あ〜 良く寝た

ウンスは伸びをするように
目覚めようとして
チェヨンに抱きしめられた
ままの体勢だと気がついた


こう毎日 暑いと
エアコンもないし
ぴったりくっついているのは
さすがに暑いわね
去年の夏は
どうしていたんだろ?
お腹が大きくてもっと
暑かったはずなのに・・・


ウンスは苦笑し
眠っているチェヨンを
起こさないように
腕の中からすり抜けると
ごろんとチェヨンと反対に
転がった
寝台の端は布団が少し冷たくて
気持ちがよかった

タンはまだ寝ていた
小さな鼻がひくひくと
息をしている
ぷっくりしたほっぺたが
赤ん坊らしくてウンスは
とても気に入っていた

目元や鼻筋は
ますます父親そっくり
愛しい夫の遺伝子を受け継いだ
息子のタン
この子の未来が明るいようにと
ウンスはいつも願っていた

ウンスは
体が寝汗をかいて
しっとりと汗ばんでいることに
気がついた


あ〜 さっぱりとシャワーを
浴びたい気分だわ


呟いたウンスの気配で
目を覚ましたチェヨンの腕が
後ろからまわる


昨日はとっとと寝たくせに


拗ねた口調が可愛く聞こえた


ごめん・・・でも
おかげですっきりとした
目覚めよ
あとは朝風呂に入れば
言うことなしだわ


俺はちっともすっきりして
おらぬ


あら・・・


ああ


チェヨンの手のひらが
ウンスを求めて
もぞもぞと動き出す


タンが起きるわよ


まだ 寝ておる


でも・・・


ウンスの急所を
知り尽くしている
チェヨンの手に翻弄されて
結局 朝から
ひと汗をかくこととなり


もう ヨン
駄目だってば


ウンスの甘い嫌々が
閨に響いていた


━─━─━─━─━─


ヘジャは毎日を
忙しく過ごしていた
ご主人夫婦に
ソクテとも結婚の許可をもらい
周りにも公認の仲とはなり
ウンスの計らいで
今までよりも
ずっと大きな部屋をあてがわれ
二人は一緒の部屋で
暮らすようになっていたが
婚礼は挙げていなかった
主人夫婦が忙しかったのも
あるが
この年で恥ずかしいと
ヘジャが頑に拒んだのだ
そして 実はヘジャ達は
本当の夫婦にも まだ
なっていなかった

隣に人の気配がする幸せを
感じてはいたが
それ以上はどうにも自信が
持てなくて なんとなく
避ける日が続いていた
ソクテは無理強いするような
男ではなく
逆に無理強いしてくれた方が
体裁が保てるのに・・・と
思ったりもしてみたが
それをソクテに言うのも
やはりヘジャには憚られた

どうやったら
あんな風に恥ずかしげもなく
べたべたと仲睦まじく
いられるのだろう?
ヘジャには
夢のまた夢であった


使用人達が集まる部屋で
ヘジャは朝餉を食べている
通いの女中達に向かって
念押しをした


今日は 旦那様が急なお休みで
お屋敷にいらっしゃるから
奥のいつもの掃除は
取りやめだよ
それから 
もちろん中庭の掃除もね


あら どうして?
構わないじゃない


ユウが尋ねた


使用人が奥をうろうろ
していたら 
せっかく ご家族で
のんびり過ごされる時に
お邪魔になるだろう?
それに旦那様は面倒なことが
お嫌いなんだ
いちいち使用人から
挨拶を受けるのも面倒なはず
そんな暇があったら
奥様のお顔や若様のご様子を
眺めていたいんだよ


はぁ〜
噂通りだわ
高麗の鬼と言われた
大護軍チェヨン様なのに
本当に愛妻家よね〜


そこがまたいいのよ
それに美丈夫だし


ユウとハヌルは
滅多にお会いできない
ご主人様が
同じ屋敷にいるというだけで
なんだか はしゃいでいた


浮つくのはよしておくれよ
せっかくのお休みなんだ
ゆっくり過ごさせて
あげたいんだからね


は〜い


浮き足立っているユウと
ハヌルとは対照的に
ミヒャンはどことなく
冴えない顔色をしていた
あんなに
ソクテとミヒャンの仲を
悋気したヘジャも
ソクテと想いが通じてから
というもの
ミヒャンの様子にも気配りが
できるようになった


どうかしたのかい?
ミヒャンは
元気がないようだが


いえ そんなことは・・・


ミヒャンが笑顔を作る


そうかい?
ならば 畑の作業を
手伝って貰おうかね


はいとミヒャンは
頷いた


ウンスの提案で
チェ家では今年初めて
小さな小さな畑を作った

体裁など考えない女主人は
中庭に畑を作ろうとしたが

立派な庭の景観に
畑はそぐわないと
ヘジャは厨房と使用人部屋の
間の空き地をソクテに
ふかふかに耕してもらった

いつの間にか
ヘジャ以上に熱心に
ソクテは
野菜作りに精を出して
畑の土作りをすると
そこへ
農家から分けてもらった
きゅうりと茄子の苗を
手始めに 植えた
その横には葱も生えている

ソクテ自慢の小さな畑には
オイ(きゅうり)の黄色い花と
カジ(茄子)の薄紫の花が
このところの
天気の良さで
綺麗に咲き始めている


手入れがすんだら
奥様にもご覧頂こうかね
じゃあ 頼んだよ


ヘジャは休日の朝をまったり
過ごしているだろう
ご主人夫婦の朝餉を用意して
奥の間へオクリョンと
共に向かった


ハヌルとユウは洗濯にいそしみ
ウォンは
薪を割り朝風呂を焚く準備
ソクテはミヒャンと畑の手入れ
こうしてまた
つつましい日常が動き出した


今日も暑くなりそうだねぇ


ヘジャは廊下から
空を見上げて呟いた


*******


『今日よりも明日もっと』
小さな幸せの発見が
気持ちを優しくしてくれる



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