なんだか

忙しい一日だったなぁ

 

 

ウンスは

子供達が寝入った後の

つかの間の一人時間を

奥の間で

ぼんやり過ごしていた・・・
 
卓の上には三つ子たちが
ソダンの料理実習でこしらえた
アッパのお土産
まん丸の小さな白いお団子が
ちんまり
三つ置いてあった
 
一生懸命作ったであろう
その団子には
子供達の指の形がついたまま 
蒸されている
 
長男のタンは
そのお団子を眺めながら
「いいなぁ 
にぃにもやりたかったなぁ」
と しきりに言っていた
 
科挙を見据えて 
少しずつ学問が
本格的になって来たタンは
ソダンの過ごし方も
以前とは違って
お遊びの要素がかなり減り
書物を読んだり
仲間と一つの話題について
議論したりという時間が
増えているのだ
 
もともと
学問好きなタンにとって
それはそれで楽しいのだが
三つ子たちの遊びを
目の当たりにすると
羨ましく思えるのだろう
 
そんな我が子を
時には頼もしく思ったり
まだまだ子供でいてほしいと
願ってみたり
母としてウンスも複雑な
気持ちだ
 
 
奥様
柚子茶をお持ちいたしました
お飲みになりますか?
 
 
そこへ片付けを終えた
女中頭のへジャが顔を見せた
へジャ特製の
甘く漬け込んだ柚子の皮の
爽やかな香りが広がっていく
 
 
ありがとう
いただくわ
へジャも一緒にどお?
 
 
ありがとうございます
ですが・・・あのぅ
タルが夜泣きで・・・
オクリョンが手を焼いて
いるようで・・・
 
 
へジャは申し訳なさそうに
ウンスに答えた
 
 
うふふ
へジャもすっかり
タルのハルモニねぇ
わかったわ
早く タルのところへ
行ってあげて
 
 
大変申し訳ありません

へジャとしたことが・・・

 

 

奥様命のへジャ

誰より何より 奥様と

チェ家の皆様のことを考えて

生きてきたはずなのに

なんということを奥様に

言ってしまったのだろう・・・

と 己の言葉におののいて

へジャは

しょんぼりを頭を下げた

 

 

いいのよ 

ケンチャナヨ

へジャに大事な家族が増えた

それは私にとっても

嬉しいことなの

それにね

たまにはこういう

一人時間もいいもんだわ

さあ 早くタルのとこへ

行ってあげて

 

 

ウンスは

ことも無げに言って

へジャに微笑んだ

へジャは再び

申し訳なさそうな顔で

頭を下げて

使用人部屋へと急ぐ

 

窓に風が吹き付け

窓枠をガタガタ揺らしていた

春の嵐だろうか?

夫チェヨンはまだ帰らない

 

冷たい夜風で体を

冷やしていなければいいけど

 

温かな柚子茶を口に含み

ウンスは 

ほうっと息を吐き

愛しい夫の顔を思い浮かべた

一人きりの時に

愛する人を思うのは

贅沢な過ごし方だ

 

 

 

 

それにしても・・・

足がパンパン

肩こりも半端ないわ

 

 

ウンスは現実に戻って

肩をトントンと叩いた

季節の変わり目は

診療所の患者がとても増える

朝からずっと診察のし通しで

さすがに少々疲れていた

 

もちろん

嫁に行くため診療所を辞する

モモの引き継ぎを受けながら

新入りのリョウォンとオルも

頑張って働いてくれているが

今日は特に患者数が多くて

次から次へと

ウンスの診察が続いたのだ

 

しかもそんな日に限って

イサがいなかった

 

実はイサは今春から

養成所で二期生に縫合術を

教えることになっていて

今日が初出勤だったのだ

 

今まで通り

学生たちにウンスが

縫合を教えてもよかったのだが

他にも

教えることはたくさんあるし

何より人に教えることで

イサの技量も上がる

 

それにイサを

診療所にだけ

抱え込むのではなく

典医寺でしか学べない

薬草や鍼灸にも精通してほしい

また 多くの若い医官とも

交流を深めてほしい

というウンスの希望もあって

縫合術の教官にイサを推挙した

 

当然ウンス仕込みの

イサの腕前は折り紙つき

典医寺の医官でも

イサのような技術を持つ

者はそうそういない

 

ところがチェヨンは

意外にも

イサが日中不在なことに

難色を示した

ウンスの警備が手薄になると

心配したのだ

 

だがそこは

元武閣氏のポムとジュヒが

屋敷に詰めることで

折り合いをつけることができた

 

そんなわけで

ジュヒが運営する剣術道場は

月に数回 

イサが診療所にいない日は

お休みとなった

そして

それを喜んでいるのは

剣術稽古が好きなスニョンだった

 

屋敷にいながら

直接師匠のジュヒから

指南を受けられることに

なったのだ

 

ジュヒの息子コハクも

ソダン帰りに屋敷によって

子供達の勉強を見てくれている

 

テマンはチェヨンと一緒に働き

ジュヒとコハクはチェ家に詰める

いつのまにか

そんな構図の出来上がり

というわけだ

 

周りの人を助けているつもりが

周りの人に助けられ

すっかりこの地に根付いて

生きている

 

ウンスは十年前には

考えられなかった自分の

今の暮らしを思った

 

何もない高麗時代を嘆き

病一つ治すこともできず

不安定で不確実で

自分の居場所など

どこにもないと思っていた

あの当時の自分に

教えてやりたい

 

愛する人と紡ぐ日々が

いかに己を強くしてくれるか

ケンチャナヨ

 

 

聞き慣れた愛馬チュホンの

蹄の音が風の音に混じって

聞こえて来た

彼が家路を急いでいる

 

ぼんやりした一人の時間は

もう終わり

ウンスは思わず立ち上がって

廊下を駆け出していた

 

一刻も早く

彼に会いたくて

一刻も早く

彼に飛びついて

彼に抱きしめてほしくて

 

 

*******

 

 

『今日よりも明日もっと』

一人で過ごす静かな夜は

自分をねぎらい

愛する人を待つ時間

 

 

桜桜桜桜桜桜桜桜桜

 

 

パッとしない天気です

でも

雨の日も嫌いじゃないな〜

ゆったり時間が流れる気がして

静かに物思いにふけります

ただ・・・

気圧が下がると

頭痛になるのは

勘弁してほしいけど・・・あせる

 

 

またおつきあいくださいませ

安寧にお過ごしくださいね

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