チェ家が島に住むスヨンからの
贈り物に湧いていた頃
チェヨンたち義勇軍はちょうど
天に通じる石門近くを通っていた
 
 
上護軍
寄らなくていいんですか?
 
 
前回 
城壁普請の折には立ち寄ったことを
覚えていたテマンは
小声でチェヨンに確認をする
あの場所は上護軍にとって
特別な場所
テマンはチェヨンならば
決戦を前に出向くと思っていたのだ
 
 
いや 今はやめておこう
今 あの場所に俺の心はない
俺の心はウンスのそばに
置いて来たゆえ
案ずるな
 
 
はい・・・
 
 
チェヨンには
まだ見えぬ敵がひしひしと
迫って来ているのがわかった
だが不思議と怖くはなかった
負ける気がしなかった
 
 
早くカタをつけて
都へ帰るぞ
 
 
はっ 上護軍!
 
 
テマンは勢いよく答え
空を見上げた
辺りに何もない空は悠々と広がり
北風が頬に冷たく当たる

都にいるジュヒを思った
ジュヒは強い女人だから
男に頼って生きて行くつもりは
この先もきっとないだろう
今でもトルベを想い
コハクを育てることに精一杯で
恋にうつつを抜かすようなことは
ないようにさえ思えた
 
 
俺がいなくなったところで
彼女は何も困らない
だけど
俺は彼女の姿が見えないだけで
こんなに毎日苦しい
彼女も俺がいない毎日を
少しは寂しく思ってくれてるかな?
 
 
テマンは少し前をゆく
チェヨンの背中を見つめた
その背中は限りなく広く
そして強い
いろんなものを背負って
受け止めているチェヨン
その後ろをついて歩けるだけで
幸せだった
何の悩みもなかった
あの頃が懐かしく思えた
 
今のテマンは残念ながら
チェヨンがすべてではない 
愛しい人を守れる強い男でありたい
その恋がたとえ
報われなくても添い遂げられなくても・・・
その思いは強くなる一方で
そしてチェヨンはそんなテマンの思いに
気づき見守ってくれている

もっと成長するように
ジュヒに認められる大人の男になれと
チェヨンの背中が
語っているようにテマンには思えた
 
この戦を機に
テマンはチェヨンの私兵を
やめる
すでに甲冑は麒麟の文様を着用し
トクマンの隣に並んで馬で
行進しているテマンはどこから見ても
優秀なウダルチだ
 
 
俺 上護軍の期待に
応えられるように頑張ります
 
 
不意にポツンと言ったテマンの声に
チェヨンが振り返って微笑んだ
 
 
そうか
期待してるぞ
だが 命は大切にしろ
無駄死にだけは許さんぞ
 
 
はい!
 
