すうっと近寄る漆黒の輿
弁髪に胡服に身を包んだ
男が一人降りてきた

チェヨンはすぐさま
輿の前に立ちはだかり
トクマンは剣を抜いた

ところがその初老の男は
王妃様の輿に跪いて
「姫様  ポタブシルリ様」と
と言った

王妃様はかすかに
輿の窓を開けて男を見た
そして驚いたような声をあげた


爺や


父親魏王に仕えていた
内官だった


その名前で呼ばれるのは
久しいのぅ


王妃様は微笑んで答えた
そこへとことこ
歩いて表に出てきた
ウンスとタンを見て
チェヨンは渋い顔をした


イムジャ
中で待っておれと
言うたのに


だって刺客じゃないもの
見ればわかるわ
トクマンさん
剣を仕舞わなくちゃ


トクマンは慌てて
剣を収め頭を掻いた


立ち話もなんだから
中へどうぞ
ヘミ   ヒョリ
元のお客様のご案内を
王妃様   それから
えっと


チェ尚宮が耳打ちする


大妃様の従姉妹様
タルギ様じゃ


うふふ   そうでした
お初にお目にかかります


小豆色のチマチョゴリを
すっきり着こなしたタルギは
細かいことを
あまり気にしないようで


まあよい
気にするでない


と   微笑んだ


さあ  行きましょうか?


民達が遠巻きに見守る中
王妃様が現れ
ウンスと二人ならぶと
光り輝くような美しさ
民達から歓声が上がった

チェヨンは美しい妻を
見せたくなくて
さらに不機嫌な顔になる

そこへ
真っ黒な子犬の柴犬が
民の中からタンめがけて
走り出して来た


あうあうあ〜


タンに飛びかかる前に
民の中を見回っていた
スリバンヒョジュが
子犬を捕まえた


あら   確かこの子
カナタじゃない?
あの角を曲がった所に
住んでるワンちゃんよ
小屋から飛び出して来たの?
この前迷い込んできたから
覚えてたのね


くぅーんとなく柴犬の頭を
ウンスはなでた
柴犬はタンを見つめている


うふふ
今は忙しいから
また今度遊びに来てね
ヒョジュ悪いけど
この子返して来て


ヒョジュはコクンと
頷き
子犬は首をつままれ
ぶらぶらしながら
去って行った


賑やかでよいのぅ


王妃様は微笑んだ


うふふ   本当に
我が家は
毎日賑やかなんですよ


ウンスは朗らかに答え
チェヨンを見つめ
チェヨンは微笑み返した


屋敷の中を案内しながら
王妃様達を客間に通すと
元からの使者が待っていて


これをナラン姫様から
お預かりいたしました
こちらのご子息の
お祝いに是非にお届けしたいと
仰られれまして


螺鈿細工の豪華な卓に
似合う豪華な水晶の塊


まあ!


大きな水晶の塊に
ウンスはびっくりして
開いた口がふさがらなかった


よい水晶じゃ
元では質の良い水晶が
採れるのじゃ


王妃様は満足そうに
ウンスに言って
それから使者に尋ねた


ナランは息災か?


はい   王妃様
お腹もだいぶ目立つように
なられて
お幸せそうなご様子でございます


そうか


きっと慶昌君様も
お喜びですね


添い遂げることのなかった
幼い二人の行く末は
全然別の道になってしまったが
ナラン姫の様子を聞いて
ウンスはほっとしたように
呟いた


そうじゃのぅ


タンはきらきら光る
水晶が珍しいようで
触ったり
ちょっと舐めてみたり


うふふ   タン
食べ物じゃないわよ


ウンスはころころと
楽しげに笑った

王妃様はその笑い声に
つられるように
笑い転げると
それからチェ尚宮に命じ
立派な表装がされた絵を
卓の上に広げた


王様から預かりし
祝いの品じゃ
自らお書きになられたのじゃ
檀君神話(タングン)をもとに
描かれたそうじゃ


可愛らしいコム(熊)の絵に
綺麗な色がついていた


古朝鮮を建国した?あの?
確かドラマで見たわ
人気のドラマだったの
えっと  テワンサシンギ
(太王四神記)だっけ?


ウンスは興奮して
思わず天界語
チェヨンは元の使者に
誤魔化すように
咳払いをした


じゃあ
この子グマがタン?


ウンスはチェヨンが
気を揉んでいることなど
お構いなしで
話を続けようとする


たん


タンが突然口を開き
コム(熊)の絵をじっと
見つめた
するとなんだか
コムが笑い返したように
ウンスには見えた


タンのお部屋に
飾りましょうね
コムよ  コム


こーむー


タンの言葉にその場にいた
王妃様も高官達も
微笑ましく和み
チェヨンの心配は杞憂に
終わった

やがて中庭の池に架かる
橋の上から
カヤグムとテグム  チャンゴの
美しい調べが聞こえてきた
典医寺の仲間が祝いの演奏を
始めたのだ
サラとミファンの華麗な舞に
皆の目がひきつけられている

タンは卓に手をついて
立ち上がると
金屏風の前でお尻を
上下にびょこぴょこと振って
踊っているように見えた

チェ尚宮の目尻は
これ以上下がらないくらい
下がりっぱなしで
難しい顔しか見たことがない
メリ  ユナ   ポラ   オク
王妃様の警護に当たる
花組の武閣氏をはじめ
みんなが驚いてチェ尚宮を
見つめている

そこへソンオク顔負けの
かくしゃくとした
老婦人カンスが現れた

トルチャンチは
まだまだ続く


*******


『今日よりも明日もっと』
遠くにいる人をふいに
思い出す
暖かな思い出とともに




  ☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*

楽曲に合わせて
お尻をぴょこぴょこ
このエピソードは
グルの
「トルチャンチの頃に」に
ほりん様から寄せていただいた
お子様のトルチャンチの頃の
思い出を描かせて頂きました

ありがとうございました



  ☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*


新しくご出演頂いた皆様の
ご紹介


★kanata様   近所の子犬カナタ
白犬ウォルやファンと一緒に
タンと遊んでくださいませ

★こむなお様   コム
ぬいぐるみじゃなくて
すみません  王様の絵の中に
収まりました
タンの部屋でタンを見守って
くださいませ

★カンス百合子様   
かくしゃくとした老婦人カンス
曽祖父の末の弟の娘という
複雑?な設定にいたしました
お話の都合上ちょっと遠縁ですが
お許しください

そして以前の企画からの
ご登場

★あさがお様   ナラン姫
★茶々様    ポムの女中ソルリ
★ばぁ猫様   コヤン


まだまだ続くトルチャンチ
おつきあいくださいね〜



  ☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*


アメンバー様へのご連絡


アメ限にコメを
ありがとうございます

実はまだお一人目しか
決まってないみたいで  (^▽^;)
もし良かったら
もらってくださいませ

コメは何回でも大丈夫です
明日の昼間ストップのコメを
入れるまで受付中です  v(^-^)v