都には大小様々な市場が

立ち並んで

色々な商品を販売し

どこも活気に溢れているが

その中で

チェヨンとウンスは
マンボ兄妹も店を出している
橋のほとりにある市場に
出かけてきていた
 
常々
マンボの店からは抹茶や
生薬といった化粧品の原料を

ウンスは仕入れているのだが

子供が生まれてからは

市場や店に出向くことは

めっきり少なくなり

もっぱらマンボの店の人足が

診療所に品物を運んできていた

 

それで久しぶりに

マンボの店に寄って買い物し

クッパも食べたいと

ウンスが言い出したわけだ

 

チェヨンとしては

もう少し気の利いた店に

連れていってやろうと

思っていたのだが

ウンスが

身内のようなマンボの

店がいいというのだから

仕方ない

 

夫婦が店先に現れると

少しばかり老けた兄妹が

熱烈歓迎

 

 

医仙

よう来てくれた

なんなら坊主たちも

連れてくりゃあよかったのによ

 

 

サンがお気に入りの師叔は

二人をにやにや見ながら

言った

 

 

子供達は叔母様のところへ

遊びに行ったきり

帰ってこないの

それでこそっと抜け出して

来たってわけ

どお?うちで卸した化粧品

売れている?

 

 

並べられた商品の中から

診療所でも販売している

化粧水と石鹸を見つけると

マンボたちに聞いた

 

 

あああ

一番の売れ筋さ

医仙様のようなツヤツヤ

美人になるって言えば

大抵の女はイチコロだね

飛ぶように売れていくってわけさ

おかげで儲けさせてもらってる

 

 

マンボ姐さんはニヤリと

答えた

 

 

まあ ツヤツヤ美人?

 

 

そうだろ そうだろ

今日もツヤツヤだよ

肌色もいいし

潤っているし

 

 

そおかしら?

私もすっかり歳をとったわ

五人の子持ちですもの

 

 

それが信じられないんだよ

同じ年の女はもっと

くたびれているよ?

医仙 

あんたはやっぱり妖魔だ

もちろんいい意味で

だよ?

 

 

妖魔といった瞬間

ギロリとチェヨンに睨まれ

その迫力でマンボ姐さんは

取り繕うように付け足し言った

 

 

天界で言うところの

美魔女ってとこかしら?

まあ お褒めの言葉として

いただいておくわ

 

 

美魔女?

へえええ そいつは

いい響きだ

早速宣伝に使うとしよう

これをつかえば美魔女になれる

医仙顔負けの美魔女だよってね

 

 

ちゃっかり

しているんだからぁ

 

 

ウンスは朗らかに笑った

その横顔にチェヨンが

見とれていると

すかさず師叔のツッコミが入る

 

 

ヨン

お前の腑抜けっぷりも

相変わらずだなぁ

毎日毎夜

見ている顔だろうよ

 

 

うるさい!

余計なことを言うと

その口斬るぞ

 

 

おお コワコワ

とりあえず中でクッパ

食べてくだろ?

 

 

マンボ姐さんが取りなすと

ウンスは大きく頷いた

 

 

それが楽しみで来たんだもの

この店もこの場所も

変わらないわねぇ

食べ物の恨みは忘れない

って言うけど・・・

あの時 ヨンに横取りされた

あのクッパの味は忘れないわ

美味しかったなぁ

 

 

ウンスは店の中を見回すと

懐かしそうに笑った

 

 

今も変わらないよ

あの時の味のまま

うまいよ

さあ 食べとくれ

 

 

お椀二つが卓に並び

ウンスはそれを嬉しそうに

口に運んだ

 

 

ヨン

食べないなら

私が食べてあげようか?

 

 

夫の前にある椀に手を出して

一口すくうと

昔の敵討ちだと

言わんばかりにパクリと

食べた

 

 

うふふ

横取りってどおして

美味しいのかしら?

ねえ ヨン?

 

 

まったく 

昔のことを

いつまで根にもつのやら

困ったお方だ

ほら イムジャ

ここに飯粒が・・・

 

 

チェヨンはやれやれと

苦笑しながら

ウンスの頬についたご飯粒を

指でつまむと自分の口に入れた

 

 

ああ 暑い暑い

今日はこの辺一帯が熱いよ

夏でもないのに

誰のせいだろうねぇ

 

 

二人をパタパタ

仰ぐそぶりに

ウンスは笑って答えた

 

 

もう

マンボ姐さんったら・・・

いやねぇ からかって

ところでジホやシウルは

元気にしている?

 

 

ん? あいつらなら

噂話や情報を集めに

村から村へ町から町へと

商団率いて旅しているさ

それが本来のスリバンの仕事

ってもんさなぁ

キ・チョルや徳興君が

いなくなって

現王の時代も安寧で

世の中すっかり平和だが

きな臭いことがなくなった

ってわけじゃあ ないからな

 

 

代わって師叔が答えた

 

 

そっかぁ

そうよね

 

 

それでも随分と

いい世の中になったもんだよ

一昔前では考えられない

あんなにコロコロ王様の首が

すげ替えられて・・・

今じゃあ 元国にそんな力は

ないだろうけどな

 

 

師叔の言葉には重みがあった

元の属国として不当な扱いを

受けることが長く続いた高麗で

今のように穏やかな暮らしが

できるようになったのは

ごくごく最近のことなのだ

 

 

まあ ヨンには

まだまだうんと

頑張ってもらわにゃ

いかんってことだな

子宝神さんよぉ

いや違った 鬼神か

 

 

いやいや

子作りだって

まだまだ頑張れるさ

ねえ 医仙?

 

 

師叔!マンボ姐さん!

