朝から大忙しの女中たち
一番気合が入っていたのは
女中頭のヘジャだろう
 
 
もたもたしていたら
お客様がいらしてしまう
いくらお仲間内だからって
奥様に恥をかかせるわけには
いかないんだからね
 
 
随分と遅くなってしまった
チェ家の三つ子のペギルチャンチ
(百日の祝い)が
親しい仲間を呼んで
やっと今日
催されることになっていたのだ
チェヨンや叔母の
王宮勤めを優先すると
どうしても夕方からの宴に
なってしまうが
ヘジャはその方がありがたかった
 
この日に宴が決まってから
ヘジャは料理の仕込みや
段取りを決めて準備をして来た
嫡子タンのトルチャンチ
(1歳のお祝い)のように
盛大ではないが
三つ子の成長が無事に
百日を過ぎたことは
ヘジャにとっても喜ばしいこと
特に 奥様が大変な思いをして
産み育てて来た
末の息子のサン様が
三つ子の中では一番乗りで
小さい体を俊敏に動かし
コロコロ寝返りを打てるように
なったことは感無量だった
 
夫のソクテは
朝早く 畑に出たまま
まだ戻ってはいなかった
畑に肥料を撒き 野菜を育て
それから今日の宴のために
山に入って山菜を採ると
張り切っていた
もちろん鶏舎からご馳走のため
何羽か
運んで来ることにもなっていた
 
 
遅いねぇ
あの人はどこまで行ったんだろ?
 
 
ヘジャは薪割りや庭の手入れと
ソクテを頼りにしていることが
まだまだあって
小さくため息をついた
 
 
ヘジャさん
表のお掃除終わりました
客間にお花を飾って来ますね
 
 
ミヒャンが言った
 
 
ヘジャさん
お洗濯終わりましたよ
次は食器を磨きますか?
 
 
ユウが尋ねる
 
 
ヘジャさん
奥の片付け 終わりました
確認してください
 
 
ハヌルが言った
 
 
ヘジャさん
オクリョンさんが
おしめが足りないって・・・
新しいのどこだったっけ?
 
 
すっかり子守が板についた
クリムが聞いて来た
それらの問いかけに
ヘジャはテキパキ答えながら
ナナの帰りを待っていた
 
花嫁修業中のナナは
今日もパク家に修行に
出かけていて
今日からメドゥプ(組紐)を
習うと言っていた
パク家の奥方 つまりは
ポムの母親は手先が器用で
いろんなことに精通しているようだ
 
道理で 
一見 針仕事など
できるように見えないポム様が
刺繍や縫い物が上手なわけだと
ヘジャはクスッと笑った
 
 
どうした?ヘジャや?
 
 
クスクス一人で笑っていた
ヘジャに戻って来たソクテが
声をかける
 
 
いや なんでもないよ
それよりヨボ
遅かったねぇ
 
 
ああ すまねえ
だが ほら見てみろ
この通り大収穫だぞ
 
 
蕗やワラビやこごみや
たらの芽をどっさり籠に入れ
ソクテは胸を張った
 
 
すごいねぇ
きっと皆さん喜ばれるねぇ
何を作ろうかねぇ
 
 
ヘジャの頭が回り出す
その頃ウンスは
花を飾りに来たミヒャンを
捕まえて
ソンムル(贈り物)の準備を
していた
 
三つ子の百日にお祝いを
届けてくれた方々に
餅を振る舞う他に
医院で販売予定の化粧水と
石鹸を渡すことにしていた
どちらかというと
宣伝効果を狙ったような
気もするが
出来上がった品を
一つ一つ 綺麗な陶器の瓶に
小分けして
箱に丁寧に詰めていく作業が
意外に楽しくてつい鼻歌交じり
 
もちろん高額なお祝いは
いつものように辞退
チェ家の家風は
すでに知れ渡っているので
祝いを贈る方も
それぞれ気持ちのこもった
ささやかなソンムル(贈り物)を
届けてくれていた
 
 
タンは母親ウンスと
女中のミヒャンが
箱詰めしている横で
静かにお絵かきをしている
 
 
おんまぁ みてみて〜
 
 
あら 何かしら?
丸が三つね
これはスニョンたち?
 
 
ネ〜〜
すにょ ゆにょ しゃん
ねてるのよ〜〜
かわい〜ねぇ
 
 
四角い箱が三つ並んで
その中に丸がころんころん
三つ子はまだ遊び相手には
ならない赤ん坊だが
タンはタンで三つ子を
可愛がってくれていた
 
 
今日は三人のお祝いよ
ミョンも来るし
コハクも来るし
楽しみね〜
あとでタンもお着替えしてね
 
 
あぁ〜〜い
 
 
宴はかしこまった形式ではなく
表の門を入ったところ
新しく立て始めた医院の前に
ピョンサン(縁台)を
いくつか置いて
各自好きに料理を食べて
酒を飲んで
くつろいでもらう趣向だった
 
ピョンサンの横には
鶏の丸焼きができるように
火を起こす準備もできている
篝火の用意も抜かりなく
夜になっても庭が
暗くないように工夫を凝らした
 
ウンスは
ソンムルの準備が終わると
厨房に顔を出した
パク家から戻ったナナが
せっせと餅作りを手伝っている
 
 
悪いわね〜
疲れているだろうに
 
 
いいえ お餅作り
やっぱり好きなんです〜
 
 
ナナは笑って答えた
 
 
そお?じゃあ
ご好意に甘えようかしら?
ヘジャ
お料理の準備は?
あああ たらの芽だわ
これを酢コチュジャンにつけて
食べると美味しいのよね〜
 
 
は? す?何でしょう?
奥様のお好きなものでしたら
ヘジャにお任せください
 
 
聞き慣れない言葉に
ヘジャは一瞬
困惑した顔色を浮かべたが
すぐにそう言った
 
 
ううん いいのいいの
天界の話よ 気にしないで
それに
ヘジャの料理 美味しいもの
どんな風に出来上がるか
楽しみだわ
さてと そろそろポムや
ヨンファも来る頃ね
子供達を着替えさせなきゃ
オクリョン クリム
ミヒャン 手伝ってちょうだい
 
 
ウンスはごま油の匂いが
ぷうんと香る厨房を
後にする
 
陽が西に傾き始め
チンダルレの花が
風に揺れていた・・・
 
 
*******
 
 
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