 
テマンは大きく頷く
そこへ
国境に放っていた密偵が
パク・インギュのもとへ戻り
元軍の様子を伝えた
 
 
上護軍
奴らもすでに国境の十里手前まで
来ている模様
 
 
チェヨンは呟く
 
 
決戦は近い
 
 
━─━─━─━─━─
 
 
チェ家の朝は
島にいるスヨンから
届いた贈り物で
歓声に包まれていた
 
 
初めて手にいたしました
 
 
冷静なへジャでさえ
手の中にある宝石のように
輝いている贈り物を見て
声が上ずる始末
 
 
そっか・・・
この時代 
高麗ではまだ珍しいのよね
 
 
タンは早速 口に運んで
うきゃうきゃと声をあげた
 
 
おんまぁ
うまうま〜〜
しゅっごく うまうま
ネ〜〜
 
 
あっという間に一つ食べ終わり
盛られた籠にまた手を伸ばした
 
 
風邪予防にもなるし助かるわ
皮を干しておけば生薬にもなるのよ
へジャ 皮も捨てないように
気をつけてね
 
 
はい へジャにお任せを
 
 
ウンスは頷き
スヨンの文に目を通した
達筆で読めない部分の方が多く
普段ならば代わりに読んでと
チェヨンに頼むところだが
チェヨンはそばにいない
 
 
イサ この文
読んでくれる?
どうも未だに漢字は苦手なのよ
 
 
イサも元々は倭国で育ったが
高麗で暮らすに困らぬだけの
読み書きはできるようになっていた
 
 
あ うん
じゃあ 読み上げるよ
 
 
イサはスラスラと読み始めた
スヨンの文は挨拶から始まって
島の暮らしぶりが書かれていた
彼女は手がけた真珠細工の商いに成功し
島で一番の商人になっていた
義理の娘もコハクくらいの歳になり
元気な様子
夫は孤児たちのための施設運営の
責任者になっていたが
スヨンの商いの足しになればと
畑を買って果物の栽培を始めていて
それが収穫の時期を迎えたので
医仙様にもお届けしますと結ばれていた
 
 
キュル(귤 蜜柑)の香り
冬の香りね・・・
 
 
ウンスも一粒口に運んで
その甘さを噛み締めて言った
 
 
王宮にも献上したみたいだけど
典医寺まで回ってくるかどうか
イサ 典医寺のみんなにも
持って行ってあげてちょうだい
それで皮は
 
 
捨てないようにだろ?
父上から陳皮のこと教わったことが
あるから大丈夫さ
消化不良とか咳にも効くんだろ?
キョルかぁ
懐かしいな
わこ・・・く
 
 
うっかり倭国のことを
言いかけてイサは口を押さえた
ウンスが大げさにイサの
声を阻んでごまかすように言う
 
 
まあ!! 
さすがチェ先生が師匠ね
よく知ってること
 
 
ウンスは微笑んでイサに
片目をつぶって合図した
タンはすでに
三つ目に手を伸ばしている
 
 
タン あんまり食べると
鼻の頭が黄色くなるわよ
ほどほどにね
 
 
ん?とタンがウンスを見つめ
鼻の頭をぽりぽり触った
 
 
へジャ あちこち
おすそ分けしてあげて
ポムのとこやヨンファのとこ
ジュヒのとこにも
それに屋敷のみんなにも
 
 
やったぁ うれしいでする
旦那様やミョンにも食べさせたいと
思っていたでする〜〜
 
 
ポムはタンと変わらぬ勢いで
キュル(蜜柑)を口に運びながら
ニコニコと答え
へジャは気前のいい主人に
確認するように尋ねた
 
 
よろしいのですか?
このような貴重で高価なキョルを
女中にまで配って
 
 
女中のユウやハヌルや
ミヒャンが小躍りする様子が
へジャの目に浮かんだ
 
 
もちろんよ
みんなで食べた方が美味しいし
いつもチェ家のために
頑張ってくれている家族じゃない
さあ へジャも遠慮せずに食べてね
 
 
どうじょ じゃじゃ
きゅる   よ〜
 
 
タンがとことこへジャに近づいて
キュル(蜜柑)を手渡す
へジャはごくんと唾を飲み込んで
それから大事そうに
手のひらで包んだ
 
 
ありがとうございます   若様
では
あとで皆と一緒にいただきます
ありがとうございます 奥様
 
 
そお?
じゃあ そうして
おすそ分けもよろしくね
 
 
はい へジャにお任せを
 
 
これからお子が生まれ
屋敷の仕事はますます忙しくなる
女中を増やすことをそろそろ
考えなくてはと思っていたが
高価なキュルを惜しみなく与える
女主人の評判で
ますます
女中志願が増えるんじゃないかと
へジャは
口元をふふっと緩ませた
 
 
*******
 
 
『今日よりも明日もっと』
蜜柑の香りに冬を思う
懐かしく甘酸っぱい
家族の香り
 
 
 
 
☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*
 
 
昨日はいい夫婦の日でしたね〜
ヨンとウンスは本当に
いい夫婦だなぁと
思っております(///∇//)
 
そしてスヨンの贈り物は
蜜柑でした
蜜柑で風邪予防〜☆-( ^-゚)v



一口メモ
日本の一里とは違い
韓国の一里は約400メートル
徳は4キロ先まで迫って来ました
対峙するのはもうすぐですね

 
皆様
安寧にお過ごしくださいね
またおつきあいくださいませ

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