ソウルに戻ったチェヨンは 
ウンスを家に送り届け
玄関先で抱きしめた
 
自分に何が出来るのか
この先ずっとこの大切な人を
守って行けるのか
そんな一抹の不安がよぎる
 
 
大丈夫のおまじない
 
 
すると
ウンスが背伸びをして
唇を合わせて来た
 
この感触
この思いを胸に刻むように
鼻先をこすり合わせながら
チェヨンは
力強く抱きしめると
右から左から
食むようにウンスの唇を求めた
 
 
んんっ
はぁ・・・
 
 
どんどん胸を叩かれて
やっと離した唇の先で
ウンスが大きく息を吸って
そして 吐いた
 
 
ヨン 
息が出来なくて
死ぬかと思った
 
 
ごめん
余裕がなくて
 
 
うふふ
いいよ 許す
 
 
ウンスはにこっと
口角を持ち上げた
 
 
ウンスや
行って来るから
待っていて
 
 
うん
 
 
終わったら
電話するから
 
 
うん
 
 
しっかり
戸締まりしろよ
 
 
うん
ヨン・・・
行ってらっしゃい
 
 
いつものように
顔の横で小さく手を振る
愛しいウンス

この丸い瞳が悲しみの涙で
濡れないように
今はそれだけ考えよう

チェヨンはわずかに微笑み
玄関を後にすると
叔母チェ・ギョンウォンに
電話をした
 
 
今から
クリスタルホテルへ行く
 
 
そうか
まあ しっかりやれ
相手に舐められるんじゃないよ
こっちの手筈は整っているから
 
 
おう
 
 
電話は短く切れた
 
 
クリスタルホテルのフロントで
ヘラを呼び出した
支配人が出て来て
カウンターの上に
ルームキーがそっと置かれた
 
 
ヘラ様は
お部屋でお待ちです
 
 
チェヨンは
うんざりするような
顔つきで支配人に告げた
 
 
部屋には行かない
ここのロビーで待つと
伝えてください
 
 
怪訝な顔をした支配人だが
それでも内線を繋いだようで
やや暫くして
高級ファッション誌から
抜け出たような
白地に青い花柄の
ミニのワンピース姿で
ヘラが現れた

ウンスの方が
たとえパジャマ姿でも
どんな格好をしていても
何万倍も可愛い
ぼんやりそんなことを思った

 
部屋のほうが
落ち着いて話が出来るのにぃ
 
 
チェヨンが見惚れたと
勘違いしたのか?
少し上目づかいで甘ったるく
言うヘラに
チェヨンは身震いを覚えた
 
 
いや ここでいい
病院の噂のように
既成事実でもねつ造されたら
敵わないからな
 
 
チェヨンは冷たく言い放ち
ヘラはふんと鼻を鳴らし
言い返した
 
 
あら 病院のことなら
事実なんじゃないの?
でももし事実でも大丈夫よ
おじい様は医師会にも
顔が利くし
マスコミや政治家にだって
もちろん顔が利くから
だからあの程度の噂なら
すぐにもみ消せるって
チェヨンの考え一つでね
 
 
チェヨンは首を振った


はあ?
根も葉もない噂をまき散らし
父親を侮辱しておいて
今更 何を言ってるんだか
聞いてて 呆れる
 
 
噂をまき散らしてなんて
いないわよ
何か 誤解してるようだけど
私はこの先もずっと
あなたの味方
あなたの望みを叶えることが
私の喜びなの
あなたの後ろ盾になって
あげるっていってるのよ
 
 
後ろ盾?そんなものは
俺には必要ない
俺の望みはただ一つ
お前と
二度と関わらないことだ
 
 
ヘラは怒ったような
顔をした
 
 
あら それは無理ね
だって私達婚約するんだもの


断る!


あなたに断る権利はないの
あなたは今
あの変な女にたぶらかされて
いるだけよ
年上のくせに
あの女 分別がないんだもの
住む世界だって違いすぎるのに
そんなこともわからないなんて
馬鹿な女よね


チェヨンはイラッとして
言った
 
 
馬鹿な女はお前の方だ
俺の住む世界は
ウンスがいる世界なんだ
俺たちのことは
もう放っておいてくれないか?
それに病院を巻き込むのは
やめてくれ!
 
