このお話は今年の二月に行った

アメンバー様限定企画で

抽選にご当選された

おひるねにゃんこ様の

意表を突いたリクエスト

若き日のアン・ドチと

イムジャ(リコ)を描いた物語です

 

イムジャ企画なので

ストーリーや時系列が

本編とは別仕立て・・・

本編よりも少々遡った

時代設定となっておりますが

お楽しみいただけたら幸いです

 

 

では どうぞ〜ダウン

 

 

桜桜桜桜桜桜桜桜桜桜桜桜

 

 

『愛しのアン・ドチ様 其の壱』

 

 

なんだ?また恋文の代筆か?

 

 

お兄様!

覗かないでよ 

盗み見なんて いやねぇ

だって

あたしが書いた恋文を使えば

想いが通じるって評判なのよ

あちこちから頼まれるんだもの

仕方ないじゃあない

 

 

屋敷の廊下に紙と墨を広げ

物思いにふけっていたリコは

鼻の頭に墨をつけながら

ツンとした顔で兄に言い返した

 

 

おいおい 

善意ならともかく

恋文で結構 荒稼ぎを

しているって聞いぞ・・・

母上が案じておられた

嫁入り前の娘が

人様の恋文の代筆でお金儲け

なんぞ 

バチが当たって

嫁にいけないんじゃないかって

なあ ドチもそう思わないか?

 

 

急に話題を振られて

若きアン・ドチは困った顔で

おどおど答えた

 

 

ん?どうだろう?

リコの文才は

大したもんなんだろうから

バチの心配は

ないんじゃないか?

 

 

それ 

答えになってないから

 

 

少しずれている

アン・ドチの返答を聞いて

リコの兄はやれやれと

小さなため息をついた

 

 

あのねぇ お兄様

あたし まだ十五よ

嫁入りの話なんて早すぎるわ

それにあたし 

文筆家になりたいの

だから嫁になんか行かない

ずうっと

この家にいてやるんだから

 

 

お前なぁ 今の言葉

母上が聞いたら卒倒するぞ

十五で嫁に行く女人は

この世にたくさんいる

むしろ遅いくらいだ

それなのにお前ときたら・・・

 

 

舌を出している妹に

小言口調で言って

二歳年上の兄は

今度は盛大なため息をついた

その横で 

同じソダンに通う

同い年のアン・ドチは

くつくつと忍笑い

 

 

そこ

笑うところじゃ

ないからね

 

 

リコはアン・ドチを

キッと見据えた

 

 

兄とアン・ドチは幼馴染で

学問も剣術も一緒に

切磋琢磨している仲

リコの屋敷にも

よく出入りしていて

リコにとっても

気心知れた相手で遠慮がない

 

 

ねえ そういえば

アン・ドチ

科挙の試験を受けて

官職につくのかと

思っていたのに

内官になるって本当?

 

 

リコは疑問に思っていたことを

真っ正面から尋ねた

実は 兄もアン・ドチも

昨年科挙の試験に落ちていて

今年もう一度

科挙受験し直すものだと

リコは勝手に

思い込んでいたのだ

 

 

リコ お前

仮にも年上に向かって

呼び捨てか?

失礼だろ

ドチもニコニコしてないで

叱っていいんだぞ

 

 

兄は呆れた顔で妹に諭す

 

 

ええ?お兄様こそ

「仮にも」って言い方

いかがかと思うわよ

仮にも年上?

まあ 確かにアン・ドチは

頼りないか?

だから試験にも落ちるのよ

 

 

歯に衣着せぬ物言いのリコに

アン・ドチは

苦笑するしかなかった

リコは昔っから

毒舌なところがあるが

竹を割ったような性格で

悪気がないことくらい

わかっている

だが

核心に迫る鋭いツッコミは

折れた心に時々刺さる

 

それで 

科挙試験に落ちてからは

この屋敷に来るのを

控えていたはずなのに・・・

とんだところで

リコに捕まったものだ

 

 

頼りなさと優秀さは

関係ないと思うけど・・・

 

 

ようやく言い返し

アン・ドチは小さく

首を振って言った

 

 

うちは代々内官の家柄だと

リコも知っているでしょう?

