朝から屋敷は賑やかだった
通いの女中ユウとハヌルも
愛くるしい黄色みががった
子犬ファンを可愛がり
愛馬チュホンの世話係の
ウォンも
思わぬ子犬の出現に喜んだ

一人どことなく不機嫌な顔の
ソクテ


何もチルベェに頼まなくても
屋根の修理も犬小屋も
俺がやるっていうのに


餅は餅屋
大工仕事はやっぱり大工さんに
頼むのが一番だよ
それにヨボが怪我でもしたら
大変じゃないか


ヘジャはみんなに
聞こえないように
こそっとソクテに耳打ちした

ソクテは少し照れながら
それでもまだふくれている


あいつのことは
昔からよく知っているが
ヘジャのこと
気に入ってるじゃあねぇか


へ?
何を言い出すのやら
チルベェさんには
かわいい嫁さんがいるだろ


嫁さんがいても
他の女にも目が行くかも
知れねぇ


はん?
じゃあ   あんたは
このヘジャがいても
他の女に目が行くってことかい?


藪蛇ね ソクテったら


背後にウンスがいて
にやにや笑っている


朝から仲良しだこと
お互いに悋気合戦?
うふふ


な 何をお戯れを!
奥様!
おや 旦那様と若様は?


奥の間でご飯を待って
いるわよ


ヘジャとしたことが
朝から子犬にかまけて


隣の大きな犬じゃないの?


ウンスはここぞとばかりに
ヘジャをからかった


もう
お戯れはそれくらいに


ヘジャは顔を赤くして
厨房へと逃げて行った


━─━─━─━─━─


典医寺の朝
ウンスがまだ出仕しない時間に
何やら 曲を奏でる音がする

典医寺の有志が
トルチャンチの祝いの席に
華を添えようと
ウンスに内緒で特訓していた

チェ侍医はテグム(横笛)
オ・アムはチャンゴ(長鼓)

トギは口がきけないが
その分 耳がものすごく良い
わずかな音のズレもすぐわかり
身振り手振りでダメだしをした
一番ダメだしが多いのは
アムのようだが


トギさん  なかなか手厳しい


カヤグム(伽耶琴)を
弾いているミヒが笑った
ミヒは医女で
子供の看護には定評があり
カヤグムの名手


本当本当


同じくカヤグムを演奏する
ケイが相槌を打つ
ケイもまた産科の医女だった


カヤグムの音色とっても
素敵よ


サラがうっとり言った
サラは楽器が出来ないので
薬員のミファンとともに
音楽に合わせて
舞を舞うことになっていた


僕は?どうです?
サラ先生


アムが勇んで尋ねたが
すかさずトギにケッと睨まれ
すごすご下を向いた


さて
そろそろ
医仙様が参られる時刻
もう一度合わせたら
また
おのおので鍛錬ですね


鍛錬などいらないくらい
上手にテグムを吹くチェ侍医が
優しく微笑む

こうして典医寺の有志による
トルチャンチの
楽曲の贈り物の準備も
着々と進んでいる


チェ尚宮は王妃様の
トルチャンチへのご出席が
なんとか叶わぬものか
臣下の息子の祝いの席に
王様自らお越しになるのは
慣例にないとしても
なんとか王妃様に
お越しいただけないかと
王様に願い出た

王妃様がトルチャンチに
行きたがっていることを
十分わかっていた王様は
警護を万全にするよう
申し渡し
王様の母上大妃(デビ)の
従姉妹タルギに一役買って
もらうことにして
王妃様が王宮の外に
出ることを許すことにした


タルギ様とは
チェ尚宮
気がつきませんでした


感服したように
王様に言うと
にやりと笑って
王様は言った


余のまわりには
策を講じるのが
上手な者が多いから
自然と策を労する術が
身についたのじゃ
タルギ殿なれば
王族と違い自由の身
王妃とともに出かけるには
適役であろう?


はい   いかにも


チェ尚宮は頷く
王妃様はタルギと一緒に
大妃の実家の菩提寺に
ミレ公主の
安寧を祈願に行った帰りに
チェ家に立ち寄ったと
回りくどい体裁で
王室の体面を保つこととなり
トルチャンチへの
御臨席が叶うこととなった


まったくこれだから
この時代の慣例など面倒だと
ウンスに言われそうじゃ


チェ尚宮は密かに苦笑い
トルチャンチが近い
タンの
可愛らしい顔を思い出し
ほっとした


秋の空に蜻蛉が
ふわりと飛んでいた


*******


『今日よりも明日もっと』
あなたの笑顔を想像し
準備するのは
とても幸せ



☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*


ご出演頂いた皆様のご紹介


★yu-kisiina様   典医寺医女ミヒ
カヤグム名手
ぜひ当日も素敵な演奏を
お願いします

★sora2mama3様   典医寺医女ケイ
カヤグムのメンバーに参戦
どうぞよろしくお願いします

★ポヨン様   薬員ミファン
華麗な舞を待ってます

★いちごン様   大妃従姉妹 タルギ
設定若干変えました
王族じゃなくてミアネヨ




お楽しみいただけると
幸いです

また
おつきあいくださいませ