きゃっ
 
 
どうした ウンスや
 
 
うん 今 誰か車を
覗いてなかった?
 
 
この夜中に?覗きか?
まさかあいつ!
近くに越して来た
チェ・スジョンか?
ウンスに会いに夜中に来たのか!
何てやつだ
 
 
ううん 違うわよ
もっとおじいさんだった
で えっと
なんだか
見慣れない服を着ていたよ
 
 
ちょっとの間も
離れていたくないのに
釜山の学会に行っていたチェヨンは
数日会えないだけで
会いたくて仕方なくて
そんな話には 耳を貸さずに
ウンスの頬に手を添えて
自分の方に向けた
 
 
ウンスや
他の男のことなんか見るな
それが爺さんだろうと
誰だろうと我慢できない
俺だけ見てろよ
ウンスに会いたくて
車を飛ばして
やっと会えたんだから
 
 
うん・・・私も会いたかった
学会 
一緒に行けばよかったなって
ずっと思ってた
 
 
ああ 俺も・・・だ
 
 
あっ
ヨン・・・
ダメだって・・・
 
 
甘い吐息が混ざり
息ができなくなる瞬間が
狂おしいほど愛しくて
貪るように二人は何度も
唇を合わせる
 
大学三年の夏
ユ・ノンジャン(農場)の
沿道に止めた車の中で
互いを確かめ合った夜
 
 
━─━─━─━─━─
 
 
ソン・ユは高麗の国境近くで
石門をくぐり
青い光に体を沈め
気がつくと 
寺の石仏の足元にいた
 
辺りはすっかり暗いはず・・・
なのに
昼間以上にキラキラと光りが
溢れていた
 
突然現れたおかしな格好をした
おかしなアジョシ(おじさん)を
人々は不思議そうに見ている
 
なんのコスプレ?
ハロウィンには早いよな
ああ 時代劇の撮影か?
 
あり得ない光景を見た人は
それぞれ自分勝手に
納得のいく理屈をつけて
通り過ぎて行く
 
ソン・ユは
自分の姿が天人たちとは
随分違っていることに
すぐに気がついた
どうしたものかと考えていると
寺の和尚らしき人物が
目の前に立って自分を見ている
 
 
どうされたのです
 
 
少し面食らいながら和尚が尋ねる
 
 
ここへ行きたいのだが
 
 
ソン・ユはウンスから預かった
紙切れを見せた
墨で無理やりしたためたハングル文字
ウンスの実家の農場の住所だ
ソン・ユが
よほど思いつめたような顔に
見えたのだろう
和尚は詳細を聞かずに頷いた
 
 
ちょうどそちらの方面へ
向かう車があります
乗って行かれますか?
 
