ヨン 誰かに見られたら・・・


チェヨンの突然の抱擁に
びっくりしたウンスは
チェヨンの耳元で囁く


構わないさ
言いたいことがある奴には
言わせとけ
妻を抱きしめて何が悪い


ヨンったら・・・


力を抜きかけた時
背後から声をかけられた


チェ科長 まだいらして
よかったぁ〜


ウンスは慌てて
チェヨンの腕を振りほどいた
チェヨンが
ぎろりと後ろを振り返ると
そこには人なつっこい顔で
間の悪いトルベがいた


あ?何のようだ
だいたい俺は休みの日だぞ


そうなんですけど〜
パタ君
急に熱が上がって来て


ん?術後の状態は
落ち着いていただろう?


ええ だから
チェ科長に連絡をいれようと
そうしたら
こちらに来ていると
ヒョリさんから聞いたもんで・・・
間に合ってよかった〜


チェヨンはウンスを見て
呟いた


すまない イムジャ
少し待っていてくれるか?


うん 当たり前よ
患者さんを
放っては行けないわ
ねえ 私も病棟に
付いて行ってもいい?
邪魔になる?


構わんが?


あなたの仕事場
見たい


どうぞどうぞ
こんな綺麗な奥様が
病棟にいらしてくれたら
みんな大喜びですよ


トルベが言うと
急にチェヨンは
不機嫌な顔つきになった


やっぱりやめとけ
イムジャは見せ物じゃない


え?いや 
そんなつもりじゃなくて
えっと・・・


うわずる声で言い訳を
探すトルベに
ウンスは微笑んで言った


うふふ
ありがとう
お世辞でも 綺麗な奥さんって
うれしいわ


お お世辞じゃないです
医局で評判ですよ
科長の奥様はめったに
お目にかかれない美人だって
科長がうらやましいって


チェヨンがトルベの頭を
ぱちんと叩いて睨んだ


二度と医局で
俺の妻の噂話をするな!
いいか!


は はい!
二度としません
二度と〜


トルベは看護師トギの
クビクビ!という声が
頭をよぎって青くなった


━─━─━─━─━─


病棟の個室に
寝かされている男の子は
まだ小さかった

白衣を身につけたチェヨンは
いつも以上に凛々しく
すらりとした長身に
白衣姿はよく似合い
現場のナースが
見とれているのがわかる

少しの悋気と
いっぱいの誇らしさで
ウンスは頬が上気した

そして
頬が刷毛で紅を塗ったみたいに
ふんわり染まったウンスを
チェヨンが愛しそうに
見つめている


じゃあ 此処で待ってろ


チェヨンは病室の前で
ウンスに言うと
頭をぽんと
軽く叩いて中へと消えた
ウンスは扉の隙間から
そっと覗いてみた

チェヨンは男の子に
聴診器をあて
優しい笑顔で頭をなで
そばにいたトギやトルベに
状況を尋ね
カルテを見ながら確認している

それから点滴の指示を出し
心配そうな付き添いの両親に
「大丈夫ですよ
少し熱がありますが
術後の経過は順調ですから」と
微笑むと
やっと
両親はほっとしたように頷いた


何かあればいつでも
言ってください
今日はトルベ先生が夜勤ですが
こう見えて腕はいいですから


冗談めかして
その場を和ませ
チェヨンはトルベとともに
病室を後にする
そして隠れて
すぐさまトルベにお説教


あのなあ
お前がおどおどしてどうする
患者や家族が不安になるだろ!
お前レジデント4年目だろ?
なんでも俺に頼らず
もっと自信を持て
お前ならちゃんとやれるから


はい チェ科長


トルベはうなだれた


もしも
急変するようなことが
あれば連絡を寄越せ
でもなるべく寄越すな


は?はあ


じゃ 俺は今度こそ帰るぞ


白衣を脱ぎ捨て
トルベに渡すと
チェヨンはウンスの手を引いた


イムジャ 帰るぞ


あ うん


ウンスは詰め所にいる
看護師や医者に
ぺこっとおじぎをすると
チェヨンに手を掴まれたまま
歩き出した


余計な邪魔が入った


ぷんと言うチェヨンに


でもおかげで
ひさしぶりにかっこいい
あなたの白衣姿を
見られたわ


と    ウンスは
うれしそうに言った


惚れ直したか?


