優しく頭をなでられて
ぎゅっと抱きしめられて
それだけで
もう他のことは
どうでもよくなる自分に
呆れて
ウンスはふうと息を吐き
チェヨンを見上げた
黒い瞳がウンスを見つめる
ウンスは口を開いた


ジュヒったら
こともあろうに
キンスさんに
テマンと相手の
恋のキューピッドを
頼まれたのよ
その上    その役に
乗り気だったの!
素敵なお嬢様だとか
テマンに話をするって
テマンの気持ちに
きっと気づいてないのね
テマンの想い人はジュヒだ
って言えたら
どんなにすっきりするか


きゅきゅ?
なんだそれは?


あ〜〜キューピッド?
仲立ち?
仲人みたいなもんよ


はあ


キンスさんが言うにはね
そのお嬢さんは
キンスさんのお母様と


言いかけたウンスに
チェヨンは答えた


ああ
その話ならば
娘の父親と名乗る者から
聞いたゆえ


え?
来たの?


ああ
縁談を勧めて欲しいとな


まあ
なんて人!
お役目の最中の
ヨンのところへ出向くなんて
どうかしてるわ


そう言ってから
「私もそうだった」と
舌を出した


だが
イムジャが来ると
俺には
こう言う利もある


チェヨンはウンスの唇を食む


だめよ
今はお役目中
ちょっと
だか・・・ら


チェヨンの腕の中で
崩れ落ちていく
愛しい妻の耳元で囁いた


もっとイムジャが
欲しくなるゆえ
早く屋敷に帰ろうと
役目に邁進出来る
だから効率がよいのだ


馬鹿っ
あっ
ほんとに駄目
待って
屋敷に帰ってから
よっんっ


チェヨンは
からかうつもりが
身をよじるウンスを
本気で狩りたくなり
なんとかその場の自分を
収めて
残念そうにその手を止めた

ウンスはチェヨンの腕から
逃げ出し
ホッとため息をついて
また話を蒸し返す


それにね


なんだ
まだあるのか?


此処からが
大問題よ


ウンスはジュヒとのやり取りを
思い出しながら
チェヨンに聞かせた


━─━─━─━─━─


医仙様
ご相談があるのです


ジュヒはもともと思慮深く
控えめな性格だ
そのジュヒが自分を頼るとは
よほどの話だとウンスは思った


どうしたの?


はい   あの
こんなこと伺っていいか
どうか?


ジュヒの質問なら
なんでも答えるわ
どうしたの?


テマンさんて
誰か
好きな人とか
いるんでしょうか?


隣の部屋でタンとコハクが
綺麗な鞠を使って
きゃっきゃと遊んでいるのを
確かめてから
小さな声でジュヒは言った


好きな人?
なに?
まさか?ジュヒったら
テマンのこと?


弾んだ声で問い返した
ウンスに
ジュヒは笑って答えた


まさか!
違いますよ
テマンさんは
ウダルチの時からの
いい仲間です
それにあの人にも
すごく懐いていたし
今はコハクにも
よくしてくれるから
頼りになる友なんです
だからテマンさんには
幸せになって欲しくて


はあ
そっか
テマンは友かぁ


ウンスは
落胆を隠せなかった


年頃だから
たぶんいるんじゃない?
好きな人くらい


ゴニョゴニョ答えた


そっか
そうですよね
でもナレさんと話したら
テマンさん
きっと気に入るんじゃ
ないかと思って
キンスさんの親戚筋らしくて
その方ナレさんって
言うんですけど
心根の優しい
素敵なお嬢様です
コハクも大好きな先生だと
言ってますし


そうなの?
でもこればかりは
本人次第よ
周りがその子を
いくら好きでも
テマンの気持ちがなきゃ


そうですよね


ジュヒは静かに頷く


私もね
実は以前チェ先生と
サラをくっつけようとして
チェ先生を
傷つけたことがあるの


チェ侍医の
自分への想いに感づいて
自分から遠ざけようと
無理矢理
サラとの縁を取り持とうとして
見事に失敗したことを
ウンスは思い出した


その時学んだのよ
人の恋路に手を出しちゃ
いけないってね


そうでしたか


ジュヒは肩をすくめた


そうかも知れませんね
私ったら
テマンさんにはお世話に
なりっぱなしだから
少しでも役に立てたらって
勇み足でした
わかりました
キンスさんには
それとなく話をしてみます


そお?
その方がいいかも


ウンスは安心したように
頷いた
それで話は終わりかと
思ったウンスにジュヒは
思いがけないことを言い出した


先ほど医仙様は
自分の幸せを考えても
いいんじゃないかって
おっしゃいましたよね?


