やっとこの日が来た
 
 
チェヨンの口からこぼれた言葉に
そばに控えるテマンが頷く
 
 
あいつがして来た数々の悪行!
隊長の悔しさは俺が一番知ってる
あいつにどれだけ医仙様が苦しめられ
王妃様がお辛い思いをされたか
あいつもうんと苦しめばいいんだ
 
 
今は上護軍として役目をこなす
主人の心をテマンは密かに
おもんばかった
 
強行軍でたどり着いた国境の
大陸寄りのこの地は
周辺に人蔘の産地もあり
自然に恵まれた村が点在している

ウンスも
百年前にこの辺りの地で
沙羅や光守に
守られながら暮らしたはず
ウンスがかつていた場所かと
チェヨンは思いを巡らせた
だが
感傷にふけっている暇はない
 
敵との距離は見る見る縮まり
普請途中の城壁の外側で
待機していた高麗軍のもとへ
元軍一万が
あっという間に
波を打って押し寄せて来ていた
 
手筈通りに四方に散り
護りを固めた高麗の軍
 
アリの這い出る隙間すら
ないくらいに
城壁の前に幾重にも重なる
兵士の盾が国を護る
元軍は足を止めざるを得なかった
 
チェヨンの左には
アン・ジェ率いる鷹揚軍が
ずらりと並び
敵に睨みを利かせている
すっと
右に移動した
トクマンとイ・ソンゲもまた
一歩も引かない構えだ

対する元軍は
いかつい猛者達が馬に跨り
手にした刀を高麗軍に向けて
振り下ろす
 

力任せか 
相手の作戦が正面突破ならば
こちらも正面突破あるのみ!
 
 
チェヨンはギロリと
辺りを見渡した
 
 
お前たち
元の兵士に問う
この戦いに信義はあるのか
お前たちは
なんのために戦うのだ
お前たちの陰に隠れ
その姿を現そうともしない奴のために
命を投げ出すつもりか?
 
 
チェヨンの声に
一瞬
静かになった戦場だったが
「皇帝陛下に忠誠を!奇皇后万歳!」
掛け声とともに
元軍の攻撃は開始されてしまった
 

仕方あるまい
お前たちにはなんの恨みのないが
歯向かうものは斬り捨てる
俺は一刻も早く都に戻らねば
ならぬのだ
これより先
元軍を一歩も通さぬ
 
 
チェヨンは苦々しく言い放ち
己の分身でもある鬼剣を
鞘から引き抜いて
手のひらでぎゅっと握った

みなぎるチェヨンの気が
まるで刃に乗り移ったように
ガタガタと音を立て
鬼剣から青い稲妻がほとばしる
 
馬を自在に操る騎馬民族
元軍と言えども
チェヨンの迫力に気圧されて
足がすくんで前に進めない
 
 
い 行くぞ
我らは誇り高き騎馬戦士
必ずや
チェヨンを倒すのだ
奴を倒せば褒美は思いのままぞ
奇皇后もお喜びになる!
 
 
軍を指揮する大将の檄に
勢いづいて元の兵士たちも
雄叫びをあげた
 
 
おおーーーーっ!!!
 
 
前方に構える元軍が
駆け出したのを見定めて
チェヨンはインギュに向かって
合図の手を挙げた
インギュは頷き
銅鑼を叩いて兵士に合図する

「作戦実行!!」
すると
震天雷を構えた一団が
一斉に前に出て
震天雷を振り上げる

遠くへ遠くへ 
徳興君の輿を守る
後方の元の兵士めがけ
 
ドドーーン
ドドーーン
ドドーーン
 
思い切り投げ込んだ

爆音が轟く
その無数の玉の後を追い
鬼剣から放たれた

チェヨンの雷功が天空で炸裂し
雷がどっかーんと地面に落ち
元軍はじりじりと
退却を余儀なくされた

インギュは策が命中し
退行する敵にほくそ笑み
チェヨンの背中を見つめ語りかけた
 
 
騎馬軍団の騎馬が命取りとは
まこと良い策
さすがは チェヨン
 

前方の兵士が駆け出して
隙間が空いた中央部分に
突然投げ込まれた震天雷の爆音

驚いた元軍の馬たちは
右往左往と逃げ出すように駆け出して
馬上の兵士たちを振り落としていた

騎馬戦を得意とする敵の習性を
逆手に取った
チェヨンの秘策が功を奏する
 
それからチェヨンは
幾ばくか年老いた
愛馬チュホンをねぎらうように
たてがみを撫で
チュホンをテマンに託すと
自ら
元軍の中へ斬り込んで行った
 
 
上護軍に続け
遅れをとるな
我が国の王は現王のみ
謀反人
ワン・へに生きて高麗の土を
踏ませるな!
 
 
イ・ソンゲが大声を張り上げる
 
 
ナナ 見てろよ
都で待ってるお前のために
手柄をあげるからな
行くぞ ウダルチ!
遅れをとるな!!!
 
 
トクマンたち
最強の戦士ウダルチも
麒麟の文様の甲冑を
ガシャガシャ言わせながら 
イ・ソンゲに続く
 
 
よいか 
逃げる奴らを深追いするな
我らの狙いはワン・へ
唯一人!!
 
 
チェヨンは敵の兵士を
ひらりとかわし
長い足で蹴散らしながら
歯向かうものを鬼剣で
ばさりばさりと
倒し続けた
チェヨンと手合わせする間も無く
敵の兵士は次々とやられる
 
武士の温情
せめてもの情け
苦しまぬように
それだけ念じて
チェヨンは鬼剣を振り下ろし続けた
 
逃げ惑う元軍
一人また一人と敵は散る
 
 
此処に信義などない
あるのは身勝手な強欲だけ
そんな奴のために
まだ戦うというのか?
命惜しくば此処を去れ
 
 
チェヨンの言葉が
こだました
しんと静まり返った戦場から
元の兵士が消えていく
 
 
*******
 
 
『今日よりも明日もっと』
戦わずして勝つために
まずは相手を知ることが肝心
争いや諍いは虚しさが残る
人生も然り
 
 
 
☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*
 
 
シンイの醍醐味の一つに
チェ・ヨンの殺陣がありました
もうもうもう!
こんなに美しい殺陣は
今まで見たことがございませぬ
これでシンイにすっかり堕ちたラブ

足の長さのおかげか?
キレッキレで美しく
それでいて気高い殺陣
 
それを描写で再現したいのですが
力不足・・・!(´Д`;)
どうにも戦のシーンや
殺陣のシーンを上手には描けませぬ
(・・;)
でも
思いだけは伝わりますように
 
 
 
一口メモ
 
震天雷   しんてんらい
日本では「てつはう」の
呼称の方が耳に馴染みがありますが

鉄玉や陶器玉の中に火薬や鉄片が
仕込んである20センチ弱の破裂弾
(手榴弾のようなもの)
元寇で使われて有名に・・・
歴史の教科書にも載ってますね〜
 
「雷」の文字が入ってる〜と
今回の武器に即採用!!
もともとは元軍の武具(^▽^;)
しかも
手投げのため あまり遠くに
飛ばない武器のような気もしますが
ハンマー投げや槍投げの達人?が
高麗軍には数多くいたってことで⁈

史実とは異なる点も多々
色々と
ご容赦くださいませ(。-人-。)
 
 
カムサハムニダ〜

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