これじゃあ

男の子と何にも話せないわ

 

 

ウンスはふぅとかわいらしく

ため息をついた

大教室の座席に座る二人

ウンスの少し怒った横顔を

目を細めてチェヨンは見つめた

 

とっくに免除に

なっている基礎科目なのに

ウンスの隣を陣取って

近寄る男ににらみをきかせる

チェヨン

 

綺麗な顔をした少年なのに

なんだかすごく威圧感があって

みな ウンスのまわりから

そそくさと いなくなる

 

 

 

ねえ 番犬じゃないんだし

そんなに怖い顔しないでよ

それに

医学生同士なんだし

男の子とだって話をする必要があるの

ほんとに困ったさんね

 

 

 

ウンスは苦笑い

その様子を後ろで見ている

ワン・へも苦笑い

 

でもどことなく昨日と違う

二人の雰囲気を

直視出来なくてワン・へは

目を伏せた

 

 

 

まさか

実験にも実習にもついて来る

つもり?

 

 

ウンスが浮気しないなら

ついて行かない

 

 

するわけないでしょう?

これじゃあ勉強にならない

 

 

そうか?

 

 

そうよ

 

 

ふ〜〜〜ん

じゃあ

外で待ってることにするから

今はこれで我慢する

 

 

チェヨンは頬を差し出した

 

  

え?まさか

この教室で??

嫌よ 絶対 無理

 

 

ウンスはひるんだ

 

 

じゃあ 此処にいる

 

 

チェヨンはふてくされたように

机に突っ伏す

 

 

駄々をこねてるただの餓鬼

どうなだめても引かない気がして

ウンスは頬を赤らめながら

なるべくみんなの視線が

他を向いている隙に

机の上で寝ているチェヨンの

頬に唇を寄せた

 

 

これでいい?

 

 

耳元で小さく尋ねる

 

 

今はね

あとでまた

 

 

チェヨンはウンスの頭を

ぽんぽんとすると

長い足で机を乗り越えて

教室の外へ出て行った

ふうと大きく息を吐くウンス

頬がまだ熱い

視線を感じて後ろを振り向くと

ワン・へと目が合った

 

 

げっ 見られた

 

 

そうか そういうことか

チェヨンは確信犯だ

ワン・へに見せつけたくて

キスをねだったのだと

ウンスは 今頃気がついた

 

 

 

半分うわの空の講義が

やっと終わったお昼時

 

今日はウンスお手製のお弁当

わかめスープも水筒に入れて来た

 

人がまばらな医学部棟の外れの

ベンチに腰掛けてのランチタイム

チェヨンはうれしそうに

口を開けている

 

 

自分で食べなよ

 

 

恋人なんだから

食べさせてくれたって

いいだろ

 

 

そう言われて

ちょっと恥ずかしいけれど

チェヨンの口にキンパを運ぶ

 

 

うまい

 

 

わざとウンスの指まで

しゃぶるチェヨン

 

ちょっぴり強引で

ちょっぴり意地悪で

ちょっぴりわがままで

でも

思い切り甘くて優しい

年下の彼氏に

振り回されてドキドキして

毎日 

きゅんとしているウンス

 

さっさと食べ終わって

チェヨンが言った

 

 

食後のデザートは?

 

 

え?

ごめん 用意してないわ

 

 

じゃあ これでいいよ

 

 

ウンスを引き寄せて口づけた

もう油断も隙もない

そう思った矢先

そこに人影がちらついて

ウンスは慌ててチェヨンから

離れた

不満そうなチェヨンの唇を

指でし〜っと押さえて

ウンスは人影を確認する

 

ベンチの背の陰になって

ウンスたちには

気づかぬ様子で

男子学生が話をしている

 

一人は見知った顔

ウネの彼氏だ

 

 

煽っておいて逃げ出すんだぜ

信じらんないよな

自分からつき合いたいって

言って来たくせにさ

簡単にやらせてくれると

思ったからつき合ったのに

当てが外れた

 

 

へえ そうなんだ

そりゃあ 残念だったな

 

 

おまけに 押し倒したら

これ 見てみろよ

噛み付かれてよ

凶暴な女だよな

あんな女 願い下げだ

 

 

そうか

だから昨日急に帰って来たんだ

元気がなかったのに

どうして気づいてあげられ

なかったんだろうと

自分を悔やんだ

こんなくだらない男と

うまくいくように

祈った自分が愚か者に思えて

気がついたらウンスは

その男を

ひっぱたいていた

 

 

あんたにウネはもったいない

なんてことしてくれたのよ

大切な友達に

 

 

怒りに震えて泣き声になる

男はチェヨンに気づかずに

ウンスに言った

 

 

じゃあ あんた

ウネの代わりになる?

そしたら またあの女と

つき合ってやっても

いいよ

 

 

男はにやけた

 

 

あ?

俺の女になんか言ったか?

 

 

チェヨンはゆっくり現れると

庇うように

ウンスを背中に隠した

じろりと男達を睨みつける

 

 

チェ チェ チェヨンか?

