ソルラル(旧正月)の休みを

終えた翌朝

三期生のリョウは

いささか重い足取りで

家の門を出た

 

 

行ってらっしゃい

オンマ 頑張ってね

家のことなら

心配いらないわよ

 

 

ええ よろしくね

ハルモニの言うことを

よく聞いてね

 

 

わかってるって

まかせてよ

 

 

姉妹は揃って笑顔で

答えた

子育てを終えたと言っても

二人はまだまだ少女で

これから嫁に出したり

婿を取ったり

心配事は尽きないが

母の思い以上に

娘たちはしっかり者に

育っている

加えて夫はリョウの志を

理解してくれており

何かと支えてくれている

だが 夫は商人で

買い付けや行商で

家を開けることも多い

それで家や店の切り盛りは

姑とリョウの肩に

のしかかっているのだが・・・

 

 

ごめんね

迷惑かけて・・・

 

 

リョウは娘たちに

すまなそうに謝った

自分の夢を貫くために

娘たちに不憫な思いを

させている気がしたのだ

 

 

ううん

オンマ かっこいいよ

チングも すごいねって

言ってくれるよ

だってあの難関の養成所で

学んでいるんだもん

 

 

娘たちが誇らしげなのが

せめてもの救いだと

リョウは思った・・・

 

昨日は親戚一同が集まる

ソルラルで

リョウは目が回るほどの

忙しさで

早朝から料理を作り続け

客をたんまりもてなし

笑顔を振りまいて

リョウなりに

日頃家にいないぶんの挽回を

と 頑張った・・・

のに

漏れ聞こえてきたのは

姑の愚痴だった

 

 

そりゃあね

医仙様のような

天界のお方ならいいですよ

医者としても上護軍様の

奥方としてもお役目を

果たしておられるんですから

だけどうちの嫁は

商家に嫁いだんですからねぇ

商家の嫁として

しっかり頑張って

もらわないといけないのに

そりゃあ 孫たちは

しっかり者ですけどね

母親があれじゃぁあ ねぇ

今更 女医になりたいと

言われても・・・こっちも

そんなつもりで

嫁にしたわけじゃあ

ないんだから・・・

寝耳に水ってもんでしょう?

まあ

医仙様には逆らえないから

リョウの養成所入りは

渋々認めましたよ

認めはしたけど

だけどねぇ・・・

息子だって明後日には

遠方に買い付けに出かける

って言うのに・・・

リョウが家を空けるとは

使用人にも示しがつかない

全く困ったもんですよ

 

 

姑の心無い言葉が

ぐさりと刺さる

自分勝手をしていることは

重々承知ではあるが

どうしても夢を

諦められなかった

今 医者になることを

諦めたら

子供が巣立った後 自分には

なにも残らないのではないか

と言う焦りもあった

 

 

嫁だから

妻だから

母だから

女だから

もう歳だから

あれもできない

これもダメ

それを言い訳にはしたくない

医仙様のようになれなくても

少しでも近づけたら・・・

自分らしく生きられたら・・・

 

 

リョウは自分にまとわりつく

重たい空気を

払いのけるように

娘たちに大きく手を振った

 

 

明後日 戻るから

それまで家のこと

頼むわね

頑張ってくるね!

 

 

は〜い

 

 

二期生たちはソルラル返上で

自分たちの未来のために

昨日も今日も

試験勉強に明け暮れている

 

リョウは思った

若い子たちに比べると

体力も落ちているし

記憶力も自信がないけど・・・

 

 

あたしも

負けていられないわ!

姑の愚痴や嫌味は

今に始まった事じゃないもの

気持ちを切り替えて

養成所に帰ろう

あたしが学ぶべき場所に・・・

 

 

ーーーーーーー

 

 

休み明けの昼過ぎ

寮母ホン・ソアは

寮生の親たちからの

差し入れの整理に追われていた

今年の三期生は比較的

裕福な家庭のご息女が多い

それで休み明けになると

あちらこちらの屋敷から

菓子や果物といった

土産物が届く

ネイルのところからはお餅

ミジャのところからは蜜柑

リノのところからは油菓子

ミリの家からは蜂蜜

といった具合に・・・

 

 

で 

ジュナさんのところは

干し柿・・・と・・・

ジュナさんはおうちが

遠方だからって

ご両親が都に来たって

言ってたわね

 

 

ソアは今日のおやつ分を

取り分けると

ふぅと一息ついた

 

 

ああ そうそう

医仙様のところからも

マンドゥが・・・

これ 美味しいのよね

早速お昼にみんなに

食べてもらおうかしら?

 

 

ヘジャ特製のマンドゥは

寮でも人気のようだ

 

 

あら カエさん

お帰りなさい

実家で

ゆっくりできたかしら?

 

 

ソアは二階へ上がる

カエを見かけて

声をかけた

カエは平民の出

実家の懐具合も厳しいと

聞くが

三期生の中で一番優秀で

次期寮長候補だ

 

 

ソア様

ただいま戻りました

うちは兄弟が多くて

世話ばっかりで忙しくて

ここで勉強していた方が

落ち着きますよ

ああ いい匂い〜〜〜

 

 

これ?

医仙様の差し入れよ

先ほど二期生の様子を見に

お立ち寄りになったのよ

マンドゥ

あとでいただきましょうね

 

 

ありがとうございます

でも・・・あたし

あいにく

なにもお返しできるものが

 

 

厨房にずらりと並ぶ

届け物をちらりと見ると

カエは目を伏せた

 

 

なにを言っているんです

ここは贈り物をし合う場所

じゃありませんのよ

勉学に勤しむ場所でしょう

カエさんが立派な医官様に

なることが

何よりのお返しですよ

変な遠慮はなさらずに!

いいですね?

 

 

カエはホッと嬉しそうに

頷いた

 

そこへ

ネイル ミジャ リノ

ジュナがきゃあきゃあ

言いながら戻って来た

四人は典医寺にも

差し入れを持って行ったのだが

 

 

あのね ソア様

私たち 見ちゃったんですよ

上護軍様が医仙様を

典医寺まで送って来られ

たんですけどね〜

 

 

なんと!

お二人 お手を繋いで

お幸せそうにいらして〜

 

 

そうそう!

上護軍様ったら

顔なんて

こ〜〜〜んなふうに

くっつけて〜〜〜〜

愛しそうに眺めて〜〜〜

 

 

もうもう 私

思い出しただけで

顔から火が出そうです

今でもドキドキしてますよ

羨ましいなぁ

 

 

まあ!あなたたち

なにを浮かれているのです?

お二人の仲むつまじさは

今に始まった事ではないですよ

それに二期生の先輩たちが

試験に備えて猛勉強を

しているというのに!

困った人たちですこと!

 

 

ソアはやれやれと

苦笑して

青春真っ只中の

乙女たちを見回した

 

 

 

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今週は雪から一転

春の陽気になるようですね

三連休も終わりですが

どうぞ今週も

安寧にお過ごしくださいませ