ユニョンは夢を見た
そうして毎夜
夢を重ねていくうちに

記憶の奥の奥に

閉ざして来た感情を

ぼんやり思い出していた

 

ある時は

青いカバンをもらう夢

ある時は

誰かと馬を走らせる夢

ある時は

かか様の木を眺めている夢

ある時は

さめざめ泣いている夢

ある時は

泣いているオンマの顔を

見つめている夢

 

小さな幸せな感じる思いと

切ない悲しい思いが

入り混じる夢

 

ユニョン自身も自分に

何が起きているのか

よくわからなくて

それをうまく口に出すことも

できないまま

 

自分が

ここにいるのは何故なのか

自分は一体何者なのか

悩む・・・

 

 

それで 時々

ぼんやりしていると

決まってイサが

気づいてくれた

 

 

どうした

姫?

 

 

むにゅっと頬を摘まれて

笑いかけるイサの顔に

ユニョンは安心感を覚えた

それは父親とも母親とも違う

もっと内側の安心感

 

 

なんでもない

ケンチャナヨ

 

 

すぐに大丈夫と答える

幼いユニョンに

イサはやれやれと首を振った

 

 

姫はユ先生に

そっくりだな

気丈って言うか・・・

我慢強いって言うか

なんて言うか・・・

もしヒョンやユ先生に

言えないことなら

オレじゃダメか?

オレも一応大人だぞ

ユニョン姫の悩みを

聞くことくらいはできる

それに

この前の夢の話聞いたから

なんだか放っておけなくて

な・・・

 

 

イサの優しい言葉

いつか出会ったことのある

優しい瞳

ユニョンは食い入る顔つきで

イサを見つめ尋ねた

 

 

じゃあ ユニョンのこと

イサの

おヨメさんにしてくれる?

 

 

また始まった

姫 そんなこと

軽々しく口に出しては

いけないぞ

それにオレの嫁になるって

どう意味か

わかってないだろ

だいたい

姫とオレとでは

親子ほどに離れているから

ユニョン姫が大人になる頃 

オレは間違いなくハラボジだ

オレは姫の相手には

ふさわしくないよ

それにオレはヒョンを

敵に回したくはないんだ

ヒョンは姫のことを

大事に大事に思っているから

たとえふざけてでも

そんなこと言ったら

ヒョンが寂しがるぞ

 

 

ついついムキになって

小言口調のイサに

ユニョンは言い返す

 

 

ふざけてないのに・・・

どおしてユニョンじゃ

ダメなの?

ゆめのなかでは

やくそくしたのに

イサはなんにも

おぼえてないのね

 

 

ん?

 

 

だんだん鮮明に

見えて来ている

ユニョンの夢と違って

イサの夢はいつまでたっても

ぼうっとしていてる

 

ぼんやりした輪郭

ぼんやりした背景

はっきりわかるのは

小高い丘の上の大木と

菊の花だけ

 

思い出せない歯がゆさと

思い出してはいけないと

心のどこかで言っている

 

 

じゃあ

イサのオンマって

どんなひと?

おしえて

 

 

え?

 

 

唐突に聞かれて

イサは戸惑った

 

 

母上と言われ

思い出すのは か弱い姿

故郷を懐かしみ泣いている姿

そして

頭を撫でてくれる白い手

 

この国で生まれ育って

家族と幸せに

暮らしていたはずなのに

倭寇であった父に

無理やり海の向こうに

さらわれた母

二度と故郷に戻れないと知って

どんなことを思ったのだろう

 

 

イサのこと

かわいがってくれた?

 

 

うん まあ 

 

 

イサは微笑んだ

記憶を封じた過去の自分

その中で輝く母は

美しい人だった

イサには愛情をかけてくれて

高麗の言葉や話を密かに

教えてくれた人

最初にこの国の入り口を

見せてくれた人だ

 

連れ去られて

別世界に嫁いだ母は

父のことを

どう思っていたのだろう?

やはり

恨んでいたのだろうか?

それともユ先生が

ヒョンを愛したように

父を愛し幸せだったのだろうか

 

この国で生きると決めて

過去のことは

もうどうでもいいと

思っていた

 

母親の生い立ちや故郷にも

興味はなかった

だが ふと

母がどんな人だったのか

知りたいと思った

 

 

母上のことは

残念ながら

よく覚えてないんだ

だけどユ先生によく似た

優しい人だったよ

 

 

よかったぁ

 

 

よかった?

 

 

あいっ

イサがこどものころ

しあわせだったから

よかった

オンマがいいひとで

よかったぁ

 

 

ユニョンは胸のあたりを

手で撫でて笑った

本当に嬉しそうだった

 

無性に切なくて

無性に胸が締め付けられて

 

イサの瞳がうっかり

潤んだ

 

ユニョンはこんな自分の

生き様を幸せでよかったと

思ってくれるのか・・・

 

父親に認めてもらいたくて

必死になって

父親が死んでからは

家臣に認めてもらいたくて

必死になって

 

総大将だと

もてはやされて

わけもわからぬままに

戦に駆り出され

大勢の人の人生を奪った

それも

母の故郷の人たちの・・・

 

 

ケンチャナ?

 

 

小さな指が頬に触れた

ユニョンがイサの涙を

指で拭っている

 

 

ああ ケンチャナ

ありがとう

 

 

イサはその指を掴んで

微笑んだ

 

 

まだ春が遠く感じられる

寒い朝

夢のつづきが

まだ続いているような

そんな時間だった

 

 

*******

 

 

『今日よりも明日もっと』

自分のことを

一番わかってないのは

自分自身なのかもしれない

 

 

 

 

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おはようございます

お久しぶりの更新で

失礼いたします

 

というのも・・・

ようやく終わりました!!!

結構

準備に時間を取られましたが

何とか終わってホッとしました

ん?

何がホッとしたかというと・・・

 

あれです あれ

国民の春の一大行事?です

現在 準備真っ只中の皆様

お疲れ様です

無事に

サクッと終わりますように

 

 

またおつきあいくださいませ

安寧にお過ごしくださいね