チェ室長
今夜は楽しかったぞ
ヨンはなんだか少し
元気がなくて心配したが
いつの間にか
いつものヨンであったし


小さな主君ワン・ギは
チェヨンを
よく観察していたようで
そう言ってにんまり笑った

無事にソルラルの
祭祀も終わり
いつもの静かな
王家の屋敷の夜を迎え
チェ室長と執事のアン・ドチに
見守られ
ワン・ギは歯磨きをしていた


あやつは恋煩いに
ございます


チェ室長はポツリと言った


恋?煩い?とは?なんだ?
苦しいものなのか?
ヨンはなんだか落ち着かぬ
様子だったが


口の中をぶくぶく
させながらワン・ギが
不思議そうに首をかしげた


若様も好きな女性が出来たら
いつかわかりましょう


チェ室長は答え
アン・ドチは微笑んだ


ささ   若様
おやすみの時間にございます
今日はワン・ヘ様もいらして
楽しゅうございましたね


ああ
ヨンと叔父様の投壺対決は
見ものであった
どちらも譲らず
気迫に満ちて


ワン・ギは笑いながら
チェ室長に話して聞かせた

やがて
ワン・ギが寝てしまうと
チェ室長は執務室に
アン・ドチを呼び
スリバンとパソコンを繋いだ


例のメール  裏どりが必要だ
アン・ドチに頼むことにするよ


はい  チェ室長
アン・ドチは頷いた


そりゃいいね
うちの兄さんには
女から情報を引き出すなんて
無理だからさ


スリバンの頭マンボの妹が
カメラ越しににやりと笑う


で   ヤンのことはわかったかい?


ちっ!
俺だってその気になりゃ
女から話を聞くくらい容易いのによ


マンボは納得いかない素ぶりで
反論したが妹に一蹴された


兄さんのことはほっといてさ
チェ室長
ヤンの身辺もスリバンに探らせたし
それに
クリスタルから入金があった口座も
押さえたよ
ヤンの虚偽はつかんではいるが
警察は当てにならないし
言い逃れされちゃあ敵わない
ここはこちらもクリスタルと同じ
手法で打って出るべきだろうさ


同じことを考えるとは
奇遇だね
ソルラル明けに一気に
片をつけるから
よろしく頼むよ
それにしてもまさかね
口は災いの元
あのメールよく見つけてくれた
朝の連絡に小躍りしたよ


だから
クリスタルの愛人のパソコンに
張り付いていて良かっただろ?
蟻の一穴たぁ    このことさ
あの程度のハッキング
うちの連中なら朝飯前
クリスタル財閥が相手とは
久しぶりにワクワクしたぜ


カメラの向こうで
頭のマンボ兄がにかっと笑う


ヨンが
あの孫娘に話をつけると
言っていたが
任せて大丈夫だろうか
自分でケリをつけたいんだと


チェ室長は逡巡し
アン・ドチに意見を求め
アン・ドチは力強く頷いた


一方
チェ家の屋敷の居間では
チェヨンの父親と母親が
紅茶を飲みながら
果物を食べていた


なかなかよい祭祀だったな
若様も
もう十歳か?早いものだ
奥方様が
すっかり少年になられた
若様のご様子をご覧になれば
どれほど喜ばれることか


ほんとですねぇ
奥方様    早く見つかれば
よろしいのに・・・
それはそうと病院で何か
ありましたか?
ギョンウォンさんが
あなたに誤診がどうの?と


相変わらずのおっとり口調


ああ   ヨボが
気にすることは何もないさ
ギョンウォンがうまく
収めるつもりみたいだから


そうですか?


ああ
それよりヨンは?
王家から戻る途中
姿が消えたが


あの子なら出かけましたよ


一家団欒の
ソルラルの日にか?


うふふ
親より大事な人が
出来たなんて素敵ですわ
あなたもそうだったでしょう?
あれくらいの年頃に
私の実家まで来てくれたことが
あったじゃありませんか?
それに私    うれしいんですよ
あの子は勉強もスポーツも
なんでも人並みはずれて出来て
しまって
なんていうか?
毎日がつまらないって
顔をしていたじゃありませんか?


そうだな


でも大学生になってからは
毎日が楽しそうで
笑顔も増えて
張りがあるような暮らしで
あの子を見ていて
なんだか微笑ましくて


うむ


だからヨンを
そんな風に変えた
お嬢さんがいるならば
会ってみたいと
思いませんこと?