だから内官になるのが

一番いい選択だと思ったんだよ

父上もそれを望んでいるだろうし

 

 

じゃあ どうして

昨年は科挙を受けたの?

本当は

王様の身の回りのお世話係に

甘んじるのが

嫌だったんじゃないの?

だから科挙を受けてみた

 

 

リコ!

口が過ぎるぞ

王様に対する無礼に当たる

 

 

兄の叱責にも負けず

リコは畳み掛けた

 

 

だってそうじゃない?

能力があるのに

家柄で科挙を諦めなきゃ

いけないなんて

おかしなことよ

人材は適材適所で決めるべき

そうでしょう?

男なら落ちても落ちても

果敢に挑むべきだと思う

 

 

リコの言い分はもっともだが

時代は腐敗政治の真っ只中で

縁故採用や家柄重視は当たり前

アン・ドチの家のような

下級身分の両班に出世の道は

なかなか開かれないのも

現実だった

 

 

もし僕に能力があれば昨年

合格しているはずだよ・・・

残念ながら 僕には

文官としての

能力はなかった・・・

だけどね

内官の仕事も立派な仕事だ

王様や王族の方々の日常を

お支えするのは

意義のある役目だと

リコは思わないかい?

 

 

そんなの・・・そんなの

負け惜しみにしか

聞こえないわ!

あたしはアン・ドチに

自分の思う道や

やりたい道に

進んで欲しかっただけなの

 

 

リコが反駁すると

アン・ドチは悲しそうな顔で

微笑んだ

 

 

ーーーーーーー

 

 

何もあんな言い方を

しなくったって・・・

お前だってあいつの立場

わかっているだろう?

 

 

アン・ドチが帰ってから

兄はぐちぐちとリコに言った

リコの家と違って

アン・ドチの家にはゆとりがない

父親は病のため

もうずっと前に内官をやめ

今は母親のわずかな稼ぎで

その日暮らしのようなもの

 

両班といえども家計は苦しい

アン・ドチには

働きに出て一家を支える必要が

あるのだ

 

 

じゃあ お兄様は平気なの?

あんなに一緒に頑張って

学問に励んできたんじゃない

その友が別の道に進もうと

しているのよ

 

 

悶々とした気持ちを抱え

リコは屋敷を飛び出した

 

世の中はいつから

こんなにも

理不尽になったのだろう?

高麗は元国の属国扱いをされ

王位は元の気まぐれで

コロコロ変わる

その上

今の王様は気性が荒く

自分が一番でなければ

機嫌が悪いというから

始末に負えない

 

ムン・チフ率いる赤月隊が

闇夜に紛れて活躍し

はびこる悪を退治しているが

それすら王様は

面白く思ってないようで

王様以上に

目立つ存在の赤月隊は 

一人また一人と

潰されているという・・・

 

 

あんなに

人がいいことだけが取り柄の

アン・ドチが

あの暴君のお側に?

無理無理!難癖つけられて

すぐに手打ちになってしまうわ

そんなの絶対 嫌!

 

 

リコは心配だった

これ以上 将来のことで

優しいアン・ドチが

傷つくことが嫌だったのだ

 

リコは

人通りの多い市場通りを

歩いていた

急に飛び出してきたから

どこかへ行く目的もなく

お供も一緒ではなかった

 

それにしても

久しぶりに会ったというのに

アン・ドチに対して

ついつい口が過ぎた・・・

それは反省している

 

 

だけど

アン・ドチも悪いのよ!

年下のあたしに

言い負かされるなんて!

でも・・・言い過ぎたな・・・

あたしが彼を傷つけて

どうするのよ!

次に会った時には

ちゃんと謝らなくちゃ

 

 

アン・ドチの悲しそうな顔を

思い出してリコは気が塞いだ

頑張ってほしくて

発破をかけたいだけだったのに

どうしていつも

うまくいかないんだろう?

どうして つい

突っかかるようなことを

言ってしまうのだろう・・・

 

リコは自己嫌悪にかられ

小さくため息をついた

 

 

人混みは途切れることなく

市場は買い物客でにぎわっている

春 まだ浅い

ケナリ色の街並みが綺麗だった

 

 

 

 

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