タン

ほら 起きて

もう朝よ

サン 起きなさい

ほらほら

 

 

オンマの声で

ぼんやり目が覚めた

隣で寝ている弟のサンは

まだ寝床の中で

転がったままだ

 

 

う〜〜〜ん

まだねむいよオンマぁ 

だって

昨日ぱーちいだったもん

 

 

あらあら 困った子ね

でもそろそろ起きなくちゃ

ソダンに遅刻するわよ

 

 

ああ ソダンかぁ

行かなくちゃ〜〜〜ね

 

 

ぼくが ぱちっと

目を開けたら

オンマが笑って言ったんだ

 

 

あっ そうそう

この前ね

私がタンへのソンムルに

悩んでいたら

巫女見習いのアコさんが

しっかりもののタンには

「オンマ一日独占権」は

どうですかって

言ってたのよ〜

タンに何が欲しいか

聞いても

何もいらないって言うもの

どうしようかなぁって

考えていたんだけど

アコさんの言う通り

やっぱり 品物よりも

二人でお出かけがいいかな?

でも アッパにも一応

意見を聞いてみないとねぇ

あの人 我が子相手に

本気で嫉妬するから 

 

 

オンマは苦笑していた

アッパの悋気は有名だもん

 

 

昨日の誕生日

すごく楽しかった

そして

すごく幸せだったなぁ

 

 

それはよかったわ

 

 

オンマはまた朗らかに

笑った

オンマはぱーちいのために

特大けえきを弟妹達と

一緒に手作りしてくれたし

それにぼくが

大好きなオンマのケランマリ

(卵焼き)も作ってくれた

 

忙しいオンマのことを

ぼくはよくわかっているから

もうそれで十分なつもりだった

けど・・・

一緒にお出かけできるのなら

それも

とっても素敵なあいであ

 

そんなことを考えていたら

オンマがぼくの枕元の

本を見つけて聞いて来た

 

 

これ貸本屋のテルさんから

もらったソンムルでしょう?

読みながら寝たのね?

それにしても面白い題名ね

「不思議な夢を

見られる本」かぁ〜

で タンは昨夜

いい夢見たのかしら?

 

 

あああああぁっ!!

 

 

ぼくは心臓がドキンとして

布団から飛び起きた

 

 

なんだ!

夢だったんだ

あれ全部

夢だったんだ!!

 

 

ん?

 

 

ぼくね

オンマが天界の話をする時

いつも少しだけ寂しそうな

顔するのが

気になっていたんだ

でも 二年前の誕生日に

じーじやばーばの声が聞けて

オンマ すっごく

よろこんでいたから

ぼくね

あのね

だからね それからね

オンマが

天界のじーじとばーばに

会えたらいいなぁって

ずっと思ってたんだ

ものすごくお願いしたの

オンマとじーじ達を

会わせてくださいって

なのに なんだぁ

あれ 夢だったんだ

本当じゃなかったんだ

あああぁ〜〜〜

ぼく ぼく

せっかくオンマが

じーじ達に会えて

嬉しいと思ったのに・・・

 

 

ぼくはとめどなく

おしゃべりを続けた

そうしていないと

なんだか泣けて来て

オンマの顔を見ようとしても

ぼやけて

見ることができなかったんだ

 

 

そっかそっか

そお言うことか・・・

そお言うことだったのね

 

 

オンマは納得した顔で

目にうっすら涙を浮かべ

それから

とびきりの笑顔を見せると

ぼくをぎゅっと

抱きしめてくれた

 

 

ありがとう

タン

だから会えた

 

 

え??

 

 

覚えておいて

強い思いが縁を繋ぐの

タンが

天界のじーじ達とこの国を

繋ぎたいって

強く願ってくれたから

だから・・・

タンの誕生日に奇跡が起きた

 

 

えええ?どお言うこと?

 

 

タン 夢じゃないわ

じーじとばーばが

朝餉を一緒に食べようって

奥の間で待っている

早く支度をしちゃいなさい

じーじ達 ユハ先生の宿屋に

そろそろ行かなくちゃ

行けないの

天界に帰る時間だから

 

 

ええええええ!!!!

じゃあ あれ 

夢じゃないの?

本当のホントォ?

