なあ トクマン
おまえさ
嫁さん欲しいって
思ったことあるか?
 
 
兵舎で
ウンスから差し入れられた
テチュチャ(ナツメ茶)を
飲みながらテマンは
おもむろにトクマンに尋ねた
 
 
へ?なんで?
そりゃあ いい加減
もう歳だし・・・
考えなくもないかな
だって
目の前であんな幸せそうな
上官二人を見てたら
尚のこと
 
 
そっか・・・
 
 
でも
急にどうしたんだ?


不思議そうに
追求されてうっかり
テマンは言葉を漏らした
 
 
いや えっと
上護軍に聞かれたからさ
お前 嫁さんを娶る気は
あるかって
 
 
え〜〜?
まさか縁談じゃないよな?
上護軍も俺を差し置いて
さきにテマンとは
ひどいじゃないかぁ
 
 
トクマンはぶうぶう文句を言った
 
 
トクマンは気が多いから
上護軍に呆れられてるんだろ
医仙様に憧れて
ヨンファさんを気に入って
武閣氏のヒョリさんのことも
綺麗な女人だって
言ってたよな
 
 
ああ   悪いかよ?
俺は美しい女人が
好きなんだ
だがな
高麗一のキーセンでも
やっぱり医仙様には敵わないぞ
今まで会った女人の中では
断然一番お綺麗だ
閨のお姿を想像するだけで
もう たまらん!
医仙様と情をかわす
上護軍がうらやま・・・
 
 
トクマンは急に
右足に激痛が走り
倒れ込んだ
 
 
痛って〜〜〜
 
 
転がり込んだ床から
視線を上に戻すと
トクマンに蹴りを入れた張本人
チェヨンが恐ろしい顔をして
トクマンを睨みつけていた
 
 
上・・・護・・・軍
まさか
聞いて?まし?た?
今の話


血の気が失せたトクマンが
ボソボソ尋ねる
 
 
気配に気づかぬとは
たるんでいるぞ
馬鹿者が!!!
何を考えているのだ
お前は!


雷が落ちるとは
まさにこのことだと
トクマンは小さくなって
ひれ伏した
 
 
す すみません
すみません
すみません
不埒なことは
二度と考えません
上護軍 どうぞお許しを
 
 
あ?二度とだと?
一度でも許されると思うか!
その性根鍛え直してやるから
広場へ来い!!!
 
 
「ひょ〜〜」と叫びながら
涙目のトクマンが
引きずられるように
チェヨンに連れ出されるのを
テマンは
トクマンはほんとに
変わらないなぁと
ため息まじりに見ていた


それにしても 上護軍の
医仙様への懸想は
結婚してからも
まったく変わらない
それどころか
悋気はますます凄くなるし
片時も離れていたくないようだ
いろんなことがあったけど
惚れ抜いている医仙様と
一緒にいられて
上護軍は幸せそうだよなぁ


二人が出会った頃から
そばで見てきたテマンは
男としてのチェヨンが
なんだかうらやましく思えた
 
 
俺は?どうかな?
嫁さん・・・か・・・
考えたこともなかった
 
 
チェヨンに拾われて以来
チェヨンの言うことは
自分の中では絶対だと
決めて来た
のたれ死にしなかったのも
暖かな暮らしが出来ているのも
チェヨンのおかげだと
思っている
 
 
上護軍はどうして俺に
あんなこと言ったのかな
 
 
具体的な縁談話を
聞いていないテマンは
首を傾げ考えた

ふと
思い浮かんだのは
コハクと一緒に
楽しそうに笑っている
トルベの想い人ジュヒの姿

テマンはなぜか
後ろめたい気持ちになって
テチュチャをごくりと飲み干すと
慌てて 
チェヨンとトクマンの
後を追いかけた
 
 
━─━─━─━─━─
 
 
夕方近くになり
無事に
最後の患者を送り出したウンスは
診療室でほっと一息ついていた

そこへ
サラが来て
ウンスの前に
煎じ薬の入ったお椀を
どうぞと言って置いた

ウンスはギョッとした顔で
目の前のどろどろとした液体を
見つめる


補薬(ボヤク)にございます


横からチェ侍医が話す


私が飲むの?


はい
風邪(ふうじゃ)を
体に取り込まないためにも
日頃の予防が大事
医仙様が病に罹ると
王妃様のお腹のお子様にも
障りますから


チェ侍医は涼しげな顔


やだなぁ  
患者さんには処方するけど
ほんと生薬は苦手なのよ
これ
王妃様にお出ししているのと
同じ補薬よね


はい
たいそう高価な薬剤を
使用しております
ですから
一滴も無駄になさらずに
飲みきりください
医仙様のお身体のために
ございますから


チェ侍医の言い分は
もっともだった


ああ    もう!
わかったわ
飲む
飲むわよ
飲まなきゃね


ごくんと飲み込み苦い顔


はあ
やっぱり苦い!
王妃様は顔色一つ変えずに
よく飲めるわね
ほんと我慢強いんだから


苦い補薬の後味
ヨンが飲ませてくれたら
甘く感じるのにと
ウンスが思っていると
チェ侍医がすっと
お茶と菓子を差し出した


砂糖菓子を召し上がり
お口直しを


チェ侍医はどこまでも
細やかだ


ありがとう


ウンスは
口に砂糖菓子を放り込み
にこりと笑った


さてと
補薬も飲んだし
口直しも出来たわ
タンが待ってるから
そろそろ帰り支度を
しなくちゃ


大雪になりそうですよ
また積もりそうだわ
医仙様
お気をつけてお帰りくださいね


サラが窓から外を見て言う


ええ   ありがとう
みんなにも天候が
荒れないうちに
帰るように伝えて頂戴ね


ウンスは手早く片付けを終え
診療室を後にした

風が吹き始め
空はどんよりと
厚い雲に覆われていた
吹雪いてくるかも知れないと
空を見る

イサはソダンから
まっすぐ屋敷に戻ると
言っていたから
チェ先生もイサの様子を気にして
今日はもう屋敷に帰るだろう
サラやトギも
帰り支度を始めていた
吹雪いてくる前に
みんな   家に着くといいが

チェヨンを待って
一緒に育児園に寄ろうと
思っていたけど
この天候では無理をしない方が
いいだろうか?

そんなことを考えながら
武閣氏の二人に守られ
育児室にタンを迎えに行くと
丁度  夜勤の乳母と交代した
ウネがいた


********


『今日よりも明日もっと』
幸せだと思うのは
どんな時だろう?
あなたは今
幸せですか?







風邪は万病のもと
インフルエンザも流行中

皆様
お気をつけくださいね
 
 
 
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