う〜〜ん
良く寝た
うふふ
 
 
照れ笑いを浮かべて
ウンスはチェヨンの膝から
降りた
輿はちょうど都の育児園に
ついたところ
子供達の元気な声が聞こえる
 
 
ああ やっぱりタンも
連れて来たらよかったかしら
でもきっとお遊びの後は
大妃(デビ)様のところで
おやつの時間だと思うし〜
 
 
庭を駆け回る幼子の元気な姿を
見るにつけ ウンスの思いは
タンへと向かう
 
 
そうだな
戻って来た時にイムジャがいないと
がっかりするであろうな
 
 
チェヨンは輿の中でウンスを
独り占め出来て上機嫌で
タンをねぎらう
 
そんな二人の会話を小耳に挟み
イサは輿の中から漏れ聞こえてきた
甘い二人を思い出しどきどきしていた
今年十六の少年に
チェヨンとウンスの機微は甘過ぎて 
おかしな妄想が膨らんでしまう
 
かつてのイサは
倭冦の大将として
元服も済ませた大人扱いで
男女のことにも疎い方ではなかった
だが
誰か一人に思いを寄せるような
恋に巡り逢ったことはない
 
ウンスとチェヨンを見ていると
運命の出会いとしか言いようがないが
自分の母親に似ていることを
たとえ除いたとしても 
ウンスは本当に魅力的な女人で
天下のチェヨンが
惹かれて止まない気持ちが
イサにはよくわかった
そして養父チェ・スジョンの
断ち切れない思いも・・・
 
 
典医寺から随行して来た
医員と薬員はすぐさま
簡易診療所を設置すると 
まずは育児園で働く者たちの
健康診断を開始した
それから子供達の診察
 
わざわざ王宮の医員が出向かずとも
民の為の診療施設があるではないかと
揶揄されたこともあったが
ウンスは怯まず
やめようともしなかった検診だ

自分の発案で出来た育児園や
私財を投げ出した豪商チャン・デホ
子供達の役に立ちたいと
心を入れ替えたその娘キンスの
少しでも役に立ちたいと言う
強い決意があったから
 
すっかり日に焼け
たくましい育児園の運営者に
成長したキンスがウンスたちを
出迎えに来た
 
 
医仙様
これはこれは上護軍様まで
ようこそお越し下さいました
お待ちしておりました
そしてこの度は
私どもの縁者がとんでもないこと
しでかしまして・・・
 
 
キンスは開口一番詫びた
 
 
いや そなたもそなたの父親も
与り知らぬことなのだ
気に病むことはない
 
 
ありがとうございます
 
 
キンスはうやうやしく頭を下げ 
それからウンスに話しかけた
 
 
実は医仙様に
診て欲しい者がいるのです
罪人の娘・・・なのですが・・・
 

遠慮がちなキンズの口ぶりに 
それが先日罪を犯し
投獄されたノ・スダルの娘
ナレのことだと
ウンスはすぐに気がついた
 
 
かまわないわ
罪人の娘だろうと
本人が罪人だろうと
患者は患者
患者に身分も何も関係ないもの
 
 
チェヨンはウンスらしい返答に
ふっと笑みがこみ上げた
だがすぐに厳しい顔つきになって
ウンスに一言
 
 
イムジャ 無理はならぬぞ
そなた一人の体ではないのだ
 
 
大丈夫
ちゃんと心得ているから
 
 
それを聞いてキンスが表情を
ぱっと明るくした
 
 
医仙様 
もしかしてご懐妊ですか?
それはおめでとうございます
 
 
うふふ
改めて言われると
照れちゃうわね
 

ウンスはうれしそうに答え 
チェヨンは軽く黙礼すると
その場から少し離れ
育児園を見回した

庭には子供達が溢れ返り
ずいぶんと手狭に感じる
 
ウンスは慣れた様子で
医員の輪にまざり診察を開始し
そのそばでは
イサがウンスの指示で
医術の補助に忙しく働いている
 
チェヨンはタンが生まれて
角が取れたのか
子供達がたくさん寄って来て
遊ぼう遊ぼうとせがまれ
困った顔をしていた
その様子を目で追いながら
ウンスは微笑み診察を続ける
 
やがて
キンスは
青白い顔をして思い詰めた様子の
女人を連れてきた
その女人は
弱々しい声でウンスに言った
 
 
ノ・スダルの娘ナレにございます
医仙様に 厚かましい
お願いがございます
牢にいる父に会えるよう
上護軍様にお口添えくださいませ
 

驚いたキンスに 
戸惑う顔のウンスを
チェヨンは離れた所で見守っている


ナレ
何を言いだすんだい?
あんな父親
こっちから縁を切りたいくらい
あんたも随分嫌っていたでしょう?
それなのに?
 
 
えっと・・・ナレさん?
お父さんのことで
大変な思いをしたでしょう?
お気持ちはわかるわ
でもごめんなさい
私 政治には関与しないことに
決めてるの
私はただの医者だもの
だから夫にその件を
私から頼むことはできない
でもね
今日は幸い夫が一緒に来ている
だから直接話をしてみたら?
私も同席するから・・・ね?
随分とやつれてしまっているわ
眠れないの?ご飯食べてる?
従姉妹のキンスさんも
心配しているわよ
 
 
まわりに迷惑ばかり
ほんとうに申し訳なくて・・・
それにどんな親でも
わたしにとって親は親
あの人の罪は娘のわたしの罪
 
 
消え入るような声で
ナレは呟いた
 

それは違うよ
親とあんたの人生は違う
酷い親のしでかしたことまで
あんたが
責任を感じる必要はないよ
 
 
ウンスの隣にいたイサが
吐き出すようにそう言った


風が吹いて
揺れるナレの瞳を
イサが見つめていた


*******


『今日よりも明日もっと』
切りたい縁に
切れない縁
紡ぐ縁に   守りたい縁
人の縁(えにし)は不可思議だ
 
 
 

 
 
ポチッとカムサハムニダ〜照れ
皆様とのご縁に感謝
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