医仙様は確かに
ジュヒさんのことを言っていた

ウンスとチェヨンが
兵舎から消えると
テマンは矢も盾もたまらず
典医寺に向かった

弾む息を整えて
育児室の扉を叩くと
中からジュヒが
身構えて出て来た


ジュヒさん!
どうして?ど
どうして?
みんなをだまし討ち?


見つめた先にいたのは
武閣氏の青い衣姿のジュヒ
長い髪を一つにまとめ上げ
後ろに垂らしていた


だまし討ちだなんて
やーね
これには色々訳があるのよ
とにかく
新入りのジュヒと申します
テマンさん
またよろしくね


少し決まり悪そうに
ジュヒは言った


あ?え?じゃあ
ずっと若様のそばに?
いられるってこと?


わずかに的を外した
疑問を
テマンは投げかけた


それはわからないわ
武閣氏の配置はチェ尚宮様が
お決めになるから
でもそうなるといいなと
思っているけど


コ   コハクは?
ドルベ兄さんの屋敷?でしょ
オンマがそばにいなくていいの?
やっと二人で
ゆっくり出来るはずだったのに


うーん
この時分だと
書堂(ソダン)かしら?
コハクは両班として
覚えることが多いみたい
でも好奇心一杯で楽しんでるわ
父上もこんなことやってたのかな
って言ってるし


ジュヒは答えた


コハクには世話係の
下男がついてるの
びっくりするでしょう?
私は
両班のしきたりはまだまだ
戸惑うことばかりよ
でもコハクはすっかり両班の子
子供は適応するのが早い


ジュヒは笑った


そっか二人とも
幸せなんだ


ええ
お陰様で
それにこうしてまた
上護軍の口添えで
王宮に仕えることが出来て
感謝してるの
ウダルチは
途中で逃げ出したから
これからは
ドルベさんの分まで
王宮でしっかり働かなきゃと
思っているのよ


育児室では時々タンが
じゅい〜〜
おもちゃを持って駆け寄り
にこにこと笑っていた
ジュヒはそれを穏やかな顔で
見守っている
テマンはうれしかった
もう二度と会うことのない世界に
行ってしまったと思った相手が
目の前にいる


待つのも悪くないか
そうかもしれないな


なに?独り言?


ジュヒが微笑んで
テマンを見た


ウンスは集賢殿の奥にある
閨の寝台の上に
ぐったりと仰向けに寝ていた
相変わらず目は虚ろだ


ヨンの嘘つき
熱が冷めるどころか
ますます熱いわ


すまぬ
そろそろ
行かねばならぬ


チェヨンは身支度を整え
ウンスに振り向いた
チェヨンとて
まだまだ
情を交わしていたい
だが
さすがに昼日中
これ以上お役目を
ないがしろにするのも
はばかられた

パク・インギュが
じれったそうに
なんどもこちらに来かけては
武閣氏に止められているのにも
気づいていた


イムジャは此処で
しばらく休んでいろ
典医寺には熱があると
伝えておくゆえ


ウンスは
がばっと起き上がった
白い肌に赤い印が浮き上がる


嫌よ
何してたんだか
トギにばれちゃうもの


ウンスは首を振って言った


いまさら仕方あるまい
そのように艶のある姿で
典医寺に帰すわけにもいかぬ
情を交わしたことが
たとえ
侍医やトギに露見しても
イムジャのその色香を
見せたくはないのだ
わかるな?


う・・・ん
でも私が戻らないと
タンが寂しがるわ
ポムも今日はさすがに
屋敷で休んでるし


ジュヒがいるではないか
少しの辛抱だ
熱が冷めたら送るゆえ
よいな


そっか
ジュヒが戻って来たんだった
じゃあ
少し休んで行こうかな
また後で来てくれる?


ああ
様子を見に来る


ウンスは身体の熱が
収まるまで眠ることにして
目を閉じた


いい子だ


チェヨンはウンスのおでこに
口づけると閨を後にした


━─━─━─━─━─


夕方チェ家では
通いの女中たちが
勤めを終えて帰り仕度を
しながらおしゃべりの最中

今宵のチェ家の夕餉は
ヘジャの作る参鶏湯
朝からぐったりしていた
主人夫婦に精をつけてもらうには
これが一番だ

さすがに高価な鶏肉は
女中たちには当たらないが
ソンオクの葬式で世話になった
女中たちに
参鶏湯の材料を拝借した
餅米と栗を蒸した餅が
振る舞われた


ねえ
そう言えばジュヒさんって
両班の御息女なんでしょう?


噂好きなユウが尋ねた


そうみたいね
お屋敷で暮らすことになって
コハクちゃん
じゃなかった
坊っちゃんがいなくなったと
ミホが寂しがっているの


ミヒャンが娘のミホの
様子を話した


そりゃあミホちゃん
寂しくなるわねぇ
ジュヒさんは
お屋敷暮らしかぁ


ハヌルが少し
羨ましそうに呟いた


ほらほら
あんたたち
いつまで話してるんだい?
夜が明けちまうよ
早くお帰り
明日もよろしく頼むよ


はーい
ヘジャさん
また明日


三人がわいわいと
連れ立って行ってしまうと
入れ違いに主人夫婦が
輿でご帰宅


ふん   ぬん〜〜!


子犬と子馬を呼ぶ
タンの元気な声が庭に響き
屋敷は活気を取り戻した

フンを追いかけ
庭を走り回るタンを
チェヨンとウンスが
並んで手を繋ぎ
微笑んで見守っている
そのそばには
一緒に戻って来たテマンがいた

ヘジャは主人夫婦の姿を見て
ソクテにしみじみ言った


似合いのご夫婦だねぇ
やっぱり高麗一だよ
母さんはお二人のこと
ちゃんと
大旦那様や大奥様に
お伝えしてくれてるかねぇ


ソンオク母さんのことだ
抜かりはないさ
だがな
ヘジャ
俺たちだって負けちゃいねぇ
いい夫婦だぞ


ヘジャはソクテを見た
その時
庭の寒椿がふわりと揺れ
まるでソンオクが
笑いかけているように
ヘジャには思えた


母さん
チェ家のことは
ヘジャにお任せを!


冬の終わりを告げる寒花が
空からふわふわ舞い降りた


*******


『今日よりも明日もっと』
冬の寒さに耐えてこそ
春がいっそう恋しけれ






☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*


本日は其の三十九からの
更新となっております

「寒花舞い振る」
全四十話お届けいたしました
お話はこのあと
スピンオフへと続きます
また
おつきあいくださいね


あ!アメ限?(///∇//)

今しばらく(^▽^;)
お待ちくださいませ  笑



にほんブログ村 小説ブログ 韓ドラ二次小説へ
にほんブログ村