チェヨンの母親は
ふふふと優雅に笑って
夫を見つめた


━─━─━─━─━─


ウンスの実家では
墓参りから帰ってくると
毎回    家族総出で
夕飯の準備をする

だが今日のウンスはなんだか
落ち着かない様子で

父親はウンスの好きな
饅頭(マンドゥ)を器用に
形づくりながら
心配そうにウンスに尋ねた


ウンスや
何か気になることでも
あるのかい?
朝から元気がないぞ
ああ    そうだ
誤診のニュースを見てからか?
知り合いだから
気になるのかな?


まあ
あのニュースは
ウンスの知り合いの病院なの?


母親は驚いたようにウンスに
問いただし
ウンスは包丁の手を止めた


彼のお父様は誤診なんかしない
ましてや
隠蔽なんてできるわけないわ
そんなずるいこと!
だって彼のお父様だもの
彼はまっすぐな人なの
真摯で一生懸命
それに傷つきやすい人
だから
今回のおかしなニュースで
彼が苦しんでいたらどうしよう?
それが心配なのよ
オンマ   アッパ   ミアネヨ
私   やっぱり
今夜ソウルに帰る


え〜〜オンニ
もう帰るの!
いやだぁ〜〜


ポム   わかって
気になるのよ   彼が
今    この瞬間も
傷ついて嫌な思いを
してるんじゃないかって


もしかして?
ウンスは
その彼が好きなのかい?


母親が小さな声で尋ね
ウンスはこくんと頷いた


婚約者がいるって
書いてあったぞ


父親が厳しい顔で言うと


違うよ
婚約間近だよ  アッパ


ポムがすかさず訂正した


そうだが
どっちにしても
うちのような庶民と
釣り合う家とは思えない
大病院の跡取りなんだろう?


あら
いいじゃない!
大病院だろうとなんだろうと
お互いに好きなら
ねえ


そうだ   そうだ!
玉の輿〜〜玉の輿〜〜


ポムがはしゃぐ


そんなんじゃないわ
跡取りとか玉の輿とか
そんなことで
好きになったんじゃないもの


その時ウンスの携帯から
メールの着信を
知らせる音がした


ウンスや
今から迎えに行く
待ってろ


メールを目で追い
ウンスは顔がほころんだ
チェヨンがこっちに向かってる
声が弾んだ


大変!
彼が   彼が!
ここに来るって
きっとニュースを見た私を
心配したんだわ


オンニうれしそうでする


うふふ
そんなことない


ウンスは父親の顔色を伺い
母親とポムは息を潜めて
見守る
父親は仕方なしに答えた


家に連れておいで


きゃ〜〜
オンニの彼氏が
やって来る〜〜!
オンニ   早くバス停に
迎えに行こうでする〜〜


まだ来ないわよ
何時に着くのか  
聞いてみるね
あのね
でもね   一つ問題が


なあに?
母親が呑気に尋ねた


びっくりしないでね
同じ大学生なんだけど
あの   その彼は
まだ十七歳なの


えええええ〜〜!


ウンスはみんなの
驚く声から逃げるように
自分の部屋に駆け込み
出かける支度を念入りに
すませた

どうしても
バス停についてくると
ポムは言って聞かず
ウンスはポムを連れて
急いだ


オンニの彼氏って
ちゅうちゅうの相手?


いやね
ポムったら


だってオンニ
幸せそうな顔してたから
ねえ   その人って
カッコいい?


うん  
すごくカッコいいよ


ウンスは笑った
バスのヘッドライトがまぶしく
降りてきたチェヨンを映し出す


ウンスや!


ヨンの馬鹿!
こんなとこに来てる場合?
私なら大丈夫なのに
自分のことを心配しなさいよ
病院大変なことになってるん
じゃないの?


言いたいことも
尋ねたいことも
たくさんあったが
あんまり心配し過ぎて
ウンスはついチェヨンに
小言を言った


俺のウンスは
やっぱりウンスだ
自分のことより
いつも俺の心配をする


チェヨンはポムがいるのも
忘れて抱きしめた


ぎゃ〜〜
オンニとオンニと
彼氏が
ハグしてるでする〜


その声にはっとして離れ
チェヨンは頭を掻き
ポムは   にやりと笑った


オンニがお世話に
なってます
妹のポムでする


いやな噂も反撃も
ひとまず横に追いやり
チェヨンとウンスは
お互い
会えたことにほっとして
顔を見合わせ微笑んだ


*******


『今日よりも明日もっと』
頭より体が先に動き出す
大切な人を守るのに
理屈はいらない


{F7DA1A2C-41A3-4A72-9D6B-E2CE284B3AE9}


本日3話目  (^▽^;)

切りどころに悩み
少し長くなりました (_ _。)

また
おつきあいくださいませ



にほんブログ村 小説ブログ 韓ドラ二次小説へ
にほんブログ村