 

 

うふふ

本当の本当よ

タン

優しいタン

強くて優しい私の息子

ありがとう

愛しているわ 

タン 八歳おめでとう

 

 

一日遅れの

オンマのお祝いの言葉が

ぼくの胸にすごく

すごく しみた

 

 

 

 

 

ぼく達は

いつものように 奥の間で

ワイワイガヤガヤ言いながら

朝餉を食べた

 

ばーばが作ったケランマリは

オンマのよりも甘かったけど

それも美味しかった

ヘジャの海鮮汁も

いつものように絶品だったし

 

朝早くから火を起こして

焼き魚を作ったのはアッパ

ほくほくのカムジャジョリム

(芋の煮っころがし)は

オンマが作った

 

うちの農園で採れた野菜も

ナムルになって

卓にいっぱい並んでいる

 

家族が二人増えて

大きな卓もさすがに

ぎゅうぎゅうだったけど

それも楽しかったんだ

 

 

 

 

そうして

別れの時間は

すぐにやって来た

 

ぼく達は

ずらりと表に並んで

じーじとばーばにご挨拶

 

通っているソダンも

見せたかったけど

「それはまたいつかって

ことで・・・」と

ぼくが言ったら

オンマが大きく首を振った

 

 

ダメよ ダメダメ!!

あのね アッパ オンマ

くれぐれも

もうこんな無茶を

しちゃダメよ

時空を旅するなんて!!

心臓がいくつあっても

足りないじゃない

それに

たとえ 会えなくても

私はオンマとアッパの娘だし

それにちゃんとここで

生きている

離れていてもアッパと

オンマのこと思っているから

 

 

ああ そうだな

それにこれがあれば

寂しくないよ

 

 

じーじはみんなで写した

家族の写真を

大事そうに胸に忍ばせた

 

 

本当に宿屋まで

見送らなくていいのか?

イムジャ

 

 

アッパが心配そうに

聞いている

 

 

ええ どこまで行っても

キリがないもの

竹林に消えるところを見たら

余計に寂しくなりそう・・・

それに私も仕事がある

待っている患者さんがいるもの

ヨンこそ

そろそろ出仕しなくちゃ?

 

 

俺は構わん

ちゃんとお見送りを

してから出かけるつもりだ

大事なイムジャのご両親

なのだから・・・

 

 

そお?

ありがとう

 

 

じーじとばーばは

ぼく達がいつも乗る

輿に乗り込んだ

宿屋までの

道案内役はヘジャ夫婦

 

ばぁばも駆けつけて

天界のばーばに

亀の形の

ヒスイの置物を手渡した

 

 

ウンスが

チェ家の正室の証に

ご両親様にヒスイを

お渡しいたします

これはチェ家に

受け継がれる家宝の一つ

どうぞお納めください

 

 

天界のばーばは

高価なものはもらえないって

困っていたけど

結局ばぁばが押し切った

 

オンマは青い花瓶を一つ

じーじに渡した

 

 

正真正銘の高麗青磁よ

現代なら 

どれくらいの価値になるのか

考えただけで目眩がするわ

割れずに現代まで

持って帰れるといいのだけど

 

 

オンマは笑って言った

スニョンもユニョンも

サンも ゴンまでもが

じーじとばーばとの

別れを惜しんで泣いていたけど

オンマは泣かなかった

 

でもね

その笑顔の裏には

涙がいっぱいなんだろうな

ってこと

ぼくには よくわかった

 

だから

ぼくも泣かなかった

グッと我慢して

泣かなかった・・・

 

その代わりに

オンマの手を握った

 

暖かな光がぼくの手から

オンマの手へ伝わっていく

 

 

オンマ

あのね

ぼくもアッパも

オンマのそばにいるよ

だからちっとも

さみしくないよ

じーじとばーばに

また会えるように

ぼく

いっぱいお祈りする

毎日毎日 

お祈りするからね

 

 

ぼくは心の中で

オンマに語りかけた

 

 

この世に産んでくれて

ありがとう オンマ

ぼくは

オンマとアッパの息子で

うれしいよ

 

 

*******

 

 

『今日よりも明日もっと』

夢の続きを夢見た秋

優しさいっぱいの

世界でありますように

 

 

 

くま猫うさぎねずみトラお祝いケーキ

 

 

こうしてタンの誕生日は

終わりました

たった一日の出来事を

長くゆるゆると

紡いで参りました

お読みいただき

ありがとうございました

 

また企画にご参加の

アメンバーの皆様

たくさんの

ソンムルアイデアを

ありがとうございました

 

巫女見習いアコ

(wingmama2様

設定を変更してしまってミアネヨ)

 

貸本屋テル

(snowteru様)

snowteru様には

早々にアメ限にコメントを

いただきましたのに

お話の構成上

一番最後の登場となりました

申し訳ありません 

そして 素敵なソンムルを

ありがとうございました

 

次回は

今年の恒例となりつつある

後日談のお話とコメントの返礼を

予定しております

またおつきあいくださいませ

 

 

ウンスや

両親に会えてよかったね〜

タン ありがとう!

皆様

ありがとうございました

 

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