 
嫌よ
あなたを取り戻すためなら
鬼にでも何にでもなるわ
チェヨンは私の物よ
小さい頃からずっと
あなたのことだけ思って来たの
あなたは私の初恋なの
どうして私を愛してくれないの?
どうしてわかってくれないの?
 

チェヨンはため息をついた

 
お前の愛は執着だ
お前は俺の何を知っている?
俺のウンスは自分のことより
俺のことばかり心配する人
何も持ってないといいながら
たくさんの優しさや
暖かさを持ってる女性だ

 
ふん!
そんなにあの女が大事なの?
じゃあ ますますチェヨンは
婚約を断れないわ
だって もしも断れば
病院の窮地どころじゃ
すまないもの
私が此処から電話一本すれば
私のチェヨンを奪おうとした
あの女に
お母様の忠実な部下達が
何をするか・・・
見ものだわね
 
 
そう言ったヘラに
チェヨンはくっと笑った
 
 
なによ
笑うとこ?
助けてくれって泣いて
頼む所でしょう?
チェヨンの心も
あの女のことも
私が握っているんだから
 
 
お前 むなしくないか?
人の心は物じゃないんだ
ましてや金で買えるはずもない
今までどれだけ乾いた世界で
生きて来たんだ?
俺の心はとっくに
ウンスのもの
他の誰にも渡す気はない
 
 
それを聞いて わなわなと
唇を震わせるヘラの隣から
急にむせ返るような
香水の匂いが漂った
 
ヘラの隣に腰掛けた
真っ赤なドレスの女
モビリョンが足を組んで
チェヨンに冷淡に微笑んでいる
 
 
ヘラ?
この坊やは
いまだに礼儀知らずなの?
 
 
ええ お母様
私がこんなにチェヨンを
思っているのに
どうしてわかってくれない
のかしら?


チェヨンは憐れむように
目の前の母娘を見た
 
 
お前達親子は欲望の塊だ
人の心を奪えると
本気で思っているのか?
その歪んだ価値観が通用するなら
その世界がおかしいんだ


なんて生意気な!


それに
ウンスに手出しもさせない
俺がお前達の魂胆も
わからぬような
間抜けだと思うか?
ウンスに悪さしようとした
奴らは全員
今頃 張り込んだ
警察に捕まっている頃さ
 
 
何をお言いだい?
この餓鬼は!
 
 
モビリョンの
目が燃え上がるように
見開かれ
金切り声がロビーに響いた
 
 
おやおや
とんだ火女だね
赤い衣装が似合うはずだ
まったく
財閥が聞いて呆れる
 
 
叔母チェ・ギョンウォンが
モビリョンを睨みつけた
 
 
火女!!!!
火女だって?
なんて失礼な
クリスタルを
敵に回して無傷でいられると
思っているのかい?
 
 
モビリョンの声が
一段と大きく響き渡る
 
 
もうそのくらいに
しておくんだね
育ちがバレてしまう
天下のクリスタルホテルで
恥の上塗りだよ
 
 
叔母上
ウンスは?
 
 
チェヨンはモビリョンの
話に耳を貸さず
叔母にウンスの安否を尋ねた
 
 
病院の心配より
彼女の心配とは・・・
ヨンにも困ったもんだ
あの子なら大丈夫
何にも気づかす
無傷で家の中にいるよ
マンボ達にそれとなく
警護させているし
それに
家の中に入ろうとした
柄の悪い奴らは
警察に連行されたから
 
 
チェヨンは
ほっとしたような顔をして
見せ頷いた
 
 
さてと
クリスタルの
会長さんも交えて
ゆっくり話をしようじゃ
ありませんか
今回の一件
喧嘩を一方的に売って来たのは
そちらですからね・・・
ヨンア
よく見ておきなさい
売られた喧嘩は
こうやって買うんだよ
 
 
こういう時の
肝が据わった叔母は
すごみがある
チェヨンは叔母チェ室長を
じっと見つめた
 
 
*****
 
 
『今日よりも明日もっと』
大事なものを守るには
いつだって本気で
立ち向かう
 
 
 
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노란 장미(黄色の薔薇)

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叔母上   すごむと怖い〜サッ



週末はまた雪模様?
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