ウンスちゃん
いらっしゃい


チェヨンの母親は
夫の隣に立ち
にこやかにウンスを出迎えた
それから
ウンスが持参した
花かごをたいそう気に入り
目を細めて見つめた


素敵ですこと
ねえ   あなた?


そうだね


ウンスちゃん
今日はホワイトデーって
言うんでしょう?
男の子がお返しをする日
なのに
頂いて悪いわね


いえ
気に入って頂けて
よかったです


ウンスは誰もを魅了する
笑顔を見せた


ヨンたら
バレンタインの日は
女の子と関わるのが面倒だって
学校休んでいたくらい
無愛想な子だったのに
ホワイトデーに彼女を家に
連れて来てくれるなんて
随分変わりましたよね?
ね   あなた?


ああ


口が滑る母親に
チェヨンは言った


母さん!
ウンスや
母さんの言ったこと
気にするなよ


うん


そうは言っても気になった
そりゃそうだ
これだけイケメンで優しくて
天才で
おまけに家柄もいい男は
そうそういない
人気があって当たり前なのに
しゅんとしたウンスに
チェヨンは呟いた


女の子にはまるきり
興味がなかったんだ
バレンタインは母さんの
誕生日って認識だったし
女の子と話をするのも面倒で
でも
今は違うからな


ふふっ
ウンスちゃんが
ヨンの特別な女の子だって
ことくらい
わかっていますよ
ねえ   あなた?


母親は用意した
特別な彼女ウンスへの
プレゼントを
家政婦に運ばせテーブルに
置いた

それは
春らしいベージュのバッグで
シンプルで通学用にも
普段使いできそうだ

目を輝かせて
喜んだウンスは
肩にかけて
くるりと回って見せた


なんだか頂き過ぎの
気がします
でも
すっごくうれしい


いい笑顔のウンスに
チェヨンの母親は満足そうに
なんども頷き
バイト先の服装のまま
チェヨンの家に遊びに来たことを
少し気にしていた
ジーンズ姿のウンスに
よく似合っていると
しきりに褒めた


私の用事は済んだわ
今度はそのバッグを持って
お買い物に行きましょうね?


はい
ぜひ


ねえ   あなた
ところで
あなたのプレゼントは
頂けないの?


母親はウンスにプレゼントを
渡すと
今度は自分の番とばかりに
夫に尋ねた


部屋にあるさ


まあ!
ほんとうですの?
じゃあウンスちゃん
私たちはお部屋に戻るけれど
ゆっくりしていってね


はい


両親がいなくなると
チェヨンは言った


まったく子供みたいな母さんだろ
プレゼント渡したら
それで満足して
呼びつけておきながら
さっさと部屋に行っちまうなんて


うふふ
早く二人きりにしてあげようって
お母様の優しい心遣いよ


ウンスは笑った
その笑顔を抱きしめたくなる


ウンスや
部屋に行くか?


チェヨンはウンスの手を掴み
自分の部屋に連れて行った
なんども来たことがある
チェヨンの部屋

ウンスの部屋の何倍も広くて
整理が行き届いている部屋の
ドアを閉めた途端
チェヨンはウンスを抱きしめた


こら
ガブガブ禁止


まだしてない


これからするくせに


悪いか?


駄目だってば


がっちり包まれた
チェヨンの腕は居心地がよくて
駄目だと言いながら
チェヨンの服をひしっと掴んだ
チェヨンが耳元で囁く


キスしたい


うん


重なる唇が
暖かな春の陽射しのような
幸せを
二人に運んで来た


ガブガブ禁止!
だよ!


なかなか離れない唇
息継ぎのタイミングで
ウンスは言った


守れそうにないな
でもその前に


チェヨンはしれっと言うと
ウンスを
ソファーに座らせ
机から小さな箱を持って来た


手   出して


ん?


はい


ウンスが差し出した
手のひらに小箱を乗せた


虫よけ
ネックレスより効果あるぞ


小さな箱には
ベビーパールが並んだ指輪


かわいい!


思わずウンスは声をあげた


気に入った?


うん!


チェヨンはウンスの手を取り
箱から取り出した指輪を
指にすっとはめた


ぴったり!
どうしてわかったの?


前にふざけて
おもちゃの指輪を作ったろ?
あの時サイズを覚えた
でも
なんか緊張するな
結婚式みたいで


チェヨンは照れた
高価な指輪は
まだ二人には不似合いだ
だが
ウンスにどうしても
身につけていて欲しかった
自分の彼女の証を


うん
照れた


指輪を見つめ
頬を染めて頷くウンスの
その指にチェヨンは
ちゅっと口づけた


ウンスや
俺のウンス
ずっと一緒にいたい


二人の唇がふたたび
重なる


*******


『今日よりも明日もっと』
あふれる恋心
止まらぬ想い
本気の恋に身を焦がす


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