しからば後ほど
典医寺で
 
 
ウンス肝いりの
女医養成所の入校式が
行われる朝
チェヨンは愛しい妻を
優しく
見守るように微笑んだ
 
 
ええ 
でも ヨン
忙しいんだから
無理して式典に来なくて
いいのよ
 
 
そうはいかぬ
俺が行かずに
誰が参列するのだ?
 
 
それは・・・
王様 王妃様でしょう?
それに大妃様も
 
 
ゆえに俺が必要なのだ
王家の警備は任せろ
それに俺はイムジャの夫だ
 
 
警備って・・・
王宮の一角でそんな
物騒なことは起きないわよ?
でもヨンの心遣い
ありがたくいただいておく
サノを見送ってから出たいし
私は昼からイサと行くわ
 
 
ああ わかった
だが 遅れるなよ
 
 
チェヨンは心配そうに
答えた
養成所の開校式は
昼からの予定で
ウンスとイサは
今日 故郷に帰るサノを
ここで見送って 
その後 常連患者の
朝の診療を終えてから
王宮へ向かう予定だ
 
四人の子供たちは
これからソダンに向かうし
三男坊のゴンは
オクリョンとクリムと
サムウォルに子守を頼んだ
 
 
子供達もしっかりしてきたし
診療所は最悪イサに
任せて向かうから大丈夫よ
 
 
子供達が成長しだんだんと
手がかからなくなるのは
嬉しいようで寂しくもある
母親とは複雑なものなのだ
 
 
では行って参る
 
 
は〜い
行ってらっしゃい
 
 
アッパ
お気をつけて〜〜〜
 
 
手を振る妻子に見送られ
チェヨンは愛馬チュホンに
ひらりと跨ると
テマンをお供に出かけて行った
 
それからソクテとへジャ
クリムに付き添われて
四人の子供たちが
ソダンに向かい
ウンスはゴンの授乳を済ませて
眠ったのを見届けてから
診療所に出勤
 
と言っても診療所は
屋敷の敷地の一角にあって

通勤時間はほぼゼロ

現代で通勤電車に

揺られていた頃を思えば

なんと贅沢な環境だろう

 

そうこうしているうちに

イサに連れられてサノが

別れの挨拶にやって来た

 

 

養成所のことは

残念だったけど

もしも決意が固まれば

また来年 

待っているわね

 

 

はい

色々お世話になりました

そして今後ともお兄様を

どうぞよろしくお願いします

 

 

ええ もちろん

でもチェ先生にお世話に

なっているのはこっちの方よ

 

 

ウンスは微笑んだ

 

 

いつかまた

この地に戻れるように

一から修行し直して参ります

 

 

こうしてサノは都を旅立ち

お供をして来た

下男下女と一緒に

故郷に帰って行った

 

 

サノがなぜ

合格できなかったか

イサならわかるでしょう?

 

 

サノが去った後

ウンスは静かに尋ねた

 

 

あ うん

なんとなく・・・

あの人 

医者になることが

目標じゃなくて

医者になるのを手段に

したんじゃないかと思う

 

 

ウンスは頷いた

 

 

この三年で養成所のための

予備校ができたりして

全体の学力は底上げされたわ

だからこそ

医者になりたいって

覚悟と熱量が必要だと思ったの

医者の世界を

女人が受け持つには

まだまだ厳しい世界だもの

残念だけど

サノからその熱意が

感じられなかったわ

学力が足りなくて不合格なら

来年目指して

勉強を頑張ればいい

でもそうじゃないなら・・・

 

 

うん たぶん

あの人も気がついたと思う

浮ついた気持ちじゃ

受からないってこと・・・

でも その上でもし

来年 再受験するなら

その時の志はきっと本物だよ

 

 

そおね

それを待ちたいと思うわ

 

 

ウンスはイサの意見に

大きく頷いた

 

 

ーーーーーーー

 

 

桜の花びらが舞い散る中

王宮の広間の一室で

養成所の入開式が

盛大に執り行われた

 

チェヨンが案じたような

ウンスの遅刻もなく

新入生と参列者が勢揃い

 

