ウンスは赤い顔したまま

冷蔵庫からガラスポットを

取り出した

 

 

それは?

 

 

チェヨンは興味津々で尋ねる

 

 

夕べのうちに出汁を作って

おいたの

 

 

それから容器に入った赤い物体を

取り出した

 

 

じゃあ

それは?

 

 

何でも珍しいあたり

チェヨンは知りたがりの

子供みたいだ

 

 

これ?   

これはヤンニョム(合わせ調味料)

 

 

それも昨日から?

作り置き?

 

 

うん

チゲにしようとは決めてたの

だから下準備してた

少し寝かせた方が美味しいから

 

 

ウンスは笑った

チェヨンは昨日から自分のために

準備をしていたウンスに

うれしそうだ



だからその笑顔

反則だって


 

ドキドキしてウンスは

話を振った



材料もそろったし

まだ夕飯には少し早いけど

お昼あんまり食べてないし

兼用ってことで

はじめよっか?

そうそう   

昨日の夜の餃子があった

それも入れていい?

 

 

冷蔵庫の中をがさごそ

探し出すウンスの髪の毛が

ふんわり揺れる

 

 

プデチゲに入れるものは

なんでもありなのよ

でもスパムやソーセージ

それとラミョンは外せない

ウネとやるときはね

チーズを入れたりするわ

 

 

へぇ

ウネさんとチゲやるんだ

 

 

そりゃあ 貧乏学生の

強い味方だもの うふふ

 

 

笑うとまん丸の目が

ちょっと細くなって

可愛くて仕方ない

チェヨンは抱きしめたくなる

腕を自分で押さえた

 

 

夕方にはまだ少し早い

午後4時

二人は再び向かい合って

テーブルに座り

ウンスが手際よく

プデチゲを作り始めた

 

 

平たい鍋の中に

材料を綺麗に並べて

真ん中にヤンニョム(調味料)

 

だし汁を注いで

強火でぐつぐつ

ヤンニョムを溶かしながら

五分ほど煮立ててから

ラミョンを加えた

 

 

美味しく出来ると良いな〜

 

 

ウンスが鍋を覗き込んで

赤いだし汁が美味しそうに

煮立って来たのを確認して

最後にちょっとだけ

隠し味で

ダシダ(粉末調味料)を

ぱらりとかけた

 

 

ラミョンが 固めの方が

美味しい気がするの

そろそろいいかな?

 

 

ウンスは箸ですくって

ラミョンを一本つるんと

食べた

 

 

うん 大丈夫みたい

ご飯 どうぞ

 

 

キムチにたくあんに

煮物や和え物を

小鉢に少しずつ盛ったものも

テーブルに並んでいる

 

 

最後にね このだし汁を

ご飯にかけて食べるの

これが旨いのよ〜

ねぇ 初ラミョンはいかが?

 

 

よく動く口は

黙っていることへの

照れ隠しなのか

ウンスは

いつも以上に饒舌だった

 

 

うまい!

 

 

チェヨンは素知らぬ振りで

ばくばくと

口にプデチゲを運ぶ

 

にっこり笑った目の前の

チェヨンにウンスは

ますます どぎまぎとして

鍋の中を探す振りして

俯いた

 

 

ほら ソーセージも

食べて

 

 

ぐいっと口に放り込むと

チェヨンがむせ返る

 

 

あち あつっ

 

 

ごめん 大丈夫?

お水 お水

 

 

ウンスは慌てて

コップを差し出して

今度はウンスの腕が

鍋の縁に触れた

 

 

きゃっ!

 

 

大丈夫か?

赤くなってる

 

 

チェヨンはウンスの腕を

すぐにキッチンの水で

冷やして

心配そうに覗き込んだ

 

 

大丈夫よ

ごめん 心配かけて

 

 

いや 俺こそ

 

 

チェヨンはふふっと頬を

緩めて言った

 

 

なんか 俺・・・

 

 

なによ

 

 

ウンスが少しつんと

聞き返す

 

 

余裕なさ過ぎ

ウンスの家だと思うと

緊張しちゃって

 

 

え?ほんとに?

 

 

ああ

 

 

私も・・・

ヨンが目の前にいると

思うと ドキドキして・・・

 

 

無意識に自分をヨンと呼ぶ

その唇がかわいくて

チェヨンはウンスを抱きしめた

 

 

ヨン・・・?

 

 

首を傾げて

チェヨンを見上げた

 

 

ウンスや

落ち着くおまじない

知ってる?

 

 

え?

 

 

こうするの

 

 

柔らかなチェヨンの唇が

ウンスに重なった

 

それだけでは

物足りないようで

チェヨンは

甘噛みするみたいに

ウンスの唇をなぞっていく

 

テーブルの上のプデチゲの

鍋がぐつぐつと

音を立てている

 

ウンスの膝はがくがくと震え

息継ぎの仕方がわからない

 

少し開いた唇の隙間を

埋めるように

チェヨンの舌が

優しくからまって来て

初めての大人の口づけは

こんなにも甘いものなのだと

ウンスの心臓がきゅんとした

 

からだの力が抜けて行く

もう支えなしでは

立っていられないほどに

チェヨンが恋しくて

自分の腕を

チェヨンの背中に回し

抱きしめて言った

 

 

ヨン・・・

大好き

 

 

俺も

 

 

耳たぶをかすめる

チェヨンの吐息が熱かった

 

もう駄目だ

どうにかなってしまいそう

 

ウンスが身をよじると

チェヨンはすっと離れた

 

 

 

*******

 

 

 

『今日よりも明日もっと』

大人の階段は少しずつ

二人の恋を確かめるように

 

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☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*

 

 久しぶりに

激あま警報発令中です


現代版

お楽しみいただけたら

うれしいです


またお付き合いくださいませ




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 プデチゲの描写でお腹が空いた
haruでした  (;^ω^A