 
ソン・ユは和尚の申し出を
ありがたく受けると
見たこともない形の
馬が引かない輿に乗り込み
ウンスの実家を目指した

 
そして夜も更けて


住所の近くで降ろされたソン・ユは
月の光に照らされた
「ユ・ノンジャン」の看板を見つけた
 
農場の脇には赤い輿
いや天界ではクルマと言うらしい
乗り物が止まっていた
ソン・ユは近づき 
そして    ぎょっとした
 
一瞬
目があった女人は
ユ・ウンスその人だった
あの気の強そうな目は
決して見間違うはずはない 
確かに医仙とチェヨンだ

だが
どちらも高麗であった二人より
はるかに若い・・・


ソン・ユは
物陰に身を潜め考えた

 
ユ・ウンスは不思議なことを
高麗のチェ家の屋敷で
言っていた

たとえ石門をくぐったとしても
その先が自分のいた天界に
通じているとは限らない

時の川はいくつも流れ
誰かの強い思いによって
その川たちが 
たまたま交差するとき
時空が開かれるのだろう
 
高祖父の書がなければ
ウンスの話にも
そして今の状況にも
混乱していたことだろうが
だが幸い
ソン・ユには理解することができた


ここは医仙が暮らしていた天界とは
異なる天界なのだ・・・と
 
 
━─━─━─━─━─
 
 
翌日の早朝 
ソン・ユはソウルの奉恩寺の
石仏の足元に再び戻って来ていた
 
昨夜 
来た道を歩いて戻りながら
どうするべきか思案していると
大きな屋敷に出くわした

もちろん元でも高麗でも
見たことのないような
石を積み上げたような変わった建物
その庭先で夜空に流れる星を
見上げていた綺麗な女人が
ソン・ユに気付いた
 
道に迷ったこと
どうしても会いたい人たちが
いることを告げると
警戒する夫に頼み込み
ソウルまで送ってくれたのだ
二人は
沙羅と光守(グァンス)と名乗った
 
 
どうしてかわからないけど
ソン・ユさんを
このままにしておけないって
気がするのです
会いたい人に
無事に会えるといいですね
 
 
沙羅と名乗ったその美しい女人は
呆れる夫をなだめ
見ず知らずのソン・ユに
新しい服と少しのお金まで渡して
微笑んで答えた
 
 
そうして奉恩寺の石仏の下
わずかに青い光を放ち
今にも消え入りそうな渦の中に
ソン・ユはふたたび消えた・・・
 
 
青い光が眩しいのか
朝日が眩しいのかわからないくらい
陽の光が溢れていた・・・
ソン・ユはくぐったはずの
石仏の足元に
また戻って来ていた
思いが足りないと言うことかと
がっくりと肩を落とす・・・
 
 
大丈夫ですか?
 
 
石仏に祈りを捧げていた
初老の夫婦が
顔色が悪いソン・ユを見て
心配そうに尋ねた
 
 
道がわからないのだ
 
 
ソン・ユは答える
 
 
それはお困りでしょう
どちらへ行かれるのです?
 
 
どこへ行ったらいいのか
わからない
 
 
ソン・ユの返事に夫婦は
困ったように顔を見合わせた
ソン・ユはウンスに預かった紙を
差し出す
 
 
手がかりがこれだけゆえ
 
 
ユ・ノンジャン?
なぜここに?
 
 
会いたい人たちがいるのだ
渡したいものがあるゆえ
 
 
渡したいもの?
 
 
ユ・ウンスからの預かり物
大切な品を
 
 
ユ・ウンス!
ウンスから?
本当にウンスなの?
どうして
どうしてウンスを知っているのです?
 
 
何かのいたずらかも知れない
落ち着くんだ
 
 
だってあなた
この筆跡はウンスよ
あの子の字を忘れるはずないわ
 
 
母親らしきその女人は
ソン・ユに言った
 
 
どこのどなた様か存じませんが
ウンスのお知り合いで?
あの子がいなくなって
もう随分経つのです
あの子は今どこにいるのです?
幸せに暮らしていますか?
 
 
俄かには
信じられぬことでしょうが
これをご覧あれ
 
 
ソン・ユは二人の目の前に
絵を広げた
 
 
こ これはっ?
 
 
お腹の大きなウンスの両隣に
凛々しい武将と可愛い男の子が
描かれた家族の絵
真ん中のウンスは幸せそうに
微笑んでいる
 
 
これがウンス?
ウンスや
ウンスや
 
 
母親は描かれたウンスの輪郭を
指でなぞりながら泣き崩れた
 
 
ありがとうございます
ぜひ話を聞かせてください
ウンスとどんな関係なのか
なぜ私たちのところへ
あの子は戻ってこないのか
この子は孫?ですよね
名前はなんといいますか?
夫は誰なんでしょう
聞きたいことが山ほどあるのです
 
 
父親は頭を下げて
ソン・ユに尋ねたが
ソン・ユは首を静かに振った
 
 
すみませぬ
正直なところ
ご息女のことはよく知らぬのです
ただ    この絵のように
夫と子供に恵まれ
たいそう幸せに暮らしておるようです


ソン・ユは
高麗で出会ったウンスを思い出し 
目を細めてそう告げ
ウンスが書いた短い文を渡した


戻らなくてごめん
心配かけてごめん
私は今
すごく幸せよ   ウンス

 
*******
 
 
『今日よりも明日もっと』
一生懸命生きてれば
時には信じられないような
夢みたいなことが
あってもいいと思う
 
 
 
 
☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*
 
 
『パムナム(栗の木)』を
お届けいたしました
今回はタンの誕生会もありました
皆様
お読みいただき
ありがとうございました

 
ソン・ユも無事ミッション完了
時空を超えて最後は
不思議ワールドになりましたが
この後 彼は?さて?
そんなことも織り交ぜ
新章で戦の模様など
お届けできたらいいなと思っております
戦のカタが着くまで本編続行予定

 
赤月隊ヨンの活躍「ひみ恋」も
お待ちいただけるとうれしいです
 


またおつきあいくださいませ

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