ったらぁ

子作りって・・・もう

 

 

クッパで体が火照るのか

それともからかわれて

火が出るように熱いのか

ウンスは顔を手で扇ぎながら

困った顔で笑った

 

 

そんな楽しい

ひと時を過ごしながら

化粧品の原材料を発注したり

次の品物の打ち合わせを

したり

ウンスは満足そうに

マンボの店を後にした

 

二人の後ろ姿は

すぐにピタッと寄り添って

どちらからともなく

手の指が絡まる

 

 

相変わらずだねぇ

 

 

ああ 相変わらずだ

ヨンのやつ

いい笑顔だったろう?

医仙がいる限り

あいつから笑顔が消えることは

ないな

 

 

そうだねぇ

 

 

マンボ兄妹は屋根の上から

二人の様子を目で追って

顔を見合わせ

くつくつ笑いながら見送った

 

 

それからチェヨンとウンスは

市場をまたブラブラと歩く

 

するとあちこちで

ウンスに声がかかった

 

それは診療所の患者だったり

それは典医寺時代に

世話をした相手だったり

子供達のオンマ仲間だったり

ご近所の奥方だったり

 

 

子供らがいてもいなくても

イムジャは

ゆっくりする暇がないな

 

 

うふふ

そおね

でも見知った人に

話しかけてもらえるのは

嬉しいわ

最初ここに来た頃は

知らない人ばっかりだったもの

 

 

随分と知り合いが

増えたものだ

 

 

あら?不満そうね

 

 

ああ 大いに不満だ

俺のウンスに皆

気軽に声をかけて

笑いかけて

 

 

まああ うふふ

ヨンったら

悋気大魔王は健在だわね

 

 

俺は毎日

イムジャが他の男に

盗られやしないかと

矢も盾もたまらず

暮らしておるぞ

 

 

まあ!

大げさな

 

 

ウンスが笑うと

急にチェヨンが

肩に手を回し引き寄せた

 

 

え?ちょっと!

ここは往来

みんなが見ているわ

 

 

構うか

うんと見られとけ

このいい女が誰のものか

皆に知らしめねば

 

 

もう

しょうがない人ねぇ

 

 

ウンスはまんざらでも

ない様子で笑って言った

 

 

この国で私ほど

幸せな奥さんはいないと思うわ

 

 

背伸びして

チェヨンの耳元で囁くと

その口元が緩んだ

 

 

そうか?

 

 

ええ

だって あんなに

口下手だったヨンが

毎晩 愛してるって

言ってくれるもの

ねえ 一応聞くけど

まさか 体だけ?

愛しているわけじゃ

ないわよね?

 

 

あほう!

そのようなわけあるか

もちろん それも

その・・・

あい して・・・

おる・・・が・・・

俺はイムジャのすべてを

だ・・・な

 

 

うふふ

意地悪だったかな?

今の質問・・・

あのね 私もヨンの全部が

大好きなの 知ってる?

 

 

ん?

ああ・・・あぁ

 

 

少し照れた顔の夫が

たまらなく愛しく思えた

減るどころか出会った頃より

ずっと好きが重なって

ますます愛している彼の横顔を

ウンスはじっと見つめた

 

 

やっぱり

たまにはいいわね〜〜〜

子供抜きで恋人繋ぎで

こうやって歩くの

これこそ私の望んだデートよ

 

 

だが イムジャのものは

何も買い求めておらぬぞ?

褒美が欲しかったのでは

ないのか?

 

 

もう十分もらったわ

デートしながらヨンの愛情を

たくさん感じたもの

 

 

さりげなく

人混みから庇ってくれたり

ウンスの手を引いて

楽に道を歩けるように

気遣ってくれたり

ウンスの好きそうな店を

見つけてくれたり

チェヨンはデート中

何かと

気を配ってくれていたのだ

 

 

それにね

子供達に可愛い布や簪や

おもちゃも買えたし

へジャたちのお土産も

叔母様への贈り物も選べた

あとは そうねぇ

ヨンに絹織物を・・・

そろそろ夏物を新調したいわ

 

 

イムジャ

俺のことはいいのだ

イムジャの好きなものを

買うつもりで来たのだぞ

ではイムジャの夏用の布を

買うとしよう

 

 

ううん

私はいいって〜

一生分の衣を持っている

 

 

では簪はどうだ?

 

 

それもたくさん持ってる

 

 

腕輪は?指輪は?

髪飾りは?

ああ そうだ

コッシン(靴)はどうだ?

刺繍の綺麗なのが欲しいと

いつぞや言っておったぞ

 

 

チェヨンとしては

ウンスの誕生日ソンムルを

選びたかったのだが・・・

 

 

そうだっけ?

でも 今日はいいわ

そろそろ帰らなくっちゃ

屋敷でみんなが待ってるもの

それこそが

ヨンが私にくれた一番の

ソンムル 宝物よ

さあ 帰りましょう

お腹すいちゃった 

今夜は何かなぁ

へジャに聞いとくんだったわ

 

 

誰にも邪魔されない

二人だけの貴重な時間を過ごし

すっかり満足したウンスは

夕暮れ時 桜の舞い散る中を

チェヨンの腕を

ぎゅっと抱きかかえ

我が家に向かって歩き出した

 

 

*******

 

 

『今日よりも明日もっと』

一番の幸せは

心から大事だと

思える人に

巡り会えること

 

 

桜桜桜桜桜桜桜桜桜

 

 

いつまでたっても

ラブラブで

幸せな二人に出会うと

ホッとする〜

ヨンとウンスの仲むつまじさは

やっぱり高麗一ですね音譜

またおつきあいくださいませ

 

週明けも安寧に

お過ごしくださいね

 

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