養成所入寮期限の前々日
イ・ジュナは
合格証書を握りしめて
寮の門をくぐった
 
前々日に来るのは
少し早かっただろうか?
ジュナは期待が膨らみすぎて
待ちきれなかったのだ
だがジュナの杞憂を
吹き飛ばすかのように

寮にはすでに新入生が

ちらほらといた

 

その中には学力試験の時

隣の席だった

エ・ミリの姿もあった

ミリは地方役人の娘だそうで

試験のために都に出て来たのだ

 

ミリはジュナを見つけると

嬉しそうに駆け寄ってくれた

 

 

ジュナさん アンニョン

ジュナさんは紫のお部屋よ

私は青色

ここは虹の色で振り分け

られるんですって〜

 

 

ミリは玄関に張り出された

部屋割りを指差しながら

ジュナに言った

 

 

ええ そうなんですってね

二期生の人が

合格発表の時言ってたもの

 

 

ああ そうだった!

私ったらうっかりだわ

説明 聞いてたわよね

 

 

人懐っこい性格のミリは

頬にエクボを浮かべて

笑った

 

 

先輩たちはまだいないの

みんな

帰省しているんですって

でも寮母のホン・ソア様が

あれこれ教えてくださるから

大丈夫よ

 

 

そこへ

笑みを浮かべたソアが

やって来た

 

 

お部屋に

荷物を運びましょうね

最小限でと

お願いしてあったけど

あなたは大丈夫かしら?

 

 

寮母がジロリとジュナの

手荷物を点検したのには

訳があった

 

 

ふふふ

あのね 先に着いた

カ・ネイルさんと

コ・ミジャさん

お荷物がいっぱいなのよ

どれもこれも必要なんですって

でも

あれじゃあ 先輩たちに

叱られそう

お部屋が狭くなるもの

 

 

ミリは横から口を挟んだ

 

 

へええ

私はご心配なく

大したものは

持って来てないです

少しの着替えと書物と

 

 

ジュナは賢そうな

きりりとした顔で

寮母のソアに答えた

 

 

わかりました

では ついてらして

 

 

ソアは二人を連れて

歩き出した

二階に上がってすぐの部屋に

紫で塗られた板が張ってある

そこがジュナに割り当てられた

部屋だった

同室の先輩は薬房の娘ケイ

ケイは

しっかり者で面倒見がいいと

寮母から聞いて

ジュナはホッとした

 

 

私はお向かいの部屋よ

今年は部屋の位置が

去年とは違うんですって

寮長さんのお部屋は 

いつもは

一番奥の広い部屋なのに

今年は藍色が三人だから

交換したんですって

優しいわよね 寮長さん

だからね

寮長部屋が手前

私 同室なの

 

 

ミリは寮長のサユナと一緒の

青色の部屋だった

 

 

慣れてしまえば

どの部屋も一緒よ

 

 

ジュナは

もっともなことを言い

微笑んだ

 

 

そういえば

ジュナさんのお父様は

通訳官と聞いておりますが?

ジュナさんも他の国の言葉が

わかるのかしら?

 

 

ソアはジュナに尋ねた

新入生のことを早く知りたい

そんな気持ちの表れかもしれない

 

 

ええまあ 

簡単な言葉なら・・・

元国とか 倭国とか

西洋のものも・・・

ちょっとだけ

 

 

すごいすごい!

素敵ね ジュナさん

 

 

ミリは無邪気な顔で

手を叩いてはしゃいでいる

 

 

あれ!新入りさん?

あなたも待ち遠しくって

じっとして

いられなかったのね?

これから二年間よろしく

 

 

廊下に出て来て

手を差し出したのは

ウダルチ副隊長トクマンの

いとこと言われている

キョン・リノだった

 

 

えっと???

 

 

ジュナが差し出された手に

戸惑っていると

 

 

これ 握手っていうの

挨拶がわりよ

医仙様から教わったの

 

 

え?医仙様のお知り合い?

 

 

ジュナは驚いた顔でリノに

尋ねた

 

 

あああ 正しくは

医仙様に教わったいとこから

教えてもらったのよ

私のいとこ ウダルチなの

でも妻帯者だから

狙わないでね

 

 

まあ! これから

医学を学ぼうって時に

男の人に関心を示して

いる場合じゃないわ

 

 

ジュナが答えると

リノはうんうん頷いたが

 

 

でもぉ

侍医様は素敵だし

息子の若先生はかっこいいし

何より医仙様の旦那様

チェヨン上護軍様は

たいそうな美丈夫よ

見ているだけでも目の保養

私 困っちゃうわ

 

 

ミリは頬を染めながら答え

皆の笑いをさらった

 

 

さあさあ

おしゃべりは

そのくらいにして

お部屋を片付けてくださいね

今夜の夕餉は・・・

ネイルさん ミジャさん

リノさん ミリさん 

ジュナさん

五人分で大丈夫かしら?