うふふ
ずっと惚れっぱなし


チェヨンは何も返さずに
猛然と歩き出し
駐車場で待つ愛車に
ウンスと乗り込んだ
そして
もうこれ以上は誰にも
邪魔させない・・・と
アクセルを踏み込んだ


━─━─━─━─━─


部屋に付いた頃には
辺りはすっかり暗くなり
居間の正面の
大きなガラス窓には
星空が映り

部屋の灯りを付けると
キッチンに飾られた
黄色のヘバラギが
二人を出迎えてくれた


夕飯の準備がされた
テーブルを見て
ウンスがにっこり微笑み

その顔に我慢できずに
ついばみ始めたチェヨンは
ウンスを抱き上げると
寝室へと運ぶ


駄目だってば
お腹空いたし
お風呂もまだだわ


だが もう待てない


ほんとに駄目

ヨンの手料理
楽しみにしてたのに〜
お腹空いた〜


ウンスが子供みたいに
チェヨンの腕の中で
バタツキながら訴えた


ねえ
ちゃっちゃと食べて
それから
ゆっくり   しよ


ゆっくり?する?


チェヨンの腕が一瞬緩み
ウンスはやっとのことで
逃げ出し
ドレッサーの上にいる
こぐまのぬいぐるみを
くるっと後ろに向ける


見ちゃ駄目よ


おどけて笑うと
チェヨンが追いかけて来て
後ろから恋しそうに
抱きしめた
それから
ものすごく後悔したように
叫んだ


あ〜〜〜〜‼︎
何でよりにもよって
プデチゲにしたんだ!
食べ終わるのに
時間がかかるじゃないか


あら プデチゲなの?
私    大好きよ!
ねえ
もしかして
覚えていてくれたの?
あなたに助けてもらった
お礼に
初めてごちそうしたのを


ああ 忘れるもんか
あんなに
うまい飯は初めてだった


うふふ 庶民の味に
驚いていたくせに
インスタントラーメンなんて
食べたことないって
言ってたじゃない
それに
ただ具材を突っ込むだけよ


チェヨンは首を振った


イムジャの部屋に招かれて
俺がどれだけうれしかったか
ずっと好きだったウンスと
あの日やっと
恋人になれたんだから


私はドキドキだったわ
ヨンは大病院の御曹司
ルックスもよくて
頭もものすごく良くて
それに年下・・・
絶対釣り合わないって
好きにならないように
警戒してたもの
それなのにヨンったら
どんどん
私の心の中に入って来て・・・
おまけに自分の身を犠牲に
私を守ってくれて・・・


ウンスはチェヨンの
脇腹を見た


当たり前だろ
誰にもイムジャには
指一本触れさせない


三歩離れるなって
あれから何度言われたか


ウンスは肩をすくめた


ずっとイムジャを守るって
初めて出会った
あの奉恩寺で俺は誓ったんだ


私もあの時
恋に墜ちた


俺に墜ちたか?


うん
あらがえなかったもの
自分の気持ちに・・・


それでいい


うふふ
夕飯楽しみよ
キッチンに行きましょう
それにね
本気で
ヨンの子供欲しくなった
きっとヨンは
いいアッパーになるわね


ウンスは優しい笑顔で
患者の男の子に接していた
チェヨンを思い出して
俯き加減で小さく囁いた


いいのか?
もう少し待ってと
言ってただろう?


うん   でもね
旦那様の協力があれば
なんとかなるって
ヨンファが言ってたもの
その通りだと思う
あなたがいてくれたら
私は大丈夫よ
頼りにしてるね
旦那様


おう
任せとけ


チェヨンは幸せそうに
返した


太陽に吸い寄せられる
ヘバラギのように
いつも互いに吸い寄せられて
あなただけしか見えなくなる
これからもずっと
そんなふたりでいたい


キッチンでは
チェヨンが手際よく
夕飯の支度を開始し
テーブルの上では
野菜やソーセージや
インスタントラーメンが
鍋の中で煮込まれて
食欲をそそるいい匂いが
立ちこめた

蒸し暑い夏の夜 
エアコンの効いた
涼しい部屋で
一つのお鍋を仲良く
一緒につつく
汗をかいたらシャワーを浴びて
それから・・・


愛しい時間が待っている


待っててね
もうすぐ私
あなたのものになるから


*******


『今日よりも明日もっと』
あなたをずっと見つめて
あなたのためだけに
咲いていたい

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☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*


昨年暮れから
ぼちぼち書き始めた
「こぐまのタンシリーズ」
現代版の二人を
今回は
一挙に十話お届け致しました

書き始めるとついつい乗って
楽しく書かせて頂きましたが
如何だったでしょう?

現代版の感想などございましたら
お寄せいただけると
うれしいです

皆様に
気に入っていただけたなら
また気まぐれに書いてみたいな〜
などと・・・(///∇//)


そろそろ本編?
もう少し寄り道?
徒然考えてみます・・・

またおつき合いくださいませ

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haru家   こぐまのタン



☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*


台風の被害に遭われた皆様へ

心より
お見舞い申し上げます



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