ええ
言ったわ
ジュヒにも女として
幸せになって欲しいから


私は今でも十分満ち足りて
います
それに私の幸せは
コハクが幸せであること
だから
トルベさんのご両親の
申し出を受けようかと思って
医仙様
お許しを頂けますか?


え?
あの?えっと?
許し?


ウンスは混乱する頭で
ジュヒを見た


あの人の実家は
あの人が亡くなって
家督を継ぐ者がいないんです
だから
コハクと一緒に屋敷に
来ないかって言われて


いつの間にそんな話を
トルベさんのご両親としたの?


ジュヒは少し笑って
ウンスに言った


コハクのこと
それとなくご両親にお話して
くださったのは
医仙様ですよね?


え?
あっ!そうだったかしら?
でも
名乗らないって
木の陰から見るだけだって


ウンスは少し気まずそうに
ジュヒに言った


いえ   責めているのでは
ないのです
お心遣いがうれしかったんです
ご両親はそれから
ちょくちょく育児園にも
コハクの様子を見に来たそうで
それで年が明けてから
私がいるのを見計らい
育児園に訪ねて来られて
あの人に似たコハクの力に
なってやりたいと
言ってくださいました


ジュヒは決意した顔で
ウンスを見た


━─━─━─━─━─


それでね


ウンスはチェヨンに言った


トルベさんの屋敷に入るって
言うのよ
そりゃあ   悪い話じゃないのは
わかってるの
引き離されるどころか
ジュヒも一緒にって言うんだし
ドルベさんのご両親にすれば
大手を振って
コハクをトルベさんの家の
跡取りに出来るわけだから
でもそうしたら
ジュヒはトルベさんの家の人
簡単にテマンと一緒になるって
わけにもいかなくなるわ


そうだな
だがコハクにとって
悪い話ではない
トルベの親はきっと
トルベの分まで良くして
くださるだろうし
それにイムジャ
イムジャは肝心なことを
忘れておるぞ


肝心なこと?


ああ
テマンはまだ
何一つ
自分の気持ちを
決めていないと言うことだ
ジュヒはコハクの
将来を真剣に考え
結論を下したのであろう
気持ちが固まったからこそ
イムジャに話をしたのだ
テマンも自分の気持ちに
向き合わねばならぬ
それでもし
己の欲よりも
ジュヒ親子を陰から
見守ることに決めたのならば
俺たちが口出しすることではない
まあ
欲に負けた俺が言うのも
何だがな


チェヨンは逃げたウンスを
捕獲し直し
抱きしめて優しく微笑んだ


うん


好いた相手を見守ることで
幸せを感じる奴がいることも
俺は知ってる


チェヨンはチェ侍医を思った


うん


男女の縁は二人の合意
なるようにしかならぬし
時が必要な場合もある


私たちみたいに?


ああ
俺はじっくり時をかけ
イムジャへの想いを
募らせて来た
手に入れるまでにも
長い時が必要であった
だから今は我慢が効かぬ


まじめな顔のチェヨンに
ウンスはふっと笑った


そうね   
今のヨンは
確かに我慢が効かないわ
二人のことはまわりで
気を揉んでも仕方ない
私たちも随分じれったい時間を
過ごして来たものね
わかってはいるんだけど
つい焦ってしまって


ああ


でも寂しくなるわね
もしジュヒが屋敷に行けば
もうタンの警護を
お願いするわけにも
いかなくなるもの


そうだな


廊下でガタンと音がした


ん?誰かいる?


ウンスは音のした方を見た


ああ
テマンが飛び出して
行ったようだ


え?
まさか今の話?


ああ
聞かせた
あいつも自分の気持ちに
向き合う時が来たようだ


外は寒花が舞っている
高麗はまだ冬に包まれていた


*******


『今日よりも明日もっと』
人は毎日選びながら生きている
それが正しかったどうかは
後から振り返る自分の気持ち次第だ





☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*


トルベの両親が
コハクに密かに会いに来た場面
書いた記憶が〜茄子の花咲き?かな?
どこだっけ?と探したのですが
まるきり思い出せない (^▽^;)
見つけた方がいらっしゃいましたら
お知らせ頂けたら嬉しいです




追記です

でんべ様  翔様
早速その場面をお知らせいただき
ありがとうございました

ムグンファの君其の二十五でした
リンク貼りましたが
うまく飛ぶかしら?






屋根裏保管庫に
お越し頂いている皆様

ありがとうございます

100年前の話の
修正が終わりアップしております
先は長い  (;^ω^A
ぼちぼち更新していますので 
また覗いてみてくださいね〜






☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*


暦の上では立春
春です

てへぺろうさぎ

お話はまだまだ冬
現在のリアル高麗の都は
–4℃ とか     寒いびっくり


また
おつきあいくださいませ




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