降り続いた大雪が落ち着き
日差しが戻って来た昼過ぎ
 
へジャは 物思いにふけっていた
新しい女中はまだ十四の小娘で
どこまで屋敷の役に立つのか甚だ疑問
少しばかりため息が混じる・・・
 
だが身の上を知ったら
奥様はきっと放っておかない方だと
わかっていたし
姉が心を痛めていたのもわかっていた
 
 
どうした?へジャ
ため息なんぞついて?
 
 
へジャの様子に夫のソクテが
声をかけた
 
 
いや あれだよ
お子様が増えた分
女中たちの仕事も増えるだろうから
お屋敷に迷惑がかからないようにって
女中の増員を決めたんだけどね
新しい子は
大丈夫だろうかと思ってね
一から仕込まなきゃならないだろうし
 
 
そいつぁ ご苦労なことだな
だがへジャは今度もきっとよくやるさ
三人増えた時だって
なんだかんだ言いいながら
あの子達をここまで育てて来たんじゃ
ないか?
へジャが育てた女中たちを
娘のように思う時があるくらいだ
 
 
ソクテの話ぶりに
へジャは急に不安になった
 
 
娘?
ヨボや
娘が欲しかったかい?
嫁があたしじゃなきゃ
娘を抱くことだって
できたかもしれない・・・よね
 
 
おいおい どうした?
へジャらしくもない
どれだけたくさん娘がいても
へジャがいないんじゃ
話になんねぇだろ?
へジャこそ亭主が俺で
よかったのか?
 
 
当たり前だよ
ヨボ以外 誰が嫁に行くもんか
あんたがそばにいてくれて
このへジャが
どれだけうれしくて
どれだけ助かっているか
 
 
ソクテはへジャの頭を
そっと撫でた
へジャは思いがけない夫の行動に
びっくりしたような目をして
ソクテの顔を見つめている
 
 
幾つになってもお前は
俺の可愛い嫁さんだ
 
 
「幾つになっても」は余計だよ
 
 
照れて減らず口を返したが
ほんとは夫の心遣いが
とてもうれしい
 
へジャとソクテが
そんな話をしていると
裏の木戸のところから声がした
タンの愛犬フンが
見慣れぬ人影に吠えている
 
 
大丈夫だよ フン
きっと新しい女中が来たのさ
 
 
頼りけのない声で
「ごめんください へジャさん
いますか」と言った娘に
へジャは返事をした
 
 
はいはい
こっちへいらっしゃい
あんたがオンニ(姉さん)に聞いてた
クリムだね?
 
 
はい・・・よろしくお願いします
 
 
ああ こちらこそよろしく
 
 
新しい女中のクリムは
小柄な体を縮こまらせて
カチカチに固まって
頭を下げたまま顔をあげなかった
 
 
そんなに緊張しなさんな
とって食おうってわけじゃなし
 
 
ソクテが見かねて口を挟む
 
 
そうだよ クリム
あたしは屋敷の女中頭のへジャ
あんたのオンマはオンニの幼馴染
だったらあたしの
幼馴染みたいなもんさ
そんなにかしこまらなくっていいよ
それにここで働いている子たちは
みんな気持ちのいい子ばかり
すぐになれると思うよ
まあ
屋敷が大きいからここの女中は
みんな忙しい だが
忙しいけどやりがいがある
旦那様も奥様もとてもいいお方だし
お子様たちは皆可愛いし
あんたは
しばらくは洗濯当番だけど
慣れたら徐々にお屋敷の中の
仕事も覚えてもらわなくちゃね
 