ウンスとしては

もう少しこじんまりとした

式典を望んだのだが

八名のうち六名が両班の娘

参列する保護者が増え

加えて

三年目の養成所は

世間の支持もあり

当初ウンスに反目していた

重臣たちが

手のひら返したように

参列を申し出たため

大掛かりな式典となってしまった

 

王様 王妃様 大妃様

もちろんチェヨン

そして 多くの重臣や尚宮たち

これから学生たちが世話になる

典医寺の医官や医女・薬員

いとこが入学した

トクマン一家の姿もあった

 

その式典の会場で

ひときわ輝いている妻の姿に

チェヨンは目を細めた

 

壇上で堂々と話す

あの美しい女人が

自分の妻であり

我が子の母であることが

今でも

信じられない気持ちで

空恐ろしささえ感じてしまう

 

 

どうして天は

あの方をここへ

自分のもとへ

遣わしたのだろうか?

 

 

チェヨンはふと

そんなことを考えた

 

 

出会いは

十年以上も前の天界

今日のようにウンスは堂々と

大勢の民の前で話をしていた

 

一瞬目があって

その瞳に吸い込まれ

うっかり本来の目的

王妃様のための神医探しを

忘れたくらいだ

 

 

あの時 

イムジャに出会うために

俺は生かされていたのだろう

一日一日

死を待つだけの人生が

あの日を境に変わったのだから

 

 

新入生を前に

凛々しい顔で

祝辞を述べるウンスと

目があって

チェヨンは口元を緩め

ウンスもぱあっと

華やいだ顔でチェヨンを

見つめ返した

 

新入生の八名は

緊張した面持ちで

膝に手を乗せ

ウンスの祝辞に聞き入っている

 

 

あなたたちが歩みだした

医官への道は

険しい道であることに

違いないわ

けれども

その先に見える光を信じて

仲間とともに乗り越えて欲しい

と思っています

周りを見回してごらんなさい

あなたたちを見守る人も

あなたたちの味方も

ここにはたくさんいるわ

三期生の皆さん

ようこそ養成所虹へ!

私たちは新入生を歓迎します

二年間一緒に頑張りましょう

 

 

拍手が起きて

ウンスは照れ臭そうに

お辞儀をすると壇上を去った

 

ウンスの祝辞の後

王様たちが退場し

それから二期生が

それぞれ自分と同じ色を

割り当てられた下級生を

迎えに行って

学生たちは寮へと戻った

 

保護者たちの付き添いは

ここまで

リョウの子供達は

母親が寮に向かうのを見届け

トクマンの妻ナナたちも

いとこのリノと会釈を交わして

門出を祝った

 

 

いい式典だったぞ

 

 

人が少なくなる頃合いを

見計らって

チェヨンはウンスのそばに近づき

ぼそぼそと告げた

 

 

そお?

みんな いい顔してたわ

一期生が卒業して

寂しくなったと思っていたけど

また新しく始まるのね

 

 

そうだな

それにいい祝辞であった

 

 

ほんと?うふふ

寝ないで考えた甲斐があった

誰に褒められるより

旦那様に褒められるのが

一番嬉しいもの・・・

ところで

 

 

ところで?

なんだ?

 

 

うふふ

言葉だけじゃなくて

ご褒美は期待して

いいのかしら?

ほら 

私の誕生日も近いもの

お洋服とか?簪とか?

何かおねだりしようかな

 

 

幼子のような表情の妻に

チェヨンはくくっと笑って

その可愛らしい鼻をつまむと

「ああ 任せろ」と笑った

 

 

*******

 

 

『今日よりも明日もっと』

春うららかな

いいことありそうな

予感の日

 

 

桜桜桜桜桜桜桜桜桜桜

 

 

今日は四月四日

ヨンヨンの日ですね〜

いいことがありそうな響きです

 

昨日は新年度の週始めで

入社式やら入学式やら

あちらこちらでニュースに

なっておりましたが

虹の三期生も晴れやかに

新しい一歩を踏み出したようで

ウンスもホッとしてるだろうなぁ

そして明日五日はウンスの誕生日

子供達も

何か用意しているかしら?

 

またおつきあいくださいね

 

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