康安殿にいる
チュンソクのもとに
テマンが着いたのは
チェヨンが市の会場に向かって
すぐのことであった

元のタンサガンはすでに
王宮を出た後で
王妃様はウンスが言う所の
庶民の暮らしを楽しみに
しておられた


王様
まことに申し訳ありませぬが
大護軍からの知らせで
お迎えする準備に
今しばらくかかるとの旨


準備などいらぬ
そのまま    ありのままの
民の市を
楽しみにしているのじゃ


王様より先に王妃様が
そう答え王様は苦笑した


なれど一切を大護軍に
任せてあるのだ
その大護軍が
待てというからには
待たねばなるまい
王妃よ   無理を申すな


はい   すみませぬ
王様


王妃様は小さくうなだれた


すぐにございます
テマン様子を見て来て
知らせに参れ


はい   隊長!


テマンはまた駆け出した


チェヨンがタンを抱っこした
ウンスを見つけたのは
マンボの出店まであと少しの
ところであった
誰かと話している姿に
身構えたが
相手がヨンファとその夫だと
わかるとほっとしたように
頬を緩めた

ウンスに余計な心配を
させたくないチェヨンは
すっとウンスの横に
盾のように立つと
後ろの様子に気を配った
チェヨンの殺気にジュヒが
気づいてコハクの手を
握りしめ
ただならぬ顔のジュヒに
向かいの店にいた
ヨンファが
じっとチェヨンを見つめ
辺りを見回した


ヨン!


ウンスの弾むような声に
チェヨンは微笑んだ


遅くなってすまぬ


ううん   私も今来たとこ
あれ?王妃様は?


ああ   今から
迎えをやるつもりだ


そう
うふふ   
良かったね~タン
父上が来たわ


チェヨンは指で
愛しい妻の
柔らかな頬をなでた
指に馴染むウンスの肌


あうあう


タンがやきもちを妬くように
チェヨンを見て声を出す


タン
なんだか泣いたような
顔をしておるぞ
寂しくて泣いておったか?


チェヨンは笑って
タンを見た


ばぶぅ


母上がそばにいないと
寂しいのは父も一緒だ


チェヨンはタンの
耳に小声で話すと
ウンスからタンを受け取り
抱き上げた
タンはやっと甘えた母上から
引き離されて
迷惑そうにちろりと
チェヨンを見たが
背の高い
チェヨンの腕の中から見える
辺りの景色に興味を示して   
やがて
きゃっきゃと喜んだ


刺客と化した私兵は
思わぬチェヨンの登場に
驚いていた
事前に調べた話だと
チェヨンは
王様たちを連れて
市にやって来るはず
だから
その前にウンスに刃を向け
会場を混乱に陥し入れ
王様の御前に
チェヨンの不手際をさらすのが
自分に課せられた任務

もとより捨て身の覚悟
斬り捨てられることすら
承知の上で
長年にわたり仕えた主人が
家族の将来を担保する
と言った言葉を信じて
刺客を引き受けたのだ

チェヨンの背中からは
ぞくりとする殺気を感じ
私兵は怯んだ
止めておこうかと思った時に
物陰から様子を見て
睨んでいる自分の主人がいた


ええい!
こうなりゃ
やぶれかぶれだ


隣に並んだもう一人に
目で合図して
懐の短刀に手をかけた
切り込めば会場から
悲鳴が上がる
それだけでいい
決死の覚悟だ
駆け出そうとした時
不意に
肩をポンと叩かれ私兵は
立ち止まった


久しぶりだなぁ
あんたも市見物かい?


目つきの鋭いソクテが
私兵に話しかける


ええっと?あんたは?


一瞬誰だか分からず
記憶を辿るように
ソクテの顔をじっと見る私兵


物陰からあんたを見てる
あの卑怯面の男の屋敷で
一時一緒だったソクテさ
それにしても
その刃物
祝いの席には不似合いだ


ソクテは凄むような
低い声で言うと
きらっと光る刃を
躊躇することなく手で握り
ぐぐっと鞘に押し戻した


何しやがる?


ソクテの手のひらから
血がしたたり
私兵は顔を引きつらせて
ソクテを見た


あんたも俺も年をとったな
晩年は穏やかに
過ごさなきゃなんねぇのに
あんな奴のために
命をかけちゃなんねぇ
家族が悲しむだろ


俺は俺のやり方で
家族を守るために


ソクテがピシャリと
言った


そのやり方は間違っている
人を踏みつけたやり方で
幸せになんぞなれやしない


ソクテは私兵と
ぐいと肩を組むと
ずるずる引きずるように
市から連れ出した

もう一人の私兵も
トクマンに後手にされて
あっという間に
その場から連れて行かれた

物陰から様子を見ていた
判事(パンサ)は舌打ちをした
急に耳元で声が聞こえる


残念でしたね
目論見が外れて


パク・インギュが
ニヤリと笑って言った


なんのことだ
わしは何も知らん


知らんかどうかは
ウダルチが調べるでしょう
それにしても
あんたはただの間抜けか?
大護軍や医仙様の為には
命も惜しまない連中が
がっちり守るあの場で
事が成就するとでも
思ったか?
あんたは我が父に引き渡す
あんたの背後にいる奴もろとも
取り調べたら
たくさん埃が出てきそうだ


判事(パンサ)はがっくり
うなだれ
パク・インギュは
官吏を取り締まる役目の
御史台(オサデ)に判事(パンサ)を
引き渡した


何事もなかったように
王宮の市は賑わい
其処此処で子供たちの
笑い声が聞こえる中

ウンスは笑顔で王妃様の
到着を待ち
チェヨンはそんな妻を
愛しく見つめていた


*******


『今日よりも明日もっと』
どんな時でも
どんな場所でも
愛しい君の笑顔を守る




☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*


いよいよ
祝賀の儀もクライマックス

もう少しおつきあい
くださいね~




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