一つだけ咲いた
梅の木の下

ウンスは微笑み
チェヨンに
秋にはチュンソクが
父親になることを告げた
チェヨンは
まことか⁈と言って
我が事のように笑った
笑顔がまぶしかった

ウンスは一年前
タンが出来た時に
この世界に
いるはずのない自分が
子供を産んでいいのかと
ずいぶん悩んだ

だが愛した男を信じ
ともに新しい命を育んで
いきたいと決意した
どんなこともチェヨンと
乗り越えられると思った

そしてウンスのおめでたが
わかってからのチェヨンは
周りが驚くくらいの
目に余るくらいの過保護ぶり

輿の中では振動を気にして
膝の上に乗せるし
ウンスの食事を差配し
血虚の予防に努めたり
おかずを口に運んだり
とにかく
甲斐甲斐しく動いた
やがて二人で迎えた出産

愛情は減るどころか
日増しに増えていく
まっすぐに向けられる愛を
心にからだに
ウンスは毎日感じている

ポムとチュンソクさんも
そうなるかしら?
ウンスは内心くすっと
笑みがこぼれた
それからはっとしたように
言った


タンのとこに
行かなくちゃ
きっとお腹を空かせてるわ


チェヨンが答える


タンも誰に似たのか
頑固だな
乳母の乳は相変わらず
飲まぬのか?


うふふ
誰にって  あなたに
ヨンに似たのよ


ウンスはおかしそうに
幸せそうに笑った
その姿を
薬剤室から戻る途中の
チェ侍医が見た


いい笑顔だな


ポツリと言った


ウンスへの
胸の奥に灯る火を
消すことが出来ない
だからずっと
見守っていたいと
願っている
だが自分には
ユ・ウンスのあんな
いい笑顔を引き出すことは
出来ない
ユ・ウンスは
チェヨンといるからこそ
輝いているのだと
つくづく思う
サラが後ろから声をかけた


チェ先生?
どうかされました?


いや
医仙様もポム様のご懐妊が
うれしいのであろうな


楽しそうに梅の木の下で
チェヨンに笑いかける
ウンスの姿


サラは頷き
思いついたように
チェ侍医に言った


そうだ!
無事に先生が
お戻りになられたお祝いに
みんなに
ご飯   ご馳走してください


は?
なぜに濡れ衣にあった俺が
サラに奢らねばならん?


だって先生がいない間
私    頑張りましたもん
それに典医寺のみんなも


サラがしゃあしゃあと
言って笑った
その顔はほんの少し
ウンスに似ていた


まったく
敵わぬなぁ
医女サラには
しょうがない!
今日は重篤な患者もおらぬゆえ
皆で飯を食べに行くとするか?


チェ侍医が穏やかに笑う
トギが話を聞きつけ
自分も連れて行け!と言う
素振りを見せる
あっと言う間にチェ侍医の
周りには人だかりができ
われもわれもと手を挙げた


なんだか楽しそうね


ウンスがチェ侍医たちを
見て微笑み言った
誰かが弾んだ声で
ウンスを誘う


医仙様もご一緒に夕餉を
いかがですか?
チェ先生のおごりだそうです


あら!素敵ね
でも・・・
遠慮しとくわ
今夜は
のんびり過ごしたいから


ちらっとチェヨンを見て
ウンスは答えた
そしてチェヨンになにやら
ゴニョゴニョ相談してから
チェ侍医に向かって言った


今夜は私の奢り
チェ先生のことでは
迷惑かけたし
たまにはみんなで
楽しい夜を過ごして頂戴


やったー!
きゃー  と
典医寺に働く者たちが
わらわらと集まって来た
みんな大切な典医寺の仲間


団結力はウダルチにも
負けないわよ


ウンスは笑って
チェヨンに言った


そのようだな


チェヨンはウンスの
髪をなで愛しみながら
笑いかけた


あら!   大変
タンを忘れてた
きっとふくれてるわ


ああ
俺も王様の処へ
報告に行くのであった
後始末をせねばならん
では
タンの顔を見てから
行くとするか


今夜は
早く帰って来られる?


紅い口元からこぼれる
ウンスの甘えるささやきに
チェヨンはこくりと頷き

二人は賑やかな中庭を
後にして
育児室に急いだ

診療室では興奮冷めやらぬ
チュンソク夫妻が
お腹をさすりながら
笑顔で話しを続けている

育児室からは
あーん   あーー  と
タンがウンスを
呼ぶ泣き声が聞こえて
チェヨンとウンスは
顔を見合わせて微笑んだ


最愛の息子が待っている


*******


『今日よりも明日もっと』
愛しい人
あなたがいるから
毎日が
幸せ色に彩られている




にほんブログ村 小説ブログ 韓ドラ二次小説へ
にほんブログ村