典医寺の中庭で困った顔の
ジュヒを見かけたチェ侍医は
二人の間に割って入った


テマン君 伝言は預かったが
まだ何か用があったかな?


侍医様
いえ
ただこの女人
俺の知ってるやつにそっくりで
急に姿を消したウダルチの


ああ コハク殿のことかな?


え?侍医様
ご存知で?


ああ この者をチュンソク隊長から
預かる時に聞いてはいたが
そんなに似ているのか?


似てるもなにも
こいつはコハクです


それはない


チェ侍医が即答し
ジュヒが頷く


なぜ?ですか?


この者はコハク殿の妹だからだ


いもうと?


テマンが驚いた顔をした


ああ よく似ているのも
無理はないであろう?


じゃあ コハクは?
コハクはどうしているんです?


チェ侍医は間を空けて
静かに言った


残念だが・・・
病で亡くなったそうだ


なんでだよ? 
どうして?
誰にも知らせずに?
急にいなくなりやがって


ウダルチの皆に
心配を
かけたくなかったのであろう
ひっそりと去ったと 
チュンソク隊長が
言っておったぞ


それにしてもひどいじゃないか
トルベ兄さんが亡くなったのに
お参りもしないでいなくなるなんて


きっと 相当病が進んでいたのだ
隊長と大護軍は
何もかも知っていたようだ
だからこうして 
大恩ある隊長のお役に立とうと
典医寺に駆けつけてくれたのだ
コハク仕込みで腕も立つそうだしな


そうなのか?


テマンはジュヒに尋ねた
ジュヒが小さく頷いた


そっか
ごめんな
責めるようなことを言って
ポム様の代わりに
来てくれたんだろ?


ジュヒは首を縦に振った


もしかして?お前まさか?
トギと同じで口が?


一向に口をきかないジュヒに
テマンが尋ねる
ジュヒは慌てて首を横に振った
チェ侍医が見かねて
助け船を出した


田舎の訛りを気にしているようだ
だから喋らなくても
悪く思わないでやってくれ


そっか・・・
コハクに訛りはなかったけどな
まあ いいや
で お前名前は?


ジュヒ・・・


消え入るような声で
一言言った


ジュヒか いい名だな
トルベ兄さんが生きてたら
お前に会いたがったろうに
コハクのこと
ものすごく可愛がっていたからさ


テマン おしゃべりは
そのくらいにして
はよう 兵舎に戻らねば
ほら 大護軍のお供で
出かけるのであろう?


ああ そうだった~
では侍医様 医仙様に必ず
伝えてくださいね


ああ わかった


じゃあ ジュヒまたな
今度 コハクの思い出話しでも
しような


テマンはそう言って
疾風のように去ってしまった


侍医様・・・
あのような話 
なんだか騙しているようで


ジュヒが困った顔をした


だが 本当のことは
言いたくないのであろう?


はい


ならば仕方ない
それにな 嘘はついてないぞ
お前はコハクの妹で
コハクは病で亡くなったのだろう?
それに声を出すと余計に
テマンに悟られてしまうのあろう?


はい 


顔色一つ変えずにそういう
チェ侍医を
ジュヒは
チェヨンやウンスが
頼りにしている訳が
なんだかわかった気がした


━─━─━─━─━─


夕暮れが過ぎて
ウンスは武閣氏に警護され
邸にタンとともに戻った

夜が更けて漆黒の闇に
覆われても
チェヨンは王様と何処かへ
出かけたまま まだ戻らない

ウンスは夕餉を先に食しながら
ため息をついた
喉の奥に小骨が刺さったみたいに
いつまでも気にかかる

王妃様から聞いた話しを
漏らさぬようにサラに言い含め
典医寺ではチェ侍医にさえ
相談できなかった

王様がもし万一
側女の所へ
密かに通っているのだとしたら
その護衛を夫のチェヨンが
しているのだとしたら・・・
人の気も知らないで!
ウンスの言葉はいつの間にか
口から漏れていた

そばに控えるヘジャが
心配そうに尋ねる


何か お困りごとでも?


いいの
旦那様に聞くから


さようで?


ええ 


だが 湯浴みが済んでも
閨に戻って寝台で待っても
なかなかチェヨンは戻らない


まさか?
朝帰り?
王様 それはないわ


タンは心配そうな目で
ウンスを見ながら
乳を飲んでいた
タンを寝かしつけながら
ウンスもついうとうととする

静かに扉が開き
ウンスははっとして
目を開けた


起きていたのか?


チェヨンが驚いた顔で
ウンスを見た


ええ 起きていましたとも
旦那様に聞きたいことが
あったから


如何した?


昼間の様子を思い出し
心配そうにウンスを見た


あのね
王様のこと
側室でも囲っているの?


は?
なぜにそうなる?


だって 王妃様が
ご心痛だから
夜もご一緒じゃないんでしょう?
王妃様は妊婦なのよ
いろんなことが不安になるの
ヨンだって知ってるでしょう?
お腹にタンがいた時
急に泣いたり不安になったり
していた私を


ああ
だがすまぬ イムジャ
俺からはまだ何も言えぬのだ


まだってことは
いずれ言えるのよね
まさか本気で側室とか?
ないわよね


何があっても王様は
王妃様が一番に決まっておろうが


そんなの当たり前よ
二番目がいるのが
耐えられないって言ってるの
ヨンに二番目がいたら
私は耐えられない
わがままだって言われても
この時代にはよくあるって
言われても
私は嫌
でも王妃様はそれを言えない
そういうお立場なのよ
だからこそ王様にうんと
気を使ってもらいたいのに!


寝台に潜り込んだチェヨンは
ウンスを抱きしめなだめようと
試みた


嫌よ
王様のこと 
納得できるように
話してくれるまで
お預けにします


はあ?
王様とおれたち夫婦のことは
関係ないであろうが


だって私にはそれくらい
大事なことなのよ
王妃様に無事にお子様を
産んでもらいたいの
だからこの時期にご心痛なんて
もってのほかよ


イムジャ 話しの筋道が
ずれておるぞ
今は俺たちの閨の話しを


だから お預け
絶対嫌
しばらくしなくったって
死にはしないわよ
私は覚悟を決めたんだから
ヨンも早く王様の件
解決して私を安心させて


イムジャ・・・


チェヨンの泣き落としも
誘惑も
悪ふざけも
みんなはねのけて
ウンスは布団を被った

チェヨンのため息が聞こえる
少しかわいそうかな?
いやいや
王妃様のためだ
真相を解明しなくては
そのためにはどうしても
チェヨンからの情報が必要だ
「逆マタハリ作戦だわ」と
ウンスは呟いた


いつもの雰囲気と違う両親を
案じているのか?
タンも寝付けない様子で
あ~あ~~う~~~と
声を上げている


タン 大丈夫よ
早く寝なさいね


タンに優しく言ってから
ウンスはチェヨンの腕の中へ
飛び込むと
一度だけちゅうっと
チェヨンの唇を吸った


タンが心配するから
口づけはするわ
だってこれは
夫婦喧嘩じゃないもの
でも 本気よ
何も教えてくれないなら
本気で
しばらくお預けするんだから


ウンスの唇がとんがる


まったく
なんでそうなるのだ
俺の弱い所をついてくる
イムジャも相当な策士だな


チェヨンの大きなため息が
閨に響いていた


*******


『今日よりも明日もっと』
大好きな相手でも
譲れないことがある
でもお互い歩み寄ることは
できるはず・・・



☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*


あらら 
側女疑惑?
夫婦喧嘩??

どうしましょう目

また
おつきあいくださいませ




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