祝賀の儀から数日後
判事(パンサ)たちの
悪事も大方露見し
一息ついたチェヨンは
まとまった暇をもらい
約束の温泉へと
出掛けることにした

そこは
以前タンを授かった
離れがある
何度か行き慣れた
都近くの温泉宿ではなく
海沿いの温泉宿だった

ウンスとタン
そしてヘジャとソクテを
連れ立って
朝も明けぬうちに
屋敷を出立した一行は
輿と船を使って
昼過ぎにやっと宿に着いた
都からは
少し離れたこの温泉宿は
パク家の馴染みの宿だと
パク・インギュが勧めた宿で
海に面した岬の突端にあった

チェ家が泊まる部屋は
他の建物とは
別棟になっていて
辺りを気にせず
くつろぐことが出来る造り
そして
風呂好きのウンスが何より
喜んだのは
小ぶりだか部屋に露天風呂が
備えられていたことだった

風呂に入りながら
海を眺めることが出来ると
ウンスは大はしゃぎだ


さすがパク家が
贔屓にしている宿だわ
こじんまりとしているけど
色々行き届いているもの
部屋に風呂があるなんて
ソウルの高級ホテルにも
ないわよ
うふふ   
ここなら周りの目を
気にしないで
親子でゆっくり入れるわ
だってヨンたら
いつも温泉では厳戒態勢だもの


当たり前だ
イムジャのはだかを
見られでもしたら
いかがするのだ


気にしすぎよ
でもここなら
周りに人はいない
プライベート露天風呂よ


ぷら?


うふふ   水入らずってこと
ね?
タンも一緒に入りましょうね
露天風呂は気持ちがいいわよ
夜は月を見ながら入れるわ
あ!朝風呂も出来る
せっかく来たんだもの
何度だって入りたいわぁ


そ   そうだな


月明かりに照らさた
ウンスの白い肌が
思い浮かんで
チェヨンは思わずごくんと
唾を飲み込んだ

タンはご機嫌な母親が
うれしいらしく
きゃっきゃと笑いながら
部屋の中をハイハイで
高速移動

チェヨンは
ウンスとタンの笑顔に
ここに来て良かったと
笑みがこぼれた


休みを貰う前日
パク・インギュと
王宮で話したことを
チェヨンは思い出す


チェヨンは
インギュに尋ねた


お前 まさか
温泉を紹介したのは
押し掛けるためでは
なかろうな?


そのような無粋なこと
妹のポムでもあるまいし
いたしませぬ
それに
子孫繁栄は家長として
大事な役目


インギュは
含んだ笑いをし


なれど帰って来たら
仕事を山積みに
しておきますゆえ


とチェヨンに告げた


だから 
俺はもう文官ではない
これ以上文官の役目を
増やすな


チェヨンは祝賀の儀以来
周りから
上奏に関する相談を
受けることが多くなった
そしてそれらを
書物にまとめるような
文官の仕事が
廻ってくるようになっていた
もちろんウダルチはじめ
軍の指揮をする役目を
優先してはいたが
文官の官位を
王様に返上させて
もらえてなかった辺り
これは絶対パク・インギュが
策を講じたのだと思った

身分は今も
二階級上がったまま
武官はもともと文官よりも
身分が低く抑えられてはいるが
その武官の最高位よりも
今のチェヨンの
身分の方が上という
おかしな事態になっていた


温泉でごゆるりと


パク・インギュの
にやりとした顔に
チェヨンは
苦笑するしかなかった

一方    直属の部下で
腹心のチュンソクは
チェヨンに言った


大護軍は祝賀の儀を
やり終えたのですから
何もご心配なさらずに
たまには奥様孝行も
よろしいのでは?
王宮の警護は
ウダルチにお任せを


兵舎にいても
文官仕事から解放されず
苦る気持ちをなだめるように
チュンソクは
王宮から送り出してくれた

それでチェヨンは
都を離れ王宮を忘れ
この海辺のボルムダル村まで
足を伸ばすことを決めたのだ


どうしたの?
王宮から離れたことが
気がかりなの?


何やら考えごとをしている
チェヨンに
ウンスは心配そうに尋ねた


そんなことはない
五年前でもあるまいに
今は王宮も平穏そのものだ
あとはウダルチに任せて来た


うふふ
良かった
じゃあ心配なことは
ないのね
ねえ    夕餉の前に
早速お風呂に
入ってもいい?
ヨンも一緒に入らない?


ウンスはうずうずしながら
チェヨンに尋ねた


ああ   
俺やタンは後でよいゆえ
たまにはイムジャ一人で
先にゆっくり入るとよい


ほんと?
ありがとう


チェヨンの返事に
ウンスは嬉々として
衣を脱ぎ捨て
湯船に浸かった

タンとチェヨンは
ハイハイで部屋中を
追いかけっこして遊び

チェヨンは時折
美しい肌のウンスの
後ろ姿をそっと見つめた

露天風呂に入りながら
目の前に広がる海を眺め
至福のひと時を満喫するウンス


同じ頃
ヘジャはソクテの前で
固まっていた


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『今日よりも明日もっと』
たまにはのんびり
日常を離れ
心を解き放つ時間も必要



☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*


本編とひみ恋は
違う時間の流れ   違う世界
だけど今回の温泉の舞台は
同じボルムダル村です


皆様も温泉旅行を
一緒にお楽しみいただけ
ますように

海を見ながらの露天風呂!
いいなぁ~