何よ じっと見ちゃって
顔になんかついてるわけ?
私のことなんか
構わなくていいわよ
 
 
少しとんがったウンスの唇から
こぼれる言葉も
少しばかりとんがっていて
困り顔のチェヨンは
小さくため息をついた
 
チェヨンとタンが
大妃様や公主様と一緒に
お船のお遊び場で遊んだことは
すぐに王宮中に知れ渡り
隠し立てするよりはと
武閣氏のジュヒから
若い母親たちやお付きの女中たちまで
取りこぼすことなく
「さすが上護軍 大変な人気で
ございました」と
ウンスは報告を受けていた
 
夫がモテるのは嫌な気はしない
褒められるのもうれしい
だが どうにもモヤモヤする
 
王宮の務めを終えて
三人で屋敷に戻り
ヘジャ特製
カジナムル(茄子のナムル)や
焼き魚    沈菜(チムチェ)
そして
タンの好きなチャメ(瓜)が
並ぶ卓を囲んだ夕餉時も
ウンスはいささか
ご機嫌斜めのままだった
 
 
敵わぬな タン
母上は機嫌が悪いぞ
 
 
けんちゃな?
おんまぁ?
 
 
タンはウンスの顔を覗き込む
ように尋ねた
 
 
ええ 大丈夫よ
父上はと〜〜〜〜っても
ブランコ遊びが楽しかったみたい
よかったわね〜タン
 
 
あぁ〜〜い
たか〜〜〜い
よ〜〜〜
びゅ〜〜ん よ〜〜
 
 
夫に対するウンスの皮肉に
気づくわけもなく
タンはブランコ遊びのことを
聞かれたのだと思い
手をびゅーんと振り回し
身振り手振りを交えて
せっせとウンスに話して聞かせた
 
 
そお ビューーンって?
え?
タン 立って乗ったの?
 
 
あぁ〜〜い
 
 
すごいわね
私も見たかったなぁ
 
 
ウンスはお腹をさすりながら
ぽつんと言った
多胎妊娠だと確定した途端
お腹が前にも増して重く感じた
悪阻はなかったはずなのに
どこか気分が優れず
些細なことが気にかかる
自分がタンに付いて行くべきところを
夫チェヨンが身重の妻を案じて
タンを遊び場に連れて行ったことくらい
頭の中ではちゃんと理解できているのに
なのに・・・心が素直になれない
 
 
今度見せてやろう
な?タン
 
 
あぁ〜〜い
 
 
いいわね
男同士で話が弾んで
あ〜〜しばらく
ブランコは無理だなぁ
双子はうれしいけど
大変さも2倍よね
大丈夫かな?
 
 
ため息交じりのウンスに
タンは箸で刺したカジナムルを
差し出した
 
 
どうじょ
おんまぁ
いっぱ〜い うまうま
よ〜〜
 
 
ほら
イムジャ
タンが心配しておるぞ
それに遊び場に誰がいたかなど
本当に目に入っておらぬのだ
俺もタンも ユ・ウンス一筋
だからな
な?タン?
 
 
タンはコクコク
首を振って頷いた
 
 
おんまぁ りんき ネ〜〜
いいこ いいこ よ〜〜
 
 
ウンスの隣に座るタンは
ナムルを掴んで
ぎとぎとの手のひらで
ウンスの頭を撫でた
 
 
あらまあ
奥様
御髪が・・・
 
 
ナムルの油がついて
髪が汚れたウンスを見て
へジャが慌てて手ぬぐいを渡す
その様子を口をへの字に曲げて
泣きそうな顔で見ているタンを
ウンスはぎゅっと抱きしめると
微笑んで言った
 
 
ありがとう タン
なんだか元気が出たわ
たくさん食べなくちゃ
ハナとトルのためにもね
 
 
なんだか
気持ちがカリカリしていて
夕餉に手をつけていないことを
タンは見ていたのだと
ウンスは気づいた
 

そうね
よし 食べよう!
 
 
あぁ〜〜い
 
 
笑顔になった母親に
うれしそうに返すタン
それをほっとした面持ちで
見つめたチェヨンは
黙々と魚の身をほぐし始めた
 
 
イムジャ
食え
タン ほら口を開けろ
 
 
二人揃って口を開け
チェヨンの箸から
おかずを受け取る二人を
代わる代わる見ながら
この先
ここにあと何人増えるだろうか?
と チェヨンはそんな幸せを考えた
 
 
イムジャ・・・
 
 
なぁに?
 
 
俺はイムジャしか
目に映らぬ
今までもこれからも
それは変わらぬぞ


夫の突然の告白は
ウンスを幸せな気持ちに変えた
 
 
なに?
改まって?
うふふ
もう悋気してないわ
タンに言われちゃうもの
それに
ヨンが私に夢中なことくらい
知ってるわよ
 
 
そうか?
 
