王様 王妃様のそばには
アン・ドチ内官と
チェ尚宮が控えている
御座の警護はチュンソクや
ウダルチに任せ
チェヨンはパク・インギュと
並んで文官の席に着いた

上座には
門下守侍中や守侍中がいて
悠々と酒を酌み交わしている
臣下に配られた宴の膳には
美しい絹の花が飾られ
祝いの餅をはじめとした
ご馳走が並ぶ

広場は鮮やかな剣舞に続き
テグム(横笛)の澄んだ音色が
宴の席を包み
柵の外側から見ている
民達からも溜息が漏れた


綺麗な音だね
ヘジャおばちゃん


ヘジャに話しかけた
オクリョンの声が
聞こえないくらい
ヘジャはソクテの視線の先を
気にしていた
ソクテは
じっと視線を外すことなく
一点を見つめている


ソクテさん 
誰かいるのかい?


ヘジャはたまらず尋ねた


ん?ああ
ちょっと見覚えのある奴が


見覚えって・・・


ミヒャンなら
見覚えどころじゃなかろうと
胸の内で ヘジャは思った
ヘジャの目からは
先ほど捕らえたはずの
ミヒャンの姿はもう見えない


ちょっと行って来る


ソクテは
柵のそばから
離れようとした


旦那様の勇姿を
見ないつもりかい?


行かせたくないヘジャは
ソクテの衣の袖を掴んだ
その手をゆっくり外すと
ソクテが言った


すぐ戻る
ヘジャさん 
此処を動くなよ


すっと行ってしまった
ソクテの後ろ姿を
目で追った
置いて行かれた寂しさが
ヘジャの心を冷たくする


文官の席に座ったチェヨンは
なんだか落ち着かなかった
宴では いつも
警護に当たるから
座った試しがないのだ

武士の性で
辺りの気配に集中し
刺客がいないか周りを見回す
ウダルチや禁軍を配した
王宮の屋根も時々眺めた


大護軍
祝賀の儀はもう動き出し
あとは滞りなく
終わるよう見守るだけ
そのような
難しい顔をしなくても


パク・インギュがにやりと
笑った
ふとおかしな感じがして
チェヨンは尋ねた


お前 何か企んだか?


は?何ゆえ


その顔色に見覚えがある
いつぞや 典医寺で
気の操りについて
侍医を巻き添えて
策を弄したときも
同じ顔をしておった


考え過ぎです


パク・インギュは
鋭いチェヨンに
内心
ひやりとしながら
涼しい顔をしてみせた


宴はいっそう華やかに
ムゴ(大太鼓)を使った
宮中舞踊へと続いている

ムゴの音色に
テグムの音色
五色の色の長い絹の布が
宙を舞う

王様と王妃様も楽し気に
話をしながら舞をご覧になり
時々 民の方を見ては
手を振ると
その度に 民から
歓声が巻き起こっていた


いい宴だな


チェヨンが言った


誠にいい宴です


パク・インギュが頷く
やがて 宮中舞踊が終わり
ドンドンと
ムゴが鳴り響く
いよいよ公主様のお出まし


チェヨンは
数段高いところにいる
壇上の王族を見つめた
こんな宴をする日が
やって来ようとは・・・
ミレ公主の誕生に
改めて熱い想いが
こみ上げた

そして 
奥から綺麗な身なりの
女人がミレ公主を胸に抱き
俯きながら慎重に壇上に現れた
今日の主役の登場に
会場がいっそう盛り上がり
民もやんやの喝采だ


王妃様もお綺麗だけど
あの公主様のお付きの方も
美しいわね~


口々に皆が女人の
美しさを褒めたたえ
見惚れている
遠目でも輝きをごまかせず
居並ぶ高官もどよめく
その女人


ああ?あ!!


目に飛び込んで来た
ウンスの姿に
思わずチェヨンは
席を立ち上がった
口の端がひくひくと
引きつっている

パク・インギュが
それを見て
してやったりと
くつくつ笑った


お前のはかりごとは
これか?
医仙を担ぎ出すとは
なんたる奴だ!


急に立ち上がったチェヨンを
みんなが一斉に見る
チェヨンは仕方なく
また席に着いて
ぶつくさぶつくさ


我が妻はみせものではないぞ
元のタンサガンも来ておる折に
また元に寄越せなどと
難癖をつけられたら
どうする気だ


あまりに美しい妻ウンスに
惚けている自分を
悟られないように
チェヨンは憮然として
パク・インギュに言った


ですが 公主様の
お披露目には一番の適役
医仙様なくして
公主様のご誕生はありませぬ
それに大護軍に
独り占めさせるには
惜しい美しさだ


つらっと言い返すインギュ


お お お
お前!!!


ほら 
民も美しさに
ため息をついております
聞こえるでしょう?
実に美しい


パク・インギュの
更なる挑発に
チェヨンは答えた


まったく余計なことばかり!
お前らパク兄妹は
やはり俺たち夫婦の鬼門
いつも言っておろう
妻を政に巻き込むなと


某には
誰にも取られたくない
ただの悋気にも見えますが


パク・インギュに言われ
開き直ってチェヨンが
言った


ああ そうだ
その通りだ
悪いか?
他の男の目になど
さらしたくはない
ウンスを愛でるのは
俺だけでよい!


そう言って一応
パク・インギュを睨んだが
もはやチェヨンには
誰よりも
美しいウンスの姿しか
目には入らず
その晴れやかな凛とした姿を
しっかりと
心に刻んだのだった

チェヨンの様子に苦笑した
元国の使者
タンサガン  ソン・ユは
視線をウンスに戻して
じっと見つめた

柵の前ではヘジャが
息をするのも忘れて
敬愛する女主人を見つめていた
そばにいないソクテと
一緒に奥様を
褒め称えられたら
どんなにか
気分が良かったろうと
心底残念に思った
ソクテはまだ戻って来ない

ウンスは
屋敷を出たときとは
違う服装の
夫チェヨンを宴席の中から
すぐに見つけた

そこだけ光輝いて見える
初めて見る夫の官服姿に
どきどき胸が高鳴り
頬が上気した

二人の距離がたとえ
離れていても
凛々しいチェヨンしか
ウンスの目には
入らなかった


みんなが懸想したら
どうしよう
公主様
あのかっこいい官服姿の人が
私の旦那様なのよ


腕に抱いたミレ公主に
こそこそ小さく言ってから
あれ?と
何かに気がついた


あああ タン!
忘れてた!


育児室では
すっかりいじけた
愛息タンが床に
ぐてっとうつ伏せて
ウンスのお迎えを
待ち焦がれていた
 

*******


『今日よりも明日もっと』
幸せをみんなで分かち合うと
もっと幸せになれる気がする



☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*


タンが今日で
八ヶ月になりましたv(^-^)v
育児室でいじけて
待っているのかな?
もうすぐ
オンマが迎えに行くよ


祝賀は続く  ≧(´▽`)≦
また
おつき合いくださいませ



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