お前

 

 

暴漢を一撃して以来

チェヨンの武勇伝は

尾ひれ背ひれをつけて

学内に広がっていた

 

 

ああ

大事なウンスを泣かせる奴は

俺が許さん

 

 

チェヨンが殴りかかろうとした時 

ウンスが止めた

 

 

こんな奴

相手にするだけの

価値もないわ

ヨンの手を汚さないで

今度ウネにひどいことしたら

その時は ヨンに

斬り捨ててもらうんだから

 

チェヨンは頷き

腰を抜かしながら

男達は逃げて行った

ウンスは泣き顔のまま

チェヨンを見つめる

 

 

ウネ・・・

何にも言わないから

私は自分のことで

一杯で・・・

昨日急に帰って来て

おかしいと思ったのに

自分ばかり幸せで

 

 

ぐずっと涙が出た

 

 

いつも助けてくれるのに

なんの役にも立たないわ 私

 

 

ウンスや

自分を責めるな

ウネさん きっと

ウンスがそばにいてくれたら

安心するさ

 

 

そうかな?

 

 

ああ

午後の講義抜け出すか?

 

 

うん

 

 

家まで送るから

 

 

うん

 

 

チェヨンは泣いてるウンスを

ぎゅっと抱きしめて

背中をあやした

 

 

落ち着いたか?

ウンスが泣き顔だと

ウネさんが困るだろ?

 

 

うん

わかってる

 

 

ただそばにいてやれ

俺はウンスのそばにいるから

 

 

うん

ありがとう


 

 

ウンスはやっと微笑んだ

チェヨンが頼もしくて

かけがえのない愛しい人になった

ククァの咲く大学二年の秋だった

 

 

━─━─━─━─━─

 

 

ウンスや

もう行くぞ

 

 

は〜〜い

 

 

新居の高級アパートの玄関で

チェヨンは新妻ウンスを待っていた

ボルドーのスカートに

白いニット

綺麗に身支度したウンスが

部屋から出て来る

 

 

ええっと

アワビ粥オッケー

わかめスープオッケー

ああ お祝いお祝いっと

 

 

ウンスは再び部屋に戻り

大きな紙袋を抱えて来た

そそっかしい新妻を

優しい目で見守るチェヨン

 

 

可愛いベビー服にしたの

双子ちゃんだから

いくらあってもいいでしょう?

 

 

そうだな

ウネさんも喜ぶよ

 

 

ええ 

 

 

昨日会ったら

アン・ジェの奴

舞い上がってたぞ

 

 

うふふ そお?

ねえ 

ヨンも早く欲しくなった?

 

 

ああ 今すぐにでも

作りたいくらいだ

 

 

ば〜か

これから お見舞いでしょう?

 

 

それにしてもなんでうちの病院に

休みの日にまで

行かなきゃならないんだよ

 

 

チェヨンはぼやく

ウネはお見合いで

アン・ジェと出会い恋に落ちて

結婚した

偶然にもアン・ジェは

チェヨンの幼馴染みで

四人で出かけたり

遊んだり

そうしてウネはつい先日

チェヨンの病院で出産した

二人は生まれたばかりの

赤ちゃんに会いに今から

行くところ

 

 

ウネも男運がないって

嘆いていた頃もあったけど

最後にあんないい旦那様を

捕まえたんだもの

帳尻って合うものねぇ



大学二年の頃をウンスは

ふと振り返る



そうだな

じゃあイムジャは?

帳尻合ってるか?

あの頃

喧嘩して別れたいって

イムジャ

言ったこともあったよな



うふふ   そうだっけ?

忘れたわ

私はあなたと結婚して

おつりが来た感じよ



ウンスはチェヨンと手を繋いで

笑った

チェヨンは幸せそうな顔をして

微笑んだ


通りに出ると

くまの着ぐるみを着た子供や

カボチャのパンツ姿の子供に

囲まれる



ん?ああハロウィンね



トリック  オア  トリート

お菓子をくれなきゃ

いたずらしちゃうぞ



俺の嫁さんにいたずらされたら

かなわないな



チェヨンは苦笑いしながら

ディバックから

ごそごそ

チョコレートを取りだした



まあ!ヨンたら



昨日病院でハロウィンを

やったから    その残りだ



さすが小児科!



小児外科



チェヨンが照れた



うふふ

さあウネが待ってるわ

行きましょう   チェヨン

可愛いいたずらっ子さんたち

またね 



ウンスは手を振り

そしてまた

チェヨンと手を繋いだ


初めて手を繋いだ彼は

今    愛しい夫

初めてキスした彼は

今    優しい旦那様

初めてをたくさん重ねて

今がある


ウンスはあの頃と

少しも変わらない気持ちで

愛する人を見つめた 



*******



『今日よりも明日もっと』

たくさんの今が

いつか

きらきらした思い出になる

 

 

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現代版  국화(ククァ)に

おつきあいいただき

ありがとうございました


テーマ「こぐまのタン」の

大学生の二人は

またお届けする予定です

どうぞ

おつきあいくださいませ


最後の最後で

お話がながーくなりました

お読みいただき

ありがとうございました

 

 

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