夜空を見上げた
流れ星が山の端に落ちる
出陣前夜の閨の窓からも
流れ星を見たが
あの夜はウンスが隣にいた
今宵は見渡す限り兵士ばかりだ
 
一万人で出立した義勇軍は
途中の村々で自然に民が加わり
最初の倍に膨れ上がっていた
 
民を戦の場に駆り出すことに
始めは難色を示したチェヨンだが
軍師だと自称するパク・インギュが
高麗の民の意気を元に示すには
またとない機会だと進言し
渋々了承したため
数はどんどん膨れ上がった
 
 
民は後方支援に回せ
前に出してはならぬ
武士も民も誰一人欠けることは
許さぬ
逃げても構わぬ
ここで死ぬることのないように
心せよ
 
 
チェヨンはかつて
仲間を死なせてしまった
無念を忘れることはなかった
だから
敵に立ち向かえではなく
無駄な争いは避け
逃げよと説いた
 
行く先々の村から
食糧の提供も多くあった
豊かな村ばかりではなかろうに
かつて元に踏みにじられた恨みを
骨身に刻んだ民たちの
現王に対する信頼と
義勇軍に対する期待の
表れだろうか
チェヨンの肩に民の思いが
ズシリとのしかかる
決して負けない戦
 
 
上護軍
今宵はこの辺りで野営ですね
 
 
ウダルチのプジャン(副隊長)
トクマンが
空を見上げているチェヨンに
伺いを立てた
昔 王様を元から高麗に
お連れする時もこんな風に
雨の降る空をよく見上げていたと
青いマント姿のチェヨンを
トクマンは思い出していた
 
あの頃も 強くてたくましくて
部下思いの隊長だったが
今ほど生き方が真摯ではなくて
どこかいい加減さがにじんでいた
が・・・
守るべき人ができると
こんなにも人は変わるのだと
トクマンは
脳裏にナナを思い浮かべていた
 
 
そうだな
今日一日で随分と北上した
今宵はここに陣幕を張るとする
 
 
チェヨンの一言で
慌ただしく隊が動き出し
あっという間に仕切りの陣幕が
出来上がり
アン・ジェ将軍やトクマンや
各隊の長が一番大きな陣幕に集まった
 
都を出てすでに幾日も経ち
戦に向けて気分は高揚している
高ぶる気持ちを収めるために
武将たちは毎夜 盃を交わした
 
チェヨンはその輪には入らずに
陣幕の片隅に椅子を並べると
周りの喧騒など気にもとめず
まるで策を練るかのように
腕を組んで目を閉じていた
 
 
チェヨン
たまにはどうだ?
 
 
アン・ジェがそばに寄り
酒瓶と盃をチェヨンに渡した
 
 
いや 今宵はやめておく
酒を飲むと気が乱れる
勝ち戦のその折は
存分に飲むから付き合えよ
 
 
そうか?
それにしてもお前
いつからそんなに堅物になったんだ?
まるでチュンソクみたいだぞ
 
 
アン・ジェのからかいに苦笑して
チェヨンは再び目を閉じた
 
 
イムジャ 
今宵も流れ星が見えるぞ
屋敷の窓からも見えているか?
 
 
━─━─━─━─━─
 
 
あ 流れ星だわ
うっわ〜
綺麗ね タン
 
 
ネ〜〜 おんまぁ
 
 
ヨンも見ているかしら?
お願い事をしなくちゃね〜
 
 
ウンスの声がどこか
寂しげに響いた
チェヨンを想うと
腹の底がきゅんとして
お腹の子供らがどんどんと
暴れ出す
 
 
いたたっ
 
 
おんまぁ けんちゃな?
 
 
タンはしかめっ面のウンスの
顔を覗き込んで尋ねた
 
 
大丈夫よ タン
きっと
お腹の赤ん坊も父上が恋しいのよ
 
 
開け放った窓から冷気が入り込む
廊下の向こう側から
ウンスを気遣うイサの姿が見えた
 
 
医仙様 大丈夫?
なんだか痛そうな声が聞こえたけど?
 
 
ごめんね 心配かけて
イサは もう勉強が終わったの?
 
 
ああ
今日は典医寺で
父上にも色々教えてもらって来たから
それをまとめてたんだ
一区切りついたとこ
 
 
そっか
イサは勉強家ね
 
 
ウンスは感心したように言った
 
 
早く医者の免状をとって
医仙様や父上の役に立ちたいからね
 
 
イサはにっと笑う
 
 
ちび・・・じゃなくて
若様
腹出して寝るなよ
冷えるからな
 
 
チェヨンと入れ違いに
屋敷にやって来たイサは
ここの暮らしにも慣れたようで
ウンスやタンとも程よい距離を
保ちながら
うまくやってくれていた
 
 
イサもよ
体調を崩しやすい時期だから
遅くまで起きてないで
早く寝なさい
 
 
いしゃ も 
ネ〜〜
 
 
ああ わかったよ
 
 
ウンスの小言めいた言い方が
イサは母親に言われているみたいで
なんだかうれしかった
 
 
うん じゃあ
何かあったら声かけてよ
医仙様
 
 
ありがとう
大丈夫よ
 
 
昼間は典医寺で修行をし
夜はウンスたちの警護で気を抜く
暇もないイサを案じて
ウンスは微笑んで見せた
イサは頷き
自分の部屋の扉をゆっくり
閉めた
 
 
タン
私たちも寝ましょうか
父上ももう
寝ているかしらね?
 
 
あっぱぁ ねんね
ちゅほんも ネ〜〜
 
 
そうね チュホンも
毎日頑張ってくれているもの
きっと今頃は疲れて寝てるわ
さてと
父上のところまで届きますように
今夜もやろうか
 
 
あぁ〜〜い
 
 
チェヨンがいなくなってから
毎晩行うウンスとタンの儀式
 
 
手を合わせて・・・
 
 
ウンスは胸の前で
手のひらを合わせた
 
 
あわしぇてぇ
 
 
タンが真似をする
 
 
どうか無事でいて
ヨン 愛してるわ
 
 
あっぱぁ 
ちょあ よ〜〜
 
 
空に向かって語りかけると
二人は寝台に潜り込んだ
チェヨンの匂いがまだ残る布団
ウンスはチェヨンに
包まれている錯覚を覚える
 
閨の扉の前には番犬のフン
廊下の向こうにはイサ
そして時々見回りに来ている
ソクテとへジャ
ウンスの手を握りしめて眠るタン
 
皆の気遣いを感じながら
妊婦のウンスは今宵も
静かな夜を迎えた
 
 
*******
 
 
『今日よりも明日もっと』
たとえ離れていても
あなたを想い
あなたを感じる
心はずっと繋がっているもの
 
 
 
 
 
☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*
 
 
今宵はリアルな天体ショー
おうし座 北流星群とか
流れ星が見られるかも!
ヨンの無事を星に願いましょうか


さて
新章がスタートいたしました
タイトルは珍しく
風物詩でも季節にも関係ない
「真心の誓い」
 
チェヨンが出立の折に
ウンスに預けていくと言った
真心・・・
大切な人を守るため
過去にけじめをつけるため
信義を貫くチェヨンを
お届けできたらいいなと思います
 
お話を書き始めて
ヨン年目に突入しておりますが
戦の描写が苦手なのもあって
なんとなく
徳興君との決着を引き延ばして
参りました

しかし
ウンスの出産を目前に
憂いを断ちたい!
カタをつける時が来た!と
やっと
重い腰が上がった気分です
( ̄_ ̄ i)
 
 
お付き合い頂けると
うれしいです  (。-人-。)
 
 
 
カムサハムニダ〜

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