新入りの通いの女中が来た
翌朝 朝餉の席で
ヘジャはウンスに
女中達の様子を聞かれた

タンはお気に入りの
椅子に座って
時々チェヨンから
お粥を口に入れられている
相変わらず粥が
気に入らないのか
それとも母ではなく
父親から食べさせられるのが
気に入らないのか?
べ~っと口から吐き出していた
その度に チェヨンは
タンの口を手ぬぐいで拭い
しょうがない奴だというように
タンを見つめると
また根気よく粥を口に運ぶ


こうなりゃ 我慢比べだぞ
タンが食うまで
何度でもだ


ばぶぅ~ばぶぅ


タンは首を横に振る
強情なところは両親ゆずりの
筋金入りだ
ウンスは父子のやりとりを
微笑ましく思いながら
ヘジャの話を聞いた


はあ まあ
どの子もまだまだにございます
仕込み甲斐があると申しますか


うふふ そうなのね
ヘジャから見れば
どの子も物足りないんでしょう?
でも最初から何でも出来る人は
そうそういないわ だから 
気長に育ててあげてね
ユウとハヌルはもともと
どかこの女中だったんでしょう?
だったら 慣れてくれば
きっと即戦力になるわよ 
飲み込みは悪くなさそうだもの


はい・・・
ですがミヒャンは
どういたしましょう?
はたちも半ばを過ぎております
女中勤めは初めてとか
無理にここで働かなくても
どこぞ他の職場でも・・・


ミヒャンはマンボ姐さんに
頼まれたんだったわよね


はい 何も聞かずに
預かってくれないか?と


なら 預かりましょう
きっと何か理由があるのね


はあ・・・


あんまり慌てて
仕込もうと思わなくていいわよ
せっかくヘジャに少し楽して
貰おうと思ったのに
ヘジャの負担になったら
話にならないもの


奥様・・・ありがとうございます
それにしてもやはり
奥様はすごいお方ですね


え?私が?


はい
奥様は大護軍チェヨン様の
奥方様のお役目もしっかりなさり
そのうえ 典医寺の多くの皆を
束ねております
その上 私達下々の者にも
気さくに接してくださって


やだ 「しもじも」なんて言い方
ヘジャのこと
家族だと思ってるのよ


ウンスは
照れたような顔をしてから
にっこり笑った
その笑顔に触れ
これだから 
この方には敵わない
この方のために頑張ろうと
思えるのだと
ヘジャは密かに思っていた


ああ 奥様
それと


ん?


ご飯を口に入れながら
ウンスが首を傾げた


恐れ多くも王妃様からの
ご拝領の砂糖菓子ですが
女中達にも分け与えました
勝手をいたして
申し訳ございません


うふふ いいのよ
もともとそのつもりだったし
さすが ヘジャ
気が利くわね


いえ 奥様なら
きっとそのように
なさるかと


ウンスの考えを見通すような
ヘジャの働きにウンスは
頷いた


おしゃべりが過ぎました
そろそろお時間にございます
表の輿の用意を見て参ります
オクリョン 
若様がお持ちになる荷物の
準備をしておくれ


はい ヘジャさん
もう用意出来ております


ヘジャの横で
身じろぎ一つせずに
かしこまって座っていた
オクリョンが返事をした


さすがヘジャの姪っ子ね
飲み込みが早いわ
うふふ
ヘジャとオクリョンは
なかなか 
いいパートナーね


ウンスが笑って
チェヨンに微笑んだ


ぱとな?
ヘジャが首をひねると


いいの いいの と
ウンスは
楽しそうに笑って言った


━─━─━─━─━─


通いの女中は
日の出とともにやって来て
チェ家で朝餉を食べ
皆 忙しく働き始めていた

少し日に焼けた
人なつっこい顔をしたユウが
今日はせっせと 
水汲みと洗濯をして

艶つやとした黒髪を束ねている
色の白いハヌルが
厨房の片付けをしたり
野菜を洗ったりしていた

ミヒャンはヘジャに言われた通り
丁寧に庭先を掃き清め
門のそばの 今は
ほとんど枯れてしまった
アヤメの花の手入れをしている


旦那様と奥様の
お見送りを


ヘジャのよく通る声が
屋敷に鳴り響き
それぞれの持ち場から
皆 慌てて
表の門に並んだ


いいのに
仕事中なんだから
そのままで・・・


どことなく落ち着かない
ウンスがヘジャに言うと


いえ お見送りも
使用人の務めにございます


ヘジャが平然と
ウンスに言った


じゃあ みんな
ヘジャの言うことを聞いて
留守中よろしく頼むわね
ほら ヨンも何か一言


チェヨンは面倒くさそうに
皆をちろっと見てから


そう言うことは
イムジャに任せる


タンを抱いて
早々に輿へと乗り込んだ


うふふ 
愛想がないんだから
困った人ね・・・
じゃあ ヘジャ
あとはよろしくね
ねえ ヨン
待って 待って


ウンスも追いかけるように
輿に乗り込んだ
新入りの女中は
美しく微笑むウンスと
凛々しいチェヨンの
夫婦をぼうっと見つめて
それから 慌てて
深くお辞儀をした

輿が出立すると
ヘジャは
みんなに声をかける


さて 今日も一日 
気張っておくれ
よろしく頼むよ


は~い


風が新緑の木々の葉を
さわさわと揺らしていた


*******


『今日よりも明日もっと』
何事も最初の仕込みが肝心
だが
じっくり熟成すると
もっといい味が引き出せるかも




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