ボルムタル村から都に近い
船着き場に降り立つと
王宮からの伝令をかねて
テマンが来ていた
いかがした？
王宮で何かあったか？
大護軍
隊長からの伝言で
都に着き次第
王宮に参内していただきたい
とのことです
何ゆえだ？
屋敷にも戻らぬ前にか？
はあ
だけど
なんでも祝賀の儀の
ことだとか・・・でも
俺もくわしいことは
聞かされてないんです
テマンは申し訳なさそうに
言った
そうか
わかった
チェヨンの目つきが
厳しく変わる
うふふ 王宮に近づくと
もう大護軍の顔に戻ってるわ
チェヨンとテマンのやり取りを
聞いていたウンスが笑った
しょうがないわよ
王宮で
必要とされているんだもの
チェヨンは渋い顔をして
頷いた
お休みを貰えただけ
有り難いことだわ
私も明日出仕しようかしら？
もう一日休みを貰っていた
ウンスが呟いた
イムジャはもう一日
予定通り休むが良い
タンも疲れておるであろうし
でも・・・ヨンだって
疲れているでしょう？
そのようなこと
案ずるな
イムジャと俺は鍛え方が
違うゆえ
俺は大丈夫だ
チェヨンは
心配そうなウンスの
頬を指先でなでて微笑んだ
ふたたび輿に乗り換えた
一行は都の屋敷を目指す
タンは船の固い床の上でも
ゆらゆら揺られるような
波を受け
ぐっすり昼寝をして来た
輿に乗り換えると
今度は元気にチェヨンの
足の上で跳ねたり
ウンスの膝の上で甘えたり
買ってもらった笛を吹いたりと
狭い空間を忙しく動いている
ほんと タンは元気ね～
私は長いこと揺られて
腰も痛いわ
ウンスは腰をさすりながら
笑った
揺られたからだけでは
なかろうに
チェヨンがからかう
もう！ヨン
チェヨンはウンスを引き寄せ
その細い肩を抱きしめ
唇を重ねた
都の外れで
チェヨンの愛馬チュホンを
引いて来たウォンと
ウンス達の護衛のための
ウダルチが待っていた
チェヨンは急き立てられる
ように しょうがなく
ウダルチにウンスとタンの
護衛を任せると
テマンとともに王宮へと
向かう
イムジャ 行って参る
そんな格好でいいの？
王宮へ行くのに
チェヨンは旅支度で
王宮とは不釣り合いな
出で立ちだった
仕方あるまい
先に寝ておれ
ううん 待ってる
明日も休みだもの
ウンスとタンがかわるがわる
チェヨンの頬に口づけて
チェヨンはチュホンに
ひらりと跨がると
王宮へと向かった
何かあったのかしらね？
父上 さっそく忙しそうだわ
ウンスはタンに話しかける
あうあうう～
タンがウンスの頬を
ぺたぺた叩きながら
おしゃべりをした
夜更けにウンス達の輿は
屋敷にようやく到着した
中から ソンオクと
オクリョンが出て来た
お帰りなさいませ
奥様
ソンオク！
来てくれていたの？
はい 孫のオクリョンと
ともにお屋敷で
お待ちしておりました
勝手知ったるチェ家に
ソンオクが灯りをともして
ウンス達を出迎える
ありがとう
真っ暗な屋敷に帰ってきたら
寂しいもの
こうして煌煌と
灯りがついていると
ほっとするわね
たまには旅もいいけど
やっぱり我が家が一番よ
ウンスはにこやかに笑った
後ろの小さな輿に乗っていた
ヘジャは
いつの間にかウンスのそばに
控えていて
ソクテは少し離れたところで
様子を伺うように
ウンス達を見ていた
ああ そうだ
ボルムタル村でね
たくさんお土産をもらったの
あっちの輿に積んであるから
厨房に運ばなくっちゃ
ウォンは旦那様について
王宮へ上がったから
ソクテ お願いね
へぇ 奥様
ソクテは積んで来た魚介を
厨房へと黙々と運び入れる
オクリョン
輿に積んである私の荷物を
奥へ運んで頂戴
着替える間タンも
見ていてほしいし・・・
ウンスはオクリョンに
申し付けた
若様のお世話でしたら
このソンオクが
ソンオクは胸を張ったが
ウンスにやんわり
断られた
いいのよ
タンはもう随分重たいもの
そうだわ それより
お土産の魚を
持ってかえって頂戴
ソンゲ（ウニ）を頂いたのよ～
ヘジャ 厨房でソンオクに
渡して頂戴ね
あと ポムとヨンファの
家の分もよけておいて
ええっと それから・・・？
まあ
後の差配は
いろいろ ヘジャに任せるわ
ウンスはヘジャに任せた
ヘジャは頷きウンスに言う
はい ヘジャにお任せを！
こうして図らずも 否
ウンスが仕組んだように
ソンオク ヘジャ ソクテの
三人が厨房に集った
＊＊＊＊＊＊＊
『今日よりも明日もっと』
想いは言の葉にのせて
ちゃんと届きますように
☆*ﾟ ゜ﾟ*☆*ﾟ ゜ﾟ*
都に帰って来た途端
何やら 不穏？
明日で六月が終わりますね
ということで
「水菊の候」はそろそろ
幕引きのはず・・・
大丈夫かしら？(ﾟ＿ﾟi)
にほんブログ村