明け方
ウンスは目を覚ました
啓蟄を過ぎたとは言え
都はまだまだ
凍てつくような寒さだ
 
 
夢・・・か・・・
百年前の夢なんて
久しぶりに見たな・・・
 
 
丘の上の大きな木の根元で
ウンスは沙羅と花を摘んでいた
風が心地よくて
二人は微笑みあって・・・
迎えにきた義理の兄光守が
愛しそうに沙羅を見つめていた
そんな夢
心がざわざわした
 
百年前にタイムスリップして
心優しい人々に助けられ
またこの国のこの時代に
戻ることができた
けれども今でも悔やんでも
悔やみきれないのが
妹のように可愛がって
慈しんだ沙羅のこと
 
どうしてあんな死に方を
させてしまったのだろう
いや 何より
どうして
家族や故郷のために
彼女が犠牲になることを
止めなかったのだろう

 

チェヨンのところへ

絶対に戻りたい

当時はその一念で

生きていたから

百年前の出来事にも

多くのことに関わらず

見て見ぬ振りを決め込んだ

 

運命だったと言えば

それまでかもしれないが

あの時積極的に

沙羅を救っていたら

彼女に

違う未来が待っていたかも

しれないのに・・・

 

急に寂しくなって

夫のがっしりした足に

自分の足を絡ませた

暖かくてほっとする

 

昨夜の食卓を思い出す

ポッサムを奪い合うように

食べる子供達

笑い声が絶えない奥の間で

父親を囲んでの一家団欒

 

当たり前の風景が

ひどく幸せに思えて

この幸せが少しでも長く

続きますようにと願った

 

 

眠れないのか?

無理をさせたか?

 

 

肩を抱き寄せ

チェヨンは心配そうに

ウンスを見つめた

 

 

ううん

そうじゃないわ

 

 

甘く熱い夫婦の夜に

身を焦がす

それが潤いとなって

ウンスの体を満たしている

 

だからだろうか?

今が幸せすぎて

言い知れぬ不安が

つきまとうのだろうか?

怖いのだろうか?

 

そんなことを考えていたら

チェヨンが唇で

ウンスの唇を塞いだ

 

チュッと一回軽く

それから

舌が絡むほど熱烈に

 

 

溶けちゃいそう・・・

 

 

ウンスがチェヨンに

抱きついて囁くと

 

 

俺はもう溶けてるぞ

 

 

チェヨンが抱きつき返して

呟いた

 

 

最近 

不思議な夢ばかり見る

疲れているのかしら?

 

 

そうかもしれぬ

何せ イムジャは夫に

毎夜貪られておるからな

 

 

まあ! 

少しは自覚があるようね

 

 

自制せねばとは

思うのだが・・・

イムジャを目の前にすると

我慢がきかぬ

困ったものだ・・・

 

 

困った人ね・・・

私はもうすっかり

しおれた花なのに

 

 

はあ?何を言う?

イムジャのどこが

しおれておるのだ?

どこもかしこも

生き生きしておる

どこもかしこも

艶やかではないか

ああ 俺はまた

自制が効かなくなりそうだ

困った 困った・・・

 

 

全然困った風でもなく

チェヨンはウンスの

懐に手を入れた

柔らかな感触に酔いしれて

首筋にふっと息を

吹きかけると

甘い吐息が漏れだした

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

チェ侍医はまんじりともせず

夜を明かした

王様の真意はどこにあるのか

医仙様が傷つくようなことが

起こらぬように

未然に防ぐ手立てはないものか

思考がぐるぐる回っていく

 

 

父上

起きてる??

朝餉ができたってさ

 

 

珍しくイサの方から

呼びに来て

チェ侍医はよろりと

布団から起き出した

 

 

おはよう 父上

昨日は寝るのが遅かったの?

なんだか目の下に

クマができているけど

 

 

ああ いや

そうだな・・・

書物を読んでいたら

寝過ごして・・・

 

 

勉強熱心なのはいいけど

体を壊しちゃ

元も子もないよ

 

 

イサに小言を言われるとは

 

 

チェ侍医は苦笑い

 

 

ところでイサ

お屋敷の皆さんは

お変わりないか?

 

 

ん?相変わらずだよ

ゴンは随分

重くなったかな

サンが小さかったせいか

サンと比べると

二まわりぐらい

体格も性格も

しっかりしている気がする

 

 

末っ子のゴンは

物事に動じない

どっしりと構えていて

思慮深い性格だ

いっぽう次男のサンは

向こう見ずで

やんちゃでチョロ助けだ

二人は正反対な兄弟

あと数年もすれば

どっちが兄貴だか

わからないかもしれない

だがイサは そんな

手のかかるサンの方を

気に入っているような

口ぶりだった

 

 

そうですか

五人のお子さん

それぞれの成長を

医仙様も楽しみにされて

いることでしょう

 

 

そうだろうね

でも?

今更?どうして?

そんなことを聞くのさ?

ユ先生の様子を聞きたいのが

本音?

 

 

そう言うわけでは・・・

医仙様は変わらず

お元気でしょう?

 

 

うん 元気だね

元気すぎて心配になるけど

 

 

しかと

お支えしてあげなさい

イサにしかできない

役割がきっとあるはずだから

 

 

うん わかってる

ユ先生のことも

子供達のことも

ちゃんと見守っているつもり

ヒョンにはかなわないけどね

 

 

ユニョンお嬢様・・・

医仙様に似ているから

 

 

ん?

 

 

美人になること

間違いないだろうし

縁談も多々舞い込んで

いるのでいるだろうなぁ

 

 

ほんと 父上

どうしたの?

なんだか

奥歯に物が挟まった言い方

気味が悪いんだけど・・・ 

王宮で何かあったのか?

 

 

聡いイサは険しい顔で

父親に詰め寄った

 

 

*******

 

 

『今日よりも明日もっと』

思い通りにいかぬのも人生

思いの丈をぶつけるのも

また人生

 

 

黄色い花黄色い花黄色い花黄色い花黄色い花黄色い花黄色い花黄色い花黄色い花

 

 

関東圏は朝 雪になりそう

春のはずなのに寒い日々・・・

どうぞ安寧にお過ごしください

またおつきあいくださいね〜

 

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