウは

相変わらず自宅と寮を

行き来しているから

青色の部屋だけ三人部屋だ

 

新入生は緊張から

解かれた顔で

寮に戻って来ていた

これから寮では

自己紹介を兼ねた

ちょっとした歓迎会の予定で

ご馳走が振舞われる

 

 

二年間

どうぞよろしくお願いします

 

 

副寮長を拝命した

ホ・トマが新入生を代表して

ソアに挨拶し

三期生も揃ったところで

自己紹介が始まった

 

 

ネイルと同室の

赤色の部屋の住人はサクラ

母親が倭国の女人だという

 

 

サクラって

変わった名前だって

よく言われるんですけど

ポッコッ(桜)のことで

オンマの国を代表する

花の名前なんですよ

えっと・・・

漁師だったアッパが

時化で船が難破して遭難して

倭国に流れ着いて・・・

そのとき助けてくれたのが

あたしのオンマで・・・

そのままこの国に一緒に

ついて来ちゃったみたい・・・

大恋愛だったって

オンマに聞いたことがあります

養成所を目指したのは

以前診療所に行ったとき

医仙様がどこの生まれだろうと

どんな血筋だろうと

そんなことは

医者になるのに関係ない

強い意志があればそれでいい

って言ってくださったから・・・

 

 

サクラは声をわずかに震わせ

皆に話した

 

 

いかにも医仙様らしいわね

そうよ

その通りだわ

 

 

同室のネイルが

サクラに向かって答えた

 

 

私はイ・ジウと言います

もしかして

王宮内で会ったことが

あるかもしれないけれど

先日まで武閣氏でした

卒業した二期生のレイさんも

元武閣氏だったのは

ご存知だと思うけど

彼女からここの話を聞いたり

医仙様の警護の際

直接 医仙様から

養成所の話を聞いたりして

医官の仕事の尊さを感じたの

だから猛勉強しました

すごく大変だったけど

無事に合格できました

得意なことは剣術

血を見るのも平気です

苦手なことは裁縫かな?

でも縫合術を頑張りたいです

 

 

橙色の住人になったジウは

そう決意を述べた

同じ部屋の先輩は

おしゃべり好きで

明るい性格のミジャ

二人は気が合いそうだ

 

そうして七名の自己紹介は

次々と進み

寮には久しぶりに乙女たちの

賑やかな笑い声があふれていた

 

 

*******

 

 

『今日よりも明日もっと』

この星には沢山の人がいるのに

出会える相手は人生でごくわずか

だから目に見えないこのご縁を

大事にしたい

 

 

桜桜桜桜桜桜桜桜

 

 

お話は入学式が終わり

新入生も在校生も

新しい一歩ですね〜

そして ようやく

ウンスの誕生日ぱーちいです

子供達が待っているなぁ

 

またおつきあいくださいませ

 

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