トルベの屋敷から
我が家に戻ったチェヨンと
ウンスとタンは
日が落ちて
幾分和らいだ暑さに
一息ついていた
 
帰ってすぐに
愛犬フンとひと遊びしたタンは
行水をしてさっぱりした顔で
奥の間で涼みながら
ヘジャが奥の間に運んで来た
井戸水で冷やしたオイ(胡瓜)に
かじりついていた
 
青くみずみずしい採りたての
オイの香りが部屋に広がる
 
 
うまうま   よ〜〜
 
 
木製の自分の椅子に座り
まだ少ない乳歯で器用に
かじかじ食べては
ご機嫌な様子をチェヨンは
微笑んで見ていたが
ふとウンスに尋ねた
 
 
そう言えば
タンの時は胎名をみぃと名付け
呼んでいたな
此度は付けぬのか?
 
 
そうね
みぃ・・・懐かしいわ
 
 
ウンスはタンを見て笑った
タンははてな?という顔をして
口にオイ(胡瓜)をくわえて
くりくりの瞳でウンスを見ている
 
 
うーん
胎名ねぇ・・・
タンがこの子のことを
あーたんって呼ぶから
なんとなくそのまま
呼んでいるのよね〜
胎名もそれでいっか?みたいな?
 
 
ウンスはお腹を撫でながら
首を傾げた
 
 
そんなもんか?
タンの時は高麗と天界の
架け橋となるようにミレとしたいと
イムジャが言ったのだぞ
そこからみぃとしたはずでは?
ああ
ミレは今や公主様の御名だが
 
 
そうなのよね〜
二人目はどうも・・・うふふ
良くいえば肩の力が抜けるって
とこかな?
 
 
それは
悪くいえば 手抜きではないか?
 
 
やぁね 手抜きじゃないわよ
おおらかって言って
 
 
ウンスはペロリと舌を出した
 
 
物は言いようだな
 
 
チェヨンは笑った
 
 
タンの時はぐったりしている
日もあったな
此度は悪阻が軽いようだが
油断してはならぬぞ
妊婦に変わりはないのだから
よう食べて寝て休まねば
 
 
真面目な顔のチェヨンに
ウンスは聞き返した
 
 
あら ヨンがそれを言う?
寝かせてくれない張本人じゃない
 
 
夫婦の会話を食い入るように
聞いているタンの視線に
気づいたチェヨンは軽く咳払い
ウンスもどこか誤魔化すように
タンの頭を撫で言った
 
 
タンはなんでも吸収するから
迂闊なことは言えないわね
 
 
そうだな・・・
 
 
ネ〜〜
 
 
頃合いを見計らったように
へジャが顔を出し
ウンスに尋ねた
 
 
奥様
ご飯をお持ちしましょうか?
それとも先に
湯浴みをなさいますか?
 
 
そうね
ご飯を先にするわ
タンは行水したし
それになんだか
眠ってしまいそうだから
夕餉を先にお願い
 
 
はい
へジャにお任せを
すぐにご用意いたします
 
 
厨房へ戻ったはずのへジャが
慌てて奥の間に引き返して来た
 
 
奥様 
典医寺からお使いの方が
王妃様がお呼びだと
 
 
ウンスの表情に
一気に緊張が走り
チェヨンは身支度を整え始めた
 
 
王妃様が産気づいたの?
 
 
わかりませんが
すぐにいらして欲しいと
 
 
わかった
すぐ行くわ
タン 
父上と母上は
王宮へ戻らなきゃ
タンはお屋敷で
いい子で待っていてね
 
 
のんびりした空気から
一転緊迫の様相に
タンは泣きそうな顔をした
 
 
や〜〜よ〜〜
たんも よ〜〜
 
 
タンは明日の朝
王宮へいらっしゃい
 
 
や〜〜よ〜〜
 
 
椅子から手を伸ばして
ウンスを求めるタンを見て
チェヨンが言った
 
 
イムジャ 連れて行こう
王宮には叔母上もいる
タンの面倒ならば
喜んで見てくれるであろう?
 
 
そっか
そうね・・・うん
へジャ 
夜食を何か詰めてくれる?
夕餉を食べる暇がないわ
私は着替えてくるから
 
 
かしこまりました
へジャにお任せを
すぐにご用意いたします
 
 
ばたばたと皆が動き出し
タンも置いていかれないように
チェヨンの手を握りしめ
心配そうに父親を見上げた
 
 
あっぱぁ
 

案ずるな 
これから母上は医者としての
戦に向かうのだ
俺とタンで守ってやろうな
 
 
あぁ〜〜い!
 
 
動きやすい医員の衣に着替え
髪をキュッと結わえると
ウンスは
タンを抱っこしたチェヨンとともに
門の前で待つ輿に向かう
 
 
奥様 これを
何かありましたら
すぐに知らせを
王宮へ駆けつけますので
 
 
ありがとう
留守を頼むわね
 
 
ウンスはへジャの用意した
夜食を受け取り答えた
 
 
はい 
へジャにお任せを
奥様
くれぐれも
ご無理なさいませんように
 
 
ありがとう へジャ
 
 
屋敷から王宮までは馬を飛ばせば
さほど時間はかからない
だが今 ウンスは身重
馬で行けるわけがない
ウンスたちは輿に乗り込み
じりじりと逸る気持ちを抑え
独り言のように呟いた


今朝の回診でお腹が張ると
言っていたのに
もっと注意深く診るべきだった
主治医として失格よ


ウンスや
しっかりしろ
王妃様はウンスが頼りなのだ
そなたが弱気になって
如何する?


うん


おんまぁ   けんちゃな?


ありがとう
そうね
ここでうだうだ
言っていても仕方ないわ
何があっても
医者として全力を尽くすだけよ


ああ
とにかく状況の確認が先だ
王宮へ向かうぞ
ソクテ    輿を出せ

 
チェヨンの命令で
ウンスを乗せた輿は
王宮へ向けて動き出した
 
 
*******
 
 
『今日よりも明日もっと』
あなたがそばにいてくれるから
きっと大丈夫
怖くない





 



日本列島続々梅雨明けの模様
いよいよ夏本番です
皆様
安寧にお過ごしくださいませ


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