ウンスは黙々と
ヘジャの作った海鮮粥を平らげ
アワビの煮付けも
沈菜(チムチェ)も
胃袋に収めると
湯殿で軽く汗を流して
三つ子に乳を与えた
それから
子守係のオクリョンとクリムに
後のことを頼んで
長男のタンを連れて
チェヨンに守られ
大急ぎでヨルムの屋敷に向かった
 
タンを屋敷に
置いていこうかとも思ったが
ちらりとチェヨンから
書堂(ソダン)での話を聞いて
今日は一緒にいた方がいいと
判断したのだった
 
見習い医者のイサは
養父のチェ侍医がイ家から
典医寺に行く前に
ヨルムの屋敷に着くようにと
朝からそちらに向かっていた
タンは両親とのお出かけに
すっかり喜んで鼻歌交じりに
ウンスに話しかける
 
 
おんまぁとあっぱぁと
いっしょね〜〜
 
 
そうね
でも父上はこれから
王宮へ向かうのよ
お仕事があるからね
 
 
あぁ〜〜い
 
 
タンは?
王宮へ行かないの?
 
 
タン いかな〜〜い
 
 
そっか
 
 
あのね おんまぁ
 
 
なぁに?
 
 
タン 
ひとつ ねんねしたら 
いく よ
 
 
あら そうなの?
 
 
あぃ!
おんまぁ ちょあ
おんまぁ けんちゃな?
 
 
タンはウンスにしがみついて
尋ねた
 
 
もしかして 私が心配で
今日は王宮に行けないってこと?
 
 
あぃ
 
 
タンは大きく頷いた
昨夜 
ウンスは帰りが遅かった
そして朝もなかなか
起き上がれないほどに疲れていた
そんな母親の様子を
タンなりに心配してくれたのだろう
これから屋敷を留守にする
父親の代わりに
そばにいようと
思ってくれたのかもしれない・・・
 
チェヨンは眠くなったのか
腕を組んで目を閉じたまま
じっとしていた
一晩中 三つ子の世話に
付き合ってくれて
妻を心配して
役目を放り出す夫
そして
王宮の高級な菓子より
母親と一緒にいたい息子
ウンスは二人が愛しくて
仕方なかった
 
 
ヨルムさんの様子を確認したら
寄り道しないで
すぐに帰るから
 
 
ああ そうしろ
俺は今宵は帰りが遅いぞ
 
 
うん
ヨンも無理しないでね
こっそりお昼寝してね
 
 
チェヨンはふっと笑って
ウンスに口づけた
 
 
これで元気になった
 
 
もう!
 
 
あああああああ
タンも タンも
タンも〜〜〜
 
 
タンが両手を伸ばして
ウンスに抱っこをせがむ
 
 
タンもか?
そうか
しょうがないな
 
 
チェヨンはウンスにしがみつく
タンを軽々抱き上げると
ブチュっと頬に口づけた
 
 
や〜〜よ〜〜〜
おんまぁがいい
あっぱぁ 
や〜〜よ〜〜〜
 
 
ゴシゴシ頬を拭きながら
口をへの字に曲げたタンに
チェヨンとウンスは吹き出した
 
それから
拗ねているタンとウンスは
イ家の屋敷の門の前で
チェヨンと別れ
屋敷の中へと入って行った
 
 
お チビ助も来たのか?
 
 
イサはチェ侍医に言われた通り
薬を煎じでいる最中で
ウンスとタンを見つけ声をかけた
 
 
あぁ〜〜い
おんまぁといっしょ
 
 
一緒か いいな
 
 
イサはタンの鼻先を
ちょんと指で弾いて笑った
 
 
イサ ヨルムさんに
変わりはない?
チェ先生とサラは典医寺に
行ったんでしょう?
 
 
うん 朝 交代した
特に問題はないみたいだよ
お腹を切っているから
もちろん
痛みはあるみたいだけど
痛み止めの薬も飲んでるしね
顔色が随分良くなった
 
 
そう じゃあ
脈診してくるわ
その薬 持って行くから
その間 タンを頼める?
 
 
うん いいよ
チビ助 
この屋敷にも
犬がいるんだよ
犬小屋を見に行くか?
 
 
あぁ〜〜い
タン いく
 
 
タンはいそいそと
イサと犬小屋見物
その間にウンスはヨルムの
部屋に向かった
 
 
あれ?インギュさんは?
 
 
部屋の中には
ヨルムと赤ん坊と乳母
そしてヨルム付きの女中が
いるだけだった
 
 
王宮へ向かいました
役目がありますから
 
 
あら
休むように使いを出したって
うちの人から聞いていたのに
 
 
ヨルムは微笑んで首を振った
 
 
きっと上護軍様も
遅れてくるおつもりだろうから
先に行って仕事を片付けてくると
 
 
まあ あの人の行動
すっかり読まれてるわ!
 
 
ウンスは否定することも忘れ
思わず笑った
 
 
でもよかったの?
ヨルムさんだって
心細いでしょうに・・・
 
 
いいえ 
旦那様は朝までここで
付き添ってくださいました
それで私は十分でございます
それに・・・
 
 
ん?
 
 
朝まで
二人で名を考えていて
 
 
あああ
 
 
とても楽しゅうございました
 
 
ヨルムは はにかんだ
 
 
そう よかったわ
昨日よりも顔色も全然いいし
大丈夫そうね
 
 
ウンスは脈をとって
心臓の音を聞き安心した顔で
ヨルムに尋ねた
 
 
それで息子ちゃんの名前は
決まったの?
 
 
はい・・・
旦那様の仁の一文字に
心身ともに大きく育つようにと
大の字を合わせて
仁大(インデ)
朝方 父の許しも得ましたので
インデに決めました
 
 
そう
いい名前ね インデちゃん
大きく逞しく育つのよ〜
 
 
ウンスは赤ん坊に微笑んだ
それに応えるかのように
インデは大きく伸びをして見せた
 
 
春の日差しが暖かな
のどかな昼下がりだった
 
 
*******
 
 
『今日よりも明日もっと』
願い込めた贈り物
大きくすくすく育ちますように
 
 
 
 
☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*
 
 
パク・インギュという武将は
高麗時代の実在の人物です
仁桂と書いてインギュ
 
倭寇との戦いに敗れて
亡くなるのですが
お話の設定では文官なので
戦で亡くなるという史実とは
まるきり違う人物として
捉えております
 
そして妻のヨルム(夏)
こちらは前々回の女中応募企画の時に
kacotan様からご応募いただいた名前で
それをインギュの妻の名前として
使わせていただきました
 
もちろんヨルムは
実在はしておりませんが
今回 
無事に息子が生まれましたので
 
せっかくなので・・・と
kacotan様に
お好きな漢字をお伺いし
それを組み合わせて 
インデと名付けました
kacotan様 
急な無茶振りに
快くお応えくださり
ありがとうございました・・・
素敵な名前になりました
 
インギュとインデ
仲良し親子になりますように
 
 
 
今年の本編の大きなテーマは
「繋がる」
このブログに
お付き合いいただいている皆様と
ご一緒に 
チェ家を
高麗の世界を
見守っていけたらいいなぁと
思っております・・・
 
またおつきあいくださいませ

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