 
はい・・・
 
 
やっと顔をあげたクリムは
目を大きく見開いて頷いた
 
 
ちょうど休憩にしようと
思ってたとこさ
他のみんなを紹介しようね
さ こっちへおいで
 
 
柱の陰に今にも隠れてしまいそうな
クリムに笑顔で話しかけると
女中たちを呼び集め
へジャはクリムを紹介した
 
 
みんな よろしく頼むよ
仕事は追い追い仕込むとして
ミヒャン 屋敷の中を案内しておくれ
入っていい場所と駄目な場所と
しっかり教え込むんだよ
 
 
はい へジャさん
お任せを
 
 
早速 動き出そうとした
ミヒャンを止めるとへジャは
女中たちに言った
 
 
ポム様から差し入れの
菓子があるんだ
奥様がみんなに分けるようにって
言ってくださった
それを食べてから
仕事に戻っておくれ
ユウ 
みんなに菓子と白湯を
持って来てくれるかい?
厨房においてあるからね
 
 
きゃあと
女中たちの歓声が上がった
 
 
はいはい〜へジャさん
すぐに〜
ユウにお任せを〜
 
 
まったく 
こういう時ばかりじゃなくて
普段から一生懸命働いておくれよ
そうだ ユウ
クリムを厨房に連れて行って
一緒に菓子を運んでおいで
 
 
はぁ〜〜い
行こう クリムちゃん
あたしの名前はユウ
よろしくね
 
 
は え? はい
 
 
こうして緊張の中 クリムの
チェ家の女中としての生活が
始まろうとしていた
 
 
━─━─━─━─━─
 
 
奥の間は
ウンスの娘のスニョン ユニョン
ヨンファとその娘ハナ
それからポムと息子のミョンもいて
今日も賑やかだった
ウンスはタンとともに
末っ子サンの部屋で
看護をしているようで
姿は見えなかった
 
お茶を運んで来たへジャに
ポムが話しかける
 
 
新しい女中が来たの?
 
 
はい ポム様
でもどうして?
 
 
ああ 見たことのない顔の子が
ミヒャンと庭を歩いていたからでする
でも随分 子供なような?
 
 
あら ポムだって
ついこの間まで
あれくらい
子供だったじゃない?
 
 
スニョンに乳を含ませながら
ヨンファは笑った
 
 
ひどいでする!
ヨンファさんたら!
今じゃあ
ポムはれっきとした妻であり
母でする〜
 
 
ほんと ポムが息子を
抱っこしているなんて
時の経つのは早いもんねぇ
ポムが初めて王宮に上がったのも
あんな時分じゃなかったかしら?
 
 
そうでするねぇ
ポムは十六でした
 
 
ああ ではあの娘の方が
まだ子供にございます
色々と苦労しているようで
うちで面倒をみることに・・・
 
 
そうなの?
 
 
ヨンファが聞き返した
 
 
でも このお屋敷に
奉公することになって
よかったんじゃない?
私も昔は持って生まれた定めは
どうすることも
できないんじゃないかって
子供心にそんなことを思ってたけど
でも人の一生なんて
どこでどうなるかわかんないわよ
その新しい女中さんも
良い方向に
運が開けると良いわねぇ
 
 
ヨンファはスニョンを
寝台に寝かしつけると
自分の娘を抱き上げてから
微笑んでへジャに言った
 
たとえ苦労をしていても
その苦労を愛しく思い出せる日が
いつか来るかもしれないと
ヨンファは自分の経験から
そんなことを思った
 
 
そうでするねぇ
医仙様のお側でお仕えしたら
きっと良いことありますよ
へジャ しっかり
仕込んであげてくだされ
 
 
ヨンファとポムの優しい気遣いに
へジャは大きく頷いたのだった
 
 
*******
 
 
『今日よりも明日もっと』
未来予想に想いを馳せる
どんな風景が広がっているのか
どんな暮らしを送っているのか?
でも隣には
変わらずあなたにいてほしい
 
 
 
 
☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*
 
 
그림(クリム)は韓国語で
「絵」の意味で
描くという時にも使われるようです
(多分・・・違っていたらすみませぬ)
 
新しい女中のクリムが
チェ家にどんな色を添えてくれるか
一色加わってさらに多彩になった
チェ家の女中たちをどうぞよろしく
お願いいたします〜
 
 
それにしても
寒いですね〜寒い!
風邪やインフルに罹りませんように
皆様
安寧にお過ごしくださいませ照れ
ダウン

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