黄色いヘバラギが
グレイッシュな
シャツによく映えた

うっかり見惚れるくらい
格好がよくて
ウンスはなんて言ったら
いいのかわからなくなって

「会いに来たの?」
「会いたかったわ」
「わざわざ来なくても」

なんだかどれも違う
気がして
黙ってチェヨンを
見つめた
チェヨンはチェヨンで
大喜びしてくれるかと
思ったのに
無言のウンスに戸惑い
じっと見ている


お迎え夕方じゃなかったの?

綺麗なヘバラギを見せたくて


二人が同時になんとなく
話し出して
顔を見合わせて
なんだか笑った

それからチェヨンは
照れたように
両手を広げて見せた


イムジャ
おいで


そっか   
こう言う時は
言葉じゃないんだ
ウンスは妙に納得して
病院の駐車場なのも忘れて
駆け寄って
その腕に飛び込んだ

お日様の匂いと
夏の湿った風の匂いと
そしておんなじ
シャンプーの香りがする


汗くさいか?


くうんと息を吸い込んだ
ウンスにチェヨンが尋ねる


全然
ヨンの香りがするから
チャージしてたの


そっか
じゃあ  俺も


チェヨンはウンスの
頬を手のひらで挟んで
ちゅうっと唇を吸った


患者さんに見られる


構うもんか
みんなにうんと見てもらえ
俺のウンスだって


もう   馬鹿


少しだけ離れた唇の先で
さえずるように会話した


まだ時間あるか?


ちょっとなら
もうすぐ回診なの


そりゃあ
チーム長はいないとな


からかうような言い方に
ウンスは背中に回した指で
きゅっと軽く
チェヨンの背中をつねった

夏の太陽がジリジリして
頭がくらくらするくらい
暑いのに
お互いなかなか
背中に回した腕がほどけない


暑い   
とけちゃいそう
ヘバラギ枯れちゃうわ


ウンスの呟きに
チェヨンは笑った


そうだな
車に乗るか
近くにコーヒーショップが
あったから


ウンスはエスコートされて
助手席に座り
綺麗なヘバラギの花束に
顔を埋めた


綺麗なヘバラギ


だろう?
イムジャに見せたくて
飛んできた


うふふ
なんだか言い訳みたい
でもすっごくうれしい


チェヨンの手が伸びて来て
ウンスの頭の後ろを
押さえ込む
車の中で交わす口づけは
切ないくらいに甘かった


ガラス張りの
コーヒーショップの前に車を止め
そこそこ客で埋まっている店の
カウンターでチェヨンが
注文をした


コーヒーフラペチーノ
ウンスもそれでいい?


うん
暑いからフラペチーノが
いいと思ってた


チェヨンは頷いて
優しく微笑む
それからタイミングよく
空いた窓際の
二人がけのソファーの席を
見つけ
ウンスと手を繋いで
隣同士    腰掛けた

冷房が
効き過ぎなくらいの室内に
冷たいフラペチーノを
ごくんと飲むと
ぶるっと身震いするくらい
身体が冷えた

いつの間にか
チェヨンの腕が肩に回り
ぐっと引き寄せられる


いい大人が恥ずかしい


ウンスが体裁を気にして
言うと


そんなこと言うなら
喋れないように
その口塞ぐぞ


と   顎に手をかけた


だ   だめ!
夜まで待って


ウンスは慌てた


つまんないな


チェヨンは口を尖らせ
だが思い直したように
ウンスに告げる


絶対だぞ
約束
ウンスを抱きたい
このところ
ずっとお預けだからなぁ


ストレートに
チェヨンがぼやいた


私だって
ずっと   ずっと


ウンスは頬が熱くなる


ずっとなんだよ


教えない!


チェヨンはくっと笑う


まあいいさ
夜になればわかるから


ウンスの気持ちを
見透かしたように言うチェヨン
ウンスは知らんぷりを
決め込んで
チェヨンの肩にもたれながら
フラペチーノを口に運んだ

甘過ぎず  苦過ぎず
シャリンとしたフラペチーノに
暖かな腕が   丁度良かった


そう言えば最近
院長が気持ち悪いの


ウンスは思い出したように
チェヨンに言う


あん?なんかされたか?
もしいやらしいことでも


違う違う


ウンスは笑って答えた


今まではなんの力もない
私のことなんか
鼻も引っ掛けなかった人が
急に愛想がよくて
お困りのことはありませんか?
ってわざわざ聞きに来るのよ!
何かって言えば
義父様によろしく
お伝えくださいって言うし
なんだか慇懃無礼なのよね


ああ〜
キ・チョル院長は
父さんの大学の後輩だからな
それにきっと
父さんの後を引き継いで
医師会の会長に
収まりたいんじゃないか?
ウンスにゴマスリだな


やあね   私にゴマスリしても
なんの役にも立たないのに


そういう奴は
放っておけばいい
まったく
困ったもんだな


チェヨンが
しかめっ面で答えた


ほんとね
院長はなんだか
権力が好きそうだもの
堅実で奥深い
義父様とはタイプが
違うわ
なんだか中身が
ペラッペラの気がする


ペラッペラか
そりゃいいなあ〜


チェヨンは楽しそうだった
他愛ない会話をして
時々互いに髪をなで
指先を絡める

一分一秒がいたましくて
ずっとこうしていたいのに
ウンスは
はあ〜〜とため息をついた


行かなくちゃ
時間だわ
ヨンは家に帰るの?


ああ


ヘバラギを
水に挿しておいてくれる?
萎れちゃうから


わかった


夕方また来てくれるの?


ああ   当たり前だ
他の奴にエスコートされて
たまるか!


なんの話?


ウンスはキョトンと尋ねた


なんでもない
とにかく待ってろ
迎えに行くから


うん
わかったわ


ウンスを病院に送り届けて
アパートに戻ると
なんだかひっそり
寂しく感じて
部屋が
いつもより広く感じた


*******


『今日よりも明日もっと』
二人きりの時間が愛しくて
もっとあなたを
好きだと感じてしまう


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