 
うん
だって私もヨンのこと
 
 
むちゅ〜〜〜〜
 
 
タンはウンスの口真似をしながら
ウンスの頬に口づけた
 
 
おい こら
タン
母上への口づけは俺が先だろ?
悋気よ〜〜だぞ
 
 
タンがきゃっきゃと笑って
もう一度
今度はウンスの唇に口づけた
 
 
こら!!!
タン
母上の唇は俺のものだ
 
 
や〜〜よ〜〜
たんのおんまぁ
よ〜〜
 
 
後ろでへジャの肩が震えだし
仕舞いには耐えきれずに
ウンスとともに笑い出した
 
 
まったく うちの男たちは
しょうがないんだから
ご飯が終わったらお風呂タイムよ
三人で入ろうね
 
 
あぁ〜〜い
 
 
俺は二人がいい


ぷいと膨れたチェヨンに
タンが言い返す
 
 
や〜〜よ〜〜〜
たんも〜〜
りんき よ〜〜 よん
 
 
ウンスの悋気の虫はいつのまにか
すっかりいなくなり
とんがっていた口元から
明るい笑い声が奥の間に広がった
 
 
━─━─━─━─━─
 
 
寝たか?
 
 
湯浴みから戻り
ウンスのお乳を触っていたタンは
ぐっすり寝入った
それを確かめる
いつものチェヨンの言葉
 
 
うん
寝たみたいよ
 

疲れたか?イムジャ 
今宵は・・・やめておくか?
 
 
夫婦の夜はチェヨンの
明日への活力
だが今は身重の妻の体が
一番大事だ


そうね
タンの時以上にお腹が張るし
胎動も倍だもの
養生しなくちゃいけないし
 
 
そうだよな・・・
 
 
タンが離したウンスのお乳を
今度は夫チェヨンがすりすり
しながら
諦めきれないような声色を混ぜ
チェヨンは自分に言い聞かせた
 
 
色々 心配か?
 
 
うん
でも心配していても
キリがないわ
なるようにしか ならないもの
 
 
ああ 俺も全力で守るゆえ
案ずるな
 
 
いいわよ
全力じゃなくても
 
 
は?
 
 
だってヨンの全力はすごいもの
妊娠は病気じゃないわ
だから
そんなに過保護にならなくて
大丈夫よ
ちょこっとでいいわ
ちょこっといつもより
そばにいてくれたら
それだけでいい
 
 
そうか?
 
 
うん・・・


チェヨンはタンを見ているウンスの
後ろ姿を抱きしめた


そうそう
 
 
なんだ?
 
 
叔母様がね
屋敷を改築しようかって
 
 
は?
何を急に?
 
 
閨を建て増ししたらどうかって
子供が増えるでしょう?
それにタンも大きくなるし・・・
だから閨とつなげて
広い子供部屋を作って
夜    タンたちはそこで
閨は夫婦水入らずがいいだろうって
また・・・その・・・
励めって・・・ことかな?
子孫繁栄?
 
 
励め?と?
叔母上が言ったのか?
 
 
チェヨンは目を丸くして
聞き返した
 
 
ううん
そんなにはっきり言ったわけじゃ
ないのよ
でも夫婦水入らずって
そういう意味よね
 
 
ウンスはもじもじ呟いた
 
 
叔母上も
たまには良いことを言うな
子孫繁栄のためにも
ぜひそうしよう
 
 
布団を床に敷いて
タンを気にするウンスを
気遣いながら
営みを続けるチェヨンは
叔母の提案にすっかり乗り気
 
 
そお?
でも 庭を少し潰すことになるし
思い出の部屋に手を入れることに
なるのよ?
 
 
かつては
チェヨンの両親が暮らしたこの閨も
今ではすっかり
チェヨンとウンスの寝室だ
 
 
構わぬ
子が増えるのだ
それも一人ではないのだから
子供部屋は広いに越したことはない
叔母上に頼み
早速 棟梁を差配してもらおう
 
 
そう・・・ね
ありがとう
 
 
ウンスはタンから
くるりと向きを変えると
隣に眠るチェヨンの胸に
飛び込んだ
ウォルゲス(月桂樹)の香りが
そこはかとなく
漂うチェヨンの腕の中は
一番安心できる
一番幸せな場所

今宵も変わらずその場所で
一日が終わる喜びを
噛み締めながら
ウンスはゆっくり目を閉じた
 

ヨン   大好きよ

 
おやすみ イムジャ
ゆるりと 眠れ
 
 
*******
 
 
『今日よりも明日もっと』
悋気したり笑ったり
怒ったり甘えたり
感情そのままに向き合える人が
隣にいる幸せな時間
 
 
 
 
 
☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*
 
 
皆様へ
 
ゆるゆる更新におつきあいいただき
ありがとうござます
皆様からの励ましに感じております
 
過去の話を読み返ししていただいて
ありがとうございます
勇気をいただいております
 
前話にいただいた温かなお気持ち
いいね ポチッと そして
コメント メッセージ
本当にありがとうございました
書き続ける励みになっております

 
「ありがとう」がいっぱい照れ
感謝を込めて・・・haru
 
 

にほんブログ村 小説ブログ 韓ドラ二次小説へ
にほんブログ村