 

 

ホン・ソアは指折り数えて

寮生たちを確認すると

厨房に伝えることにした

 

 

 

 

三期生に合格したカエは

明日の入寮を控え

持っていく荷物をまとめていた

と言ってもカエの家は

細々とした暮らしむきで

せっかくの娘の門出に

晴れ着ひとつ

持たせられないことを

母親はひどく気にしていた

 

試験を受けた時も

周りは皆 両班の娘か

裕福な商人の娘で

当たり前のように

美しい絹織物で着飾っていたが

カエはというと麻で仕立てた

チマチョゴリ

母親から譲り受けたのを

着込んでいた

 

 

お嬢様たちの中で

肩身が狭くなかろうか?

本当に大丈夫なのかね?

大それた夢を見て・・・

 

 

大丈夫よ

チマチョゴリが勉強を

する訳じゃないもの

それにどんなボロ着でも

あたし 構わないわ

だって医術を学べるのよ

絶対 お医者様になって

オンマのこと楽させてあげる

妹たちにもうんと

ご飯を食べさせてあげるの

 

 

すまないねぇ

 

 

ううん オンマ

胸を張って入学するわ

それにあたし副寮長に

選ばれたのよ!

すごいでしょう?

身分や財に関係なく

とりたててくださるって

医仙様のお言葉は本当だった

あたし 頑張るね

 

 

カエは力強く母親に告げた

 

 

今年の新入生は八名

 

三年連続受験し続け

初心を貫いた頑張り屋の

商家の奥様リョウ(三十)

 

診療所で下働きを続けながら

修行を続けたミジュ(二十)

 

お嬢様育ちで苦労知らず

だが 医官への道に燃えている

カ・ネイル(十八)

コ・ミジャ(十八)

 

トクマンの従姉妹

キョン・リノ(十七)

 

地方役人の娘エ・ミリ(十七)

 

苦労人のカエ(副寮長・十九)

 

通訳官の娘イ・ジュナ(十八)

 

 

今年も志溢れる女人たちが

養成所に顔を揃えた

 

 

ーーーーーーー

 

 

お帰りなさい!

これから夕餉なの

よかった

今日は一緒に食べられるわ

 

 

まだ夕餉の時刻前

ちょうど子供達と

配膳の準備をしていたウンスは

嬉しそうな声をあげた

子供達も父親の帰宅を歓迎し

次々と

アッパに飛びついている

市中見回りから

そのまま帰宅したチェヨンは

そんな家族を見回し微笑んだ

 

 

いい匂いがするぞ

夕餉はなんだ?

 

 

うふふ

山菜の天ぷらにナムル

それにお魚もあるわよ

 

 

あのね ナムルは

スニョンがへジャに

たのんだのよ アッパ

 

 

山菜好きなスニョンは

楽しそうに報告をする

 

 

あぁああ サン

ナムル ニガテ〜〜〜

お肉がいいなぁ

 

 

山菜が苦手なサンは

恨めしそうにスニョンを

見つめている

 

 

なんでも食べなくちゃ

大きくなれないよ サン

 

 

最近 また背が伸びた

長男のタンがサンに

言い聞かせている

その横で夕餉を待ちきれない

妹のユニョンが天ぷらを

つまみ食い

 

相変わらず賑やかな兄妹弟に

ハイハイが上手になった

三男坊のゴンも加わって

さらに

チェ家は賑やかさを

増している

 

 

ヨン

お着替えするわよね?

手伝うわ

 

 

ウンスは後をへジャに任せ

夫とともに閨に向かった

 

チェヨンはようやく

ウンスを独り占め

閨に入るとぎゅっと

抱きしめ 

そっとくちづけた

そうして妻の

柔らかな唇の心地よさに

浸っていたが

ふと思い出したように言った

 

 

先ほど市場で

侍医とあの娘を見かけたぞ

 

 

ああ サノのこと?

ええ イサから聞いているわ

デートだったみたいね

私も覗き見したかったなぁ

どんな感じだった?

お似合いな感じ?

 

 

デートの意味を知っている

チェヨンは苦笑した

 

 

どうであろうな?

俺には仲の良い

兄妹のように見えたが・・・

 

 

ふ〜〜〜ん

サノ 都に残って

ここで働いてくれたら

良かったのに・・・

 

 

受験結果がわかった時

ウンスはサノを診療所に

置くつもりでいたのだが

「自分にはその資格がない」

と言って

サノに断られたのだ

 

 

人それぞれ

考えがあるのであろう

都だけが楽園というわけ

でもなし・・・

 

 

そおね

私はヨンがいれば

どこでも楽園よ

田舎でも都でも・・・

私に私の居場所があるように

サノにはサノの居場所が

あるのかもしれないわね

 

 

ウンスは夫の首に

ぶら下がりながら

幸せそうに微笑んだ

 

 

*******

 

 

『今日よりも明日もっと』

お金は使えばなくなるけど

身についた学問は

決して消えることはない

女人たちよ 大志を抱いて

 

 

桜桜桜桜桜桜桜桜桜桜

 

 

三期生の皆様のお披露目が

無事完了しました

ようやく動き出した妄想〜

 

エ・ミリ rietin0321様

イ・ジュナ june24ws様

そして

ミジュ akogi104様

 

今年は八名体制です

どうぞ

よろしくお願いします

 

 

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四月になりました

新しい環境で

右往左往している方も

いらっしゃるかもしれません

引越しの方や転勤の方

異動する人見送る人

悲喜交々の春

皆様

安寧にお過ごし下さいませ

 